東京大学基金 活動報告書 2023
5/20

―これまでの経歴と、東京大学のCIOに 就任した経緯を教えてください35年のキャリアを通じて、国内外の株式・債券への投資、アセットアロケーションの決定など、資産運用業務を担当してきました。前職であるブラックロックでは、日本における投資責任者として、40兆円規模の預かり資産を運用するとともに、ガバナンス体制が強固な日本の企業約20社に集中投資する「ガバナンスフォーカス・ファンド」を立ち上げ、経営者との対話も推進しました。世界最大の資産運用会社で多忙な7年間を過ごし、リーダーシップを次世代に引き渡す準備を進めていたところ、東京大学から「新しいポートフォリオ」の運用を任せたいというオファーを受けました。その挑戦的な提案に強いインパクトを感じ、CIOの任務を引き受けました。「新しいポートフォリオ」で描く未来図20%20%2018年11月〜期待リターン 3.5%その前提を踏まえても、現段階でプランは順調に進行しています。昨年度は世界・日本ともに株式のリターンが高く、さらに円安が進行した結果、外貨建て資産がプラスとなりました。結果として、昨年度のポートフォリオでのリターンは11.6%に達しました。チャレンジングな取り組みはリスクを伴うかもしれませんが、非流動資産は会計士や鑑定士によって評価・評定されているため、価格変動が比較的小さいメリットがあります。マーケットが下降気味でも、最小限のダメージで耐えられるような、レジリエントなポートフォリオを構築するのが私のミッションです。2023年1月〜期待リターン 5.0%20%60%オルタナティブグローバル株式ポートフォリオの配分割合グローバル株式オルタナティブ4福島 毅東京大学 執行役資金運用 CIO:Chief Investment Officer(最高投資責任者)上智大学文学部新聞学科卒業、コロンビア大学院修了。日興証券投資信託委託シニアファンドマネジャー、ドイチェ信託銀行常務執行役CIO、明治安田アセットマネジメント執行役CIO等を経て、2016年ブラックロックジャパン取締役CIO、23年4月より現職。―「新しいポートフォリオ」について 詳しくお聞かせください従来のポートフォリオは、円ベース債券が60%、グローバル株式が20%、オルタナティブが20%で、期待リターンは3.5%でした。2023年から目指す「新しいポートフォリオ」は、オルタナティブが60%、グローバル株式が20%、円ベース債券が20%となり、期待リターンを5.0%に引き上げています。これがチャレンジングな理由は、日本の金利がほぼゼロ%であること。日本国債10年の金利が最近上がっても0.9%ほど。そこで5.0%のリターンを目指すには、不動産、インフラストラクチャー、プライベートエクイティ、プライベートクレジットといった非流動資産を増やすしかありません。非上場の株式は、投資を完了するまでに概ね3年ほど必要です。―寄付者の方々へのメッセージをお願いします大学が将来のために自由に使える資金を増やすことは重要です。優秀な研究者を採用する、研究を充実させる、学生が学びを深める環境を整備するなど、未来を見据えた資金の活用が可能となります。私は、柔軟で耐性のあるポートフォリオの構築と資産運用を続けていきます。そして、私どもの活動を支えてくださる寄付者の皆様に対して、更なる成果と信頼をお届けいたします。

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る