―なぜ糸状菌の研究に 至ったのか、教えてください博士を取った後に、農研機構に就職して、生産者の方に負担がかからず自然のためになることができないか、環境保全型の農業ができないかと考えて研究していたのですが、誰もそれを採用してくれない。「環境保全になります」というだけの技術は普及しなくて、何かしらのメリットがないと開発しても誰も採用しない、ということを色々なアプローチをした中で見てきました。農業を変えていくには、ちゃんと収量が上がって、生産性がよくて、美味しいものができて、農家は生計を立てられる、というものである必要があると考えました。いろいろな方策を探していく中で出逢った篤農家の方の技術がそれを満たすのではないか、と気づいたことが糸状菌を研究するようになったきっかけです。11研究者&寄付者インタビューいるところなんです。ただ、データによって、糸状菌がいることで土の団粒化が進んでいることや、カーボンをどんどん蓄積していくこと、それによって植物が根を深く生やすことができることも分かってきています。イグニッションみたいに木質チップを入れるなど人が少し手を加えることで、糸状菌が優先的に生育するような環境に持っていくことができます。それによってどんどん改善が進み、地域全体の土壌環境が良くなって、それが水圏まで繋がっていき生態系のシステムができていく。そうやって生態系を壊すのではなくて、生態系を豊かにしながら人間が暮らしていくことができたら、将来に向けて食料問題とか、持続的に人が地球上でちゃんと動物として役割を果たしていける一つの大きなキーになるんじゃないかな?と思っています。インタビュー全文は東京大学基金Webサイトにて公開しております。宮沢 佳恵 准教授東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部 農学国際専攻 国際植物資源科学研究室 准教授専門分野:環境保全型農業、土壌有機物、パーマカルチャー関連プロジェクト:畑と森を再生する糸状菌の活性化基金 ―先生からのメッセージをお願いします東大基金でプロジェクトをスタートしてから、応援メッセージをたくさんいただけるのが、心から嬉しいです。応援されるってこんなに嬉しいことなんだ、と感じながら研究しています。この研究はいろいろな圃場に行くための交通費だけでもとてもお金がかかってしまうんです。もちろん東大の中にも農場はあるんですけれど、例えば木質チップを入れる、バイオ炭を大量に入れる、といった試験を一度やってしまうと、その後はそこを誰も使えなくなってしまうので、なかなかできないんですね。そうすると、どうしてもできるところに出かけていって、何度も往復しながら試験を行うということになるので、寄付をいただいている、というのはとても励みになっています。研究者インタビュー―将来の世界的な食物問題に対して、 糸状菌は救世主になると言えますでしょうか?今のところ、はっきりと「そうなります」とはまだ言えないですけれど、そうなるかどうかを一生懸命研究してより豊かで持続的に循環する地球環境を作り出したい
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