東京大学基金 活動報告書 2022
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「国際ワクチンデザイン・センター」が誕生したことにより、研究開発のための拠点はできました。徐々にではありますが、若手研究者を育成するための、仕組み、ネットワークも整いつつあります。私自身はこの拠点で、生物学、ウイルス学、免疫学、統計学など多様な学問を積―先生が「国際ワクチンデザイン・センター」の リーダーとして、実現したい 未来について教えてください。※1 ER 救命救急センター※2 ICU 集中治療室※3 FDA Food and Drug Administrationの略 アメリカ食品医薬品局インタビュー全文は東京大学基金Webサイトにて公開しております。にはできなかったのか」といった不満・不安の声が高まりました。また一方、新型コロナウイルスのパンデミックは、人類がいまだに感染症を克服できていないという事実とワクチンの研究開発の重要性を明らかにしました。私たちはそれらへの反省を込めて、病原体を調べ、免疫学の基礎研究を進めるだけではなく、ポストコロナ時代のワクチン開発はいかにあるべきかをしっかりと考え、障壁となっている諸問題の解決に取り組むべく、2022年4月1日、「国際ワクチンデザイン・センター」として「国際粘膜ワクチン開発研究センター」の名称および組織の変更を行い、新たな活動を開始しました。そもそも日本がワクチン開発をうまく進められなかった理由は、研究力や技術力が他国に比して劣っていたわけではありません。たとえ話になりますが、今やワクチン開発は、多様かつ多数の最先端技術を集積させた新型ロケットをつくるような取り組みです。それと同じように、ワクチンをつくるために必要となるさまざまな情報、多様な分野の専門人材、それらを集め、まとめ、組み合わせ、デザインし、世に送り出すための仕組み・ネットワークが十分に確立できていなかったことが原因だと考えます。「国際ワクチンデザイン・センター」は、それら諸問題を克服するための拠点として、また未来の“ワクチンデザイナー”人材を育成していく孵化装置としての活動を推進していきます。み重ねてもらい、最終的に自分でワクチンがデザインできる人材を長期的な観点で育てたいと思っています。ありがたいことに研究費、開発費用の予算は下りてくるのですが、学生に参加してもらったり、研究者を雇用する予算は限られています。もちろん、私たちも国や企業に働きかけ、そのための予算確保を進めていきます。皆さまからの寄付というご支援を必要としています。次のパンデミックが起こった際に同じ轍を踏まないために、また、近い将来、100日でワクチンが供給できる新しい技術革新を起こすためには、“ワクチンデザイナー”人材の育成が一番の近道であると信じています。一人でも多くの方々からご支援をいただけますと嬉しいです。 16

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