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20 世紀の日本は、スクラップ&ビルドを繰り返すことで、都市と建築の近代化を実現してきました。
とくに戦後の日本では、戦災復興、高度経済成長、人口増加、都市の拡大といった社会背景のなかで、こうした開発の手法はきわめて有効に働いてきました。 しかし21 世紀の現代においても、同じ方法論を継続することは、私たちの社会を豊かにしてくれるでしょうか?私たちの社会の背景は大きく変わりつつあります。エネルギーを節約し、廃棄物を減らすことも、きわめて重要な今日的課題です。そうしたなかで、歴史性を有した既存建物を有効に活用し、現代的に再生していくリノベーションの手法は、ますます重要性を増しています。
スクラップ&ビルドによって、私たちが積み重ねてきた歴史をゼロにするのではなく、むしろこれまで歴史を積み重ねてきた都市や建物の上に、現代と未来の時間を積層させていくことで都市と建築の文化を高めつつ、最先端の技術を導入することでいっそう便利で豊かな暮らしを実現していくことができるはずです。
「東大キャンパスから地域、そして日本全体、世界へ」
私たちCMRC は、東大キャンパスを実証実験の場として捉え、ここで既存建物群のマネジメントの研究を進めています。ファシリティ・マネジメント、プロパティ・マネジメント、情報マネジメントという3つのマネジメントの考え方を軸に、東京大学のキャンパスで、歴史性を活かした先進的なマネジメントを実現していきます。東大キャンパスには、安田講堂をはじめとする数々の素晴らしい歴史的な建物が継承されています。貴重な歴史的環境と豊かな自然環境に囲まれることで、アカデミックな環境がいっそう強化された、世界を主導する研究と教育の場となっているわけです。しかし同時に、築80 年を超えるような鉄筋コンクリートの建物群は、老朽化による問題も抱えています。そうした老朽化した施設の維持管理を適切に進めるばかりでなく、最先端の技術を導入し、DX 化を推進することで、歴史性を活かした最先端のキャンパス空間を実現していくことが、私たちの第一の目標です。それは、ポスト・コロナ時代における大学キャンパスの役割をいっそう高めることにもつながるはずです。じつは日本全体を見渡してみても、日本中の学校建築はもちろん、官公庁、市役所、オフィス、集合住宅など、あらゆる建築空間において、今後、同じ問題が顕在化してくることは目に見えています。CMRC の東京大学での研究と実践は、日本全体の課題にこたえる先進的な重要性を持つことになると考えています。
上記のようにマクロな観点から先進的なマネジメントのシステムを考えることに加え、私たちはミクロな実践として、歴史を継承した未来の講義室を実現する「ドリーム講義室」のプロジェクトを進めています。講義室はキャンパス全体から見れば小さな単位ですが、こうした具体的な積み重ねは、キャンパス・マネジメントをボトムアップ的に具現化していく、重要な実践となると考えています。ドリーム講義室は、現役学生が大学で学ぶことの重要性をいっそう高め、また卒業生をはじめ、地域の皆様や東京大学と様々なかたちで協働する皆様との交流の場となることでしょう。このような空間を実際に体験することで、一人でも多くの方に過去と未来を物心ともに繋ぐ建築の豊かさを実感していただきたいと考えています。そして、この試みが東京大学から日本全体、ひいては世界へと拡大していく、その先駆的な役割を果たすことをめざしています。皆様のあたたかいご支援をお願い申し上げます。
2024年03月01日(金)
ドリーム講義室「KAJIMA HALL:15号講義室」
工学部1号館15号講義室は、1935年に内田祥三元総長の設計で創建し、1995年の香山壽夫名誉教授設計の増改築を経て、2023年3月31日に東京大学建築学専攻+CMRC(プロジェクト総括:千葉学教授)とKAJIMA DESIGNの改修設計により、新たにドリーム講義室「KAJIMA HALL:15号講義室」が竣工しました。
歴史的価値を検証すると同時に現代的な要求に応える継承/改変のあり方を検討し、たとえば天井は、創建当時の格子状デザインを元にした金属グリッド天井として歴史性を継承しながら、ライン照明や音響設備、センサー機器を取り付け、将来的な設備の維持更新を容易にするデザインとするなど、歴史と先端的技術を融合した空間を実現しました。
3月31日には竣工セレモニーを開催しました。多くの方にご臨席いただき、歴史的空間を尊重しながら、最先端の研究・教育の場を実現するための思いについてお話いただきました。
■竣工セレモニーの様子はYouTubeでご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=A93mp3GMypg
工学部10号館改修
工学部10号館改修にあたり、キャンパス・マネジメント研究センター(プロジェクト総括:安原幹准教授)は「共創空間の創出」および「建物のZEB*化」について監修としてプロジェクトに参加しています。
木格子を天井に用いて可動の建具によってシンポジウムやパネルディスカッション、個別ミーティングなど様々な場面に対応可能な「共創ホール」を中心に、中庭型の「共創広場」やパーゴラを設置する「屋上広場」など、建物の内外を問わず、教員と学生はもちろん、学生間のコミュニケーションや外部機関・企業との連携を促進することを目指しています。
また、省エネ設備を導入すると同時に、運用時においてもエネルギー消費の検証や、より良い運用方法へ改善できるための設備のあり方についても検討を進めています。
*Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称で、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のこと
(環境省webサイトより)
2023年04月11日(火)
歴史的空間を継承しつつ、最先端の研究・教育を実現するドリーム講義室~「KAJIMA HALL:15号講義室」を開設しました。
詳細はこちら
また、改修設計を監修・総括した東京大学工学系研究科建築学専攻の千葉学教授から、このドリーム講義室についての詳しい話を聞きました。是非ご視聴ください。
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