東大で戦争と平和について考える 

ー東大と一緒!安田講堂親子スペシャルー 
【講演会のご報告】

ホームカミングデイ東大基金企画の親子向けイベントである本講演会には、おかげさまで多くの親子にご参加いただき、開催後も大きな反響がありました。
講演会の様子は、ほとんど0円大学のウェブ記事「東京大学の人気研究者が競演する特別企画! 東大で、みんなで一緒に、戦争と平和について考えてみた。」に詳しいので、ぜひご覧ください。(講演会の予告動画は(約1分30秒)はコチラからご覧ください。)

さて、当日は、Slidoというリアルタイムでアンケート結果が見られるシステムを利用して、会場の皆さんの意見を聞きながら講演会が進められました。
1問目の小泉先生からの質問「どうしてウクライナ戦争は終わらないのだと思いますか?」への来場者の回答は

戦争によってお金もうけをする人がいるから(33%)
ロシアの人たちがプーチン大統領の味方だから(20%)
ウクライナとロシアの間で話し合いが足りていないから(20%)
その他(16%)
まわりの国がウクライナを助けているから(10%)

と、「戦争によってお金もうけをする人たちがいるから」が最も多い回答でした。

2問目の渡邉先生からの質問「日常が戦争に変わったらあなたはどのような行動をとりますか?」については、

日本から逃げ出す(37%)
戦争への反対活動を行う(20%)
自衛隊に参加して戦う(18%)
何もしない(15%)
その他(11%)

日本から逃げ出す」という回答が一番多い結果となりました。

いずれの質問でも「その他」がかなりの割合を占めており、渡邉先生からは「逃げることもできるけれど、大事なのは『その他』の選択肢だと思う」との指摘がありました。

最後の「みなさんの質問をお聞かせください!」のコーナーでは、3人のお子さんから、先生方も会場の大人たちもうならせる鋭い質問がありました。
そのやり取りの一部をご紹介します。

 

  • 女子.pngわたしは今まだ小学生だけど、子供でもできるような活動が知りたいです。​
  • 渡邉先生_名前アリ小.pngそうですね。もし、今ケンカをしている友達がいるとしたら、仲直りをしてほしいですね。そして、まわりでケンカをしている人がいたら、自分だったらどんな風にすれば二人を仲直りさせられるかな、ということを考えてみてください。​

    未来の社会の主役は、みなさんのような子どもたちですから、みんなで理想の世界をつくるという希望をもって生きてほしいと思います。ぜひ、楽しく友だちと過ごす、というところから、まずは始めてみてくださいね!

  • 小泉先生_名前アリ小.png​戦争が始まって以来、ウクライナの人たちが何をしてきたかというと、確かに、 質問「日常が戦争に変わったらあなたはどのような行動をとりますか?」の選択肢にあったように、国から逃げた人もいるし、軍隊に入って戦った人もいます。​

    でもね、国民の圧倒的多数はどちらでもない。毎日、淡々と自分の仕事をしているんです。そうすることで、外国が攻めてきても、何もかもを壊してしまわない。ちゃんと、毎日、自分の仕事をして日常を保つことが、実は戦争に抵抗する最大の方法だ、とウクライナの人たちの生きざまが言っている気がします。だから、まず小学生としての日常をきちっとやる、最大限今を楽しく生きる、ということも戦争に抵抗する方法ではないでしょうか。​

  • 男子.png地球の人が、全員一緒になって、政府を作って平和に暮らせないのはなんでですか?​
  • 小泉先生_名前アリ小.png本当にそうだよね。僕も昔から、ずっとそう思ってたんですよ。​
    でも、なかなか実現しないのは、いろいろ事情があるからなんです。​

    たとえば、地球上にはいろいろな宗教があります。異なる宗教同士はなかなかいっしょになれないということがありますよね。いろいろな国がくっついて仲良くやろうという試みはありますが、実際は、大きい国がばらけていくパターンの方が多いんです。​

    でも、僕も、いつかは宗教や人種などにとらわれずに、地球を1個の政府でまとめる時がくるんじゃないかと思います。それが1000年後か、100年後か、僕たち次第ですね。​

  • 渡邉先生_名前アリ小.png軍隊と世界政府が両立している例は、SFにはよく出てきます。SFの例を考えると、世界政府ができても争ったり、戦ったりする気持ちはなくならないかもしれないと思ってしまいます。​

    人間がお互いに打ち解けるのに必要なものの一つがコミュニケーションですが、文字で書くとケンカになりやすいんです。もしかすると、今後、文字や言葉を使わずにお互いに意思を通わせられるようになると、そもそも人と争うという気持ちがなくなるかもしれませんね。​

  • 女子.png他の国はウクライナに寄付したりするのに、ロシアにはあまりしないのはなんでですか?​
  • 小泉先生_名前アリ小.pngそうですね…。今回の戦争は、先にロシアがウクライナに手を出しているんです。ケンカを始めた方のロシアには、あまりみんな寄付とかはしてくれないんです。それに、ロシアは結構強い国なんです。世界で一番広くて、強い軍隊を持っていて、石油や天然ガスなどの資源も豊かな国なので、他の国からの支援が無くても自力で戦争ができてしまう。​

