東京大学基金へご寄付をいただいた方々に感謝の気持ちを込めて、医科学研究所特別セミナー「『未来医療開発』ウィズコロナ・ポストコロナ時代の医療に向けて」を、2020年12月15日(火)に開催いたしました。新型コロナ感染症の流行が続いておりましたため、本特別セミナーは初めてのオンライン形式で行われました。当日はZOOMウェビナーおよびYouTubeライブにて、最大450名を超える皆様にご視聴いただきました。オンライン形式であったため、日本各地・海外からご視聴された方もいらっしゃいました。
特別セミナーの開会にあたり、東京大学社会連携本部 岡部 徹 副本部長よりごあいさつ、医科学研究所 山梨 裕司 所長より医科学研究所のご紹介がありました。
最初の講演は、感染症分野 四栁 宏 教授の講演で、「医科研病院における新型コロナウイルス診療」というタイトルでお話しいただきました。医科研附属病院も、昨年春より新型コロナウイルス感染症患者を受け入れ、院内感染に最大限の注意を払いながら、診断・治療を行っている様子が報告されました。
つづいて、ウイルス感染分野 河岡 義裕 教授より、「新型コロナウイルス:わかったこと、これから起きること」と題したご講演がありました。 新型コロナウイルスが猫やハムスターに感染することが分かったこと、またワクチンや治療薬の開発状況、動物を用いた効果測定結果などのお話がありました。
前半の最後は、ワクチン科学分野 石井 健 教授より、「ポストコロナ時代を見据えた新次元ワクチン開発研究」と題したご講演でした。個人個人の免疫状態に合わせて効果的なワクチンをデザインする新しいワクチン開発研究が紹介されました。
約10分の休憩時間を挟み、後半は臨床ゲノム腫瘍学分野 池上 恒雄 准教授の講演ではじまりました。「ゲノム X 人工知能:ビッグデータ時代の個別化がん治療」と題し、がんの全ゲノム解析結果を人工知能で解釈し、がん患者さんに最適な治療薬を提案・提供する、医科研附属病院で行われている臨床研究の成果が報告されました。
つづいて、再生医学分野 谷口 英樹 教授より、「ヒトの臓器を創る!―次世代再生医療の最前線―」と題した講演がありました。iPS細胞の作製技術を活用して肝細胞などの細胞を作りだし、さらに肝臓を創るという壮大な開発研究が着実に進んでいる様子が紹介されました。
最後の講演は、公共政策分野 武藤 香織 教授より、「未来医療開発と倫理的法的社会的課題(ELSI)」というタイトルで行われました。新たな医療の実現に不可欠な倫理的・法的・社会的な課題(ELSI)の解決に向けて、患者・市民との「対話・共考・協働」を積極的に取り入れた、市民参加型の研究推進についてお話しいただきました。
これらの講演の間に、ご視聴いただいた方々からWEB入力にて多くのご質問をいただきました。
講演の後に、講師全員が参加した総合討論が行われました。いただいたご質問の中から、重要な、あるいは多くの方々の質問について、活発な議論・意見交換が行われました。
3時間半にわたるセミナーでしたが、多くの方々に最後までご視聴いただきました。
東京大学基金は、今後も寄付者の皆様とのご縁を大切にしていきたいと考えております。引き続き、東京大学基金の活動への更なるご理解、ご支援をよろしくお願いいたします。
最新の研究成果の公表についてはこちらをご覧ください。
- 現在流行中のSARS-CoV-2 D614G変異株は、高い増殖効率と感染伝播力を示す
- 新型コロナウイルスの空気伝播に対するマスクの防御効果
- インターフェロン産生を抑制するSARS-CoV-2タンパク質の発見
- 新型コロナウイルス感染症( COVID-19 )の病態解明 / 予防・治療法の開発 ハムスターの感染動物モデルとしての有用性
- 共同研究グループ「コロナ制圧タスクフォース」発足 -新型コロナウイルス感染症の遺伝学的知見に基づいた COVID-19粘膜免疫ワクチンの研究開発を促進-
- 新型コロナウイルスはネコの間で感染伝播する
- 新型コロナウイルス感染初期のウイルス侵入過程を阻止、効率的感染阻害の可能性がある薬剤を同定