3特別インタビュー―東京大学が目指す新しい財務体制とは どのようなものですか? 詳しくお聞かせください。一言で表すと「単年度主義」から「中長期主義」の財務体制に移行する、ということです。国から受け取る運営費交付金は、その年度中に使い切らないといけません。研究費は5年などの期限があります。そのような環境では、例えば成果が出るまで数十年を要する、長期的で有意義な研究に財源を回すことは困難になります。ただでさえ、運営費交付金のうち大学が自由に使える金額は毎年削減されています。そこで、「エンダウメント(基金)型」の財源が必要になります。寄付金や収支差をエンダウメントとして確保し、運用して収益を増やしていく。国から受け取った財源ではないので、使用期限がなく、用途も大学が判断できます。アメリカやイギリスの大学では定着した体制であり、大学の自律的な経営には不可欠です。昨年の10月末、アメリカの5大学を回って各大学の総長やCFO等と対話を重ね、自分が何を実現すべきかを確認してきました。日本の大学でCFOという役職ができたのは初めての例ですので。その対話の内容を反映した上で、「CFOオフィス」という組織を2024年4月1日に立ち上げました。そこでは、中長期的な財務計画の策定、資金運用、予算・決算の検討を一括して担います。このような財務経営のフレームワークを作って実行していくのが、私のミッションだと認識しております。「世界の誰もが来たくなる大学」への財務戦略「エンダウメント型」の財源がなぜ重要か東京大学は独自基金の制度化を見据えて、これまでの補助金型の財務運営から、エンダウメント型の財務経営へと大きく舵を切りました。2023年からはCFOとCIOが執行部に置かれ、経験豊富な専門人材として財務経営と資産運用を担っています。「世界の誰もが来たくなる大学」を目指す財務戦略とは―両氏に話を聞きました。―寄付者の方々へのメッセージをお願いします国立大学が法人化した20年前が第一の変革期だとすると、今がまさに第二の変化を起こすべき時期だと考えています。エンダウメント型の新しい財務経営体制に移行し、中長期的な研究や、大学そのものを守らなければ、グローバルな競争の中でどんどん劣後してしまうでしょう。そのための財源として、寄付は非常に重要な意味を持つ存在です。大学と教育の未来のために、皆様のご理解とサポートを賜れましたら幸いです。特別インタビュー菅野 暁東京大学 理事財務 CFO:Chief Financial Officer(最高財務責任者)、資産活用1982年東京大学経済学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。86年MIT経営大学院修了。2017年みずほフィナンシャルグループ執行役副社長を経て、18年アセットマネジメントOne代表取締役社長。23年本学CFOに就任。24年4月より現職。―これまでの経歴と、東京大学のCFOに 就任した経緯を教えてください大学卒業以来、41年間にわたり金融業界で仕事をしてきました。そのうち26年は資産運用業務、10年はグローバル展開業務に携わっていました。最後の5年間は、アセットマネジメントOneという資産運用会社の社長を務めました。銀行とそのグループ会社に一貫して在籍していたわけですが、銀行員としては珍しく資産運用業務が長く、非常にいい経験ができたと感じています。その後、あえてまっさらな状況を作り、何をしたいのかをよく考えるキャリアブレイクの時期を持ちました。そのタイミングで東京大学から財務経営を高度化するためにCFOとしてお声がけいただいたのです。次の仕事は営利企業とは違い、公益性の高い仕事をしたいと考えていたこともあり、引き受けさせていただきました。
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