    一方、ウクライナは広い国ではありますが、エネルギー資源はないし、資金も豊かではありません。だから、他の国から助けてもらわないと戦争に負けてしまう。​

    でも、ロシアもこのように長期間戦争を続けていると、お金も武器も足りなくなってきているので、仲の良い国に支援をお願いしているようです。​

  • 渡邉先生_名前アリ小.png僕の子どもが好きなyoutubeのチャンネルで、ロシア人の女の子が出てくるチャンネルがあります。小泉先生が話されたように、この戦争は先にロシアが手を出して、国際的には悪事を働いたというように捉えられていますが、このyoutubeに出てくる女の子や日本にいるロシア人の方のせいでもありません。​

    東京大学の周りにも、ロシア人やロシアの学生さんもいらっしゃる。そういう人たちとロシアという国を一緒にしないで、もし、身近に困っているロシア人の方や、悲しい思いをしているロシア人の子どもがいたら、ぜひ手を差し伸べてみてほしい。ロシアには寄付をしないのはなぜか、という話とは違う話かもしれませんが。​

また、講演会当日は、Slidoで多くのご質問やご意見をお寄せいただきました。来場者の方からの指示を集めた質問やご意見の一部をご紹介いたします。​
※お子さんから大人まで、さまざまな世代からのご質問を、原文のままでご紹介しています。​


● 日本は戦争に参加することになりますか?​
● せんそうは、なぜおわらないんですか。​
● 戦争が永遠に続くと最終的に何年で地球は滅びますか。小学生二年生​
● 今後100年で日本が戦争をする可能性は何%あると思いますか?​
● "情に左右されないAIは、平和維持に貢献できる?それとも、情が働かないAIは、戦争を助長する?"​
● 戦争はなくなればいいのにと皆思ってるはずなのに、なぜ武器は作られるのでしようか?​
● 銃は、何で作られたの、何で今も作られてるの?​
● 核兵器はなぜつくられているのですか。​
● ウクライナは、どういう風になったら戦争終わりと言うんですか​
● 僕たちが住んでいる日本も戦争に巻き込まれてしまいますか?​
● 戦争が世の中から無くすことは難しいならば、人と人が殺し合わない戦争に変えることはできるでしょうか。​
● 戦争や紛争により、学ぶ場を失った人達のためにできることはありますか。​
● 家族を失った人もいると思いますがどんな気持ちだったでしょうか。

 

  • 講演内でご案内した平和へのメッセージマップはこちらからご覧いただけます。

平和へのメッセージマップ.png

〇ワタナヴェ先生を応援する

ワタナヴェ先生を応援する

〇イズムィコ先生を応援する

イズムィコ先生を応援する


 

【講演会開催告知内容】 

ロシアによるウクライナ侵攻が起きてから約1年半が経ちました。 
戦争は過去のものではなく、常に世界中のどこかで起こっています。 

「戦争の中の日常ってどんなだろう?」「どうして戦争が起きるのだろう?」 
そんな疑問に、記憶保存の匠・ワタナヴェ先生と軍事オタク・イズムィコ先生が戦争の最新動向や情報を駆使して、わかりやすくお答えします! 
また、先生のお話を聞くだけでなく、参加者のみなさんと「私たちが平和に向けてできること」についても一緒に考えます。参加体験型のしかけもご用意しています。 

安田講堂にて、東大の先生と一緒に親子で戦争と平和について考えてみませんか?多くの皆さまのご参加をお待ちしています。 

東京大学基金公式X(旧Twitter)アカウントをフォローしてくださった方には当日オリジナルプレゼントを差し上げます。(300枚限定)
※主な対象を親子としておりますが、どなたでもご参加いただけます。 

<お申し込み方法>
以下のフォームよりお申し込みください
https://forms.office.com/r/3yJ5y9MiBH

<お申し込み期間>
2023年 9/21(木)~10/16(月)

 <開催概要> 
開催時間:13:30~14:45  
開催場所:安田講堂大講堂  
参加方法:対面(要事前申込) 
対象:卒業生・一般・教職員 

<登壇者> 
情報学環・学際情報学府教授    渡邉英徳(記憶保存の匠・ワタナヴェ先生) 
情報デザインとデジタルアーカイブを研究。首都大学東京システムデザイン学部 准教授、ハーバード大学エドウィン・O・ライシャワー日本研究所 客員研究員、京都大学地域研究統合情報センター 客員准教授などを歴任。東京理科大学理工学部建築学科卒業(卒業設計賞受賞)、筑波大学大学院システム情報工学研究科 博士後期課程 修了。博士(工学)。 

先端科学技術研究センター専任講師 小泉悠(軍事オタク・イズムィコ先生) 
専門は安全保障論、国際関係論、ロシア・旧ソ連諸国の軍事・安全保障政策。民間企業、外務省専門分析員等を経て、2009年、未来工学研究所に入所。2017年に特別研究員となり、2019年2月まで勤務。この間、外務省若手研究者派遣フェローシップを得てロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所に滞在したほか(2010-2011年)、国立国会図書館調査及び立法考査局でロシアの立法動向の調査に従事した(2011-2018年)。2019年3月、東京大学先端科学技術研究センター特任助教。2022年1月より現職。