東京大学基金 活動報告書 2024
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第31代東京大学総長第31代東京大学総長第31代東京大学総長大学と社会の交点から、未来が 拓かれる東京大学は、自律的で創造的な教育研究活動を不断に続けながら、その成果を時々刻々と変化する社会ニーズに迅速かつ適切に還元するため、新たな財務・経営体制を構築し、将来を見据えた財政基盤を整えてまいりました。一方で、現代社会が抱える複雑な課題群は、東京大学単独では解決することが不可能で、より良い未来社会を実現していくには多様な人びとの連携が必須となります。このような考え方のもと、2024年4月には東日本電信電話株式会社と「つながる地域 新しいミライ」をテーマに 産学協創協定 を 締結 したほか、2025年2月 にはいすゞ自動車株式会社からのご寄付をもとに上場企業初 のエンダウメント 型研究組織「トランスポートイノベーション研究センター」を開設しました。さらに、三菱商事株式会社からのご寄付により全学横断での技術発掘・起業支援 プログラム「 東京大学・三菱商事 Tech Incubation Palette 」を創設するなど、産業界との協働も多様な形で広がりを見せています。 私たち東京大学はこれからも、「 世界の公共性に奉仕する大学 」として、世界の誰もがもっと来たくなる大学の実現に向け、その挑戦をさらに深化・拡充させてまいります。みなさまとの対話を通じて、引き続きより良い未来社会をともに創り上げる所存です。 2027年、東京大学は創立150周年という大きな節目を迎えます。東京大学がこの先のあるべき未来像を広く共有し、次の150年を見すえた活動を続けていくためには、本学を取り巻く皆さま一人ひとりからの共感や賛同・支援が欠かせません。共に歩み、寄り添い、未来を築いてまいりましょう。 最後に、今、本報告書をお読みになる皆さまに、より一層の力強いご支援を賜りたく、東京大学を代表してお願い申し上げます。 総長挨拶平素より東京大学への温かいご支援を賜り、心より御礼申し上げます。 私たちが生きている世界はますます複雑になり不安定さを増しています。気候変動や国際紛争、飢餓、貧困、感染症などの地球規模課題のみならず、それぞれの地域における未曽有の困難や分断の顕在化などが進んでいます。これらの課題は、既存の手法や態勢だけでは解決できず、新たな発想での学知の活かし方や方法知の開発が、必須のものとして求められています。それらを専門的かつ多面的、複合的、そして根本的に究め提供できる場こそが大学であると私たちは考えます。AIと共に歩む「インテリジェント時代 」の到来は、人間と自然・社会との関係を根本から問い直す契機となっており、既存の枠を超えた知と技術を創造し、社会に還元する存在として、大学にはかつてないほど大きな期待が寄せられていると感じております。 このような中で、東京大学が未来の社会に向けて創造的な役割を果たし、魅力を高めていくためには、教育研究環境を継続的に改善することが不可欠です。昨年には、約20年間据え置かれてきた授業料の改定を決断しましエンダウメント型経営―モデル転換から実装へ多様な研究の裾野の広さは、東京大学のきわめて大切な財産です。次世代の研究者が独立して自由な発想で個性的な研究を進めていく環境を担保するためにも、大学が長期的に自由に裁量できる基金、すなわちエンダウメントを増やしていく必要があります。国立大学法人会計基準の改訂により、2024年度からは大学運営基金の設置を通じて、エンダウメント型の経営が可能になりました。これは、基金の運用益を予算に組み入れ、中長期的な視点から大学独自の判断で必要な事業に投資できる仕組みです。この取組を粘り強く続けることで、将来にわたり教育・研究活動を安定的に展開するための中長期的財政基盤を確立してまいります。 3 総長挨拶た。その増収分を、より良い学びの環境を実現するために投資するとともに、現在、そして未来の学生のためにも、引き続き様々な財源確保に取り組み、教育学修環境のさらなる改善・向上を不断に続けてまいります。 東京大学の未来を共に築くために

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