た。そして、それは現代も続いています。実は、プラトす。私が翻訳したプラトンの本も、ひとつの「復元案 」ということです。2400年も前にプラトンが著した考え方や人物像やエピソードをどのように現代語に落とンを現代語に翻訳する作業そのものが復元作業なのでし込むか。あらゆる思考を駆使し、検証し、想像力を働かせて行う復元作業なのです。 ―「エンダウメント」は文学部の性質に合う 「文学部の学問を支える基金 」では、6種類の使い途を選べるようになっています。その中で、新しい試みとして「文学部エンダウメント」を開始しました。エンダウメントとはあまり馴染みのない言葉かもしれません。いただいたご寄付を元本とし、それを使わずに拡大させ続け、運用益のみを使用していく仕組みのことです。元本を切り崩すことがないため、永続的な財源となります。宗教・哲学・歴史・美術・文学など、文学部が取り扱うテーマは、長い時代を超えて人間とともに歩んできたもの。長期的な研究の基盤となりうるエンダウメントは、文学部の性質に非常に合うものだと思っています。 ―文学部と社会が接点を持つ大切な機会 このご寄付において、私は金額の多寡は重要ではないと思っています。それ以上に、皆様の応援や思いを形にしていただける場ができた、ということが大切。文学部の応援団を増やしたいのです。ご寄付をきっかけに、東京大学の文学部と関わりができ、その後もご通知やイベントへのご招待などでより深く関係を結ぶことができる。普段の生活の中で、社会の皆様が文学部と接点を持っていただく機会はあまりなかったかと思います。そこに「 文学部の学問を支える基金 」ができたことで、皆様とつながるきっかけができました。私たちはこの場を大切にして、文学部の存在を皆様にアピールしていけたら、と考えております。インタビュー全文は基金Webサイトにて公開しております。研究者インタビュー研究者インタビュー納富 信留 教授文学部長( 当時 )。西洋古代哲学を専門とし、古代ギリシアにおける「 哲学(フィロソフィア)の誕生 」をテーマとしている。 プラトンやソフィストを中心に、哲学と西洋古典学の両面から研究。「文学部の学問を支える基金 」を開設したのは、東京大学文学部としてご寄付の大きな窓口を作ることで、より多くの皆様が支援しやすいかたちを整えるためです。もともと文学部には、違った趣旨の寄付窓口が何種類か存在し、ご寄付をいただいていました。そのなかには戦前から続いているようなものもありました。そこでいただいてきたご寄付は非常にありがたいものでしたが、やはり寄付者の皆様の立場に立ってみると窓口がわかりづらいということで、ひとつのプロジェクトに集結させることにしたのです。―ギリシア哲学を専門にした理由と研究生活 私自身は40年近く古代ギリシア哲学を専門に研究してきました。東京大学の学部生時代に多様な哲学を学び、最終的に古代ギリシア哲学を専門に選びました。古代ギリシア哲学の代表的存在であるプラトンの著作は、哲学のみならず歴史・法学・政治学・文学・心理学、そして自然科学・医学まで、すべての分野が含まれた内容であり、その懐の大きさに魅力を感じたんです。 人類がいま読むことができる最古のプラトンは、890年にビザンツ帝国において書かれた古代ギリシア語の写本です。それから12、13世紀を中心に大小含めて200くらいの写本が現存しています。ルネサンス時代に、写本同士とその他資料を照らし合わせながら、プラトンが書いた元本を復元するという作業が盛んになりまし11 研究者&寄付者インタビュー関連プロジェクト:文学部の学問を支える基金 文化・歴史を守り続けるため文化・歴史を守り続けるため“文学部の応援団”を増やしたい“文学部の応援団”を増やしたい
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