2025年05月30日(金)
岩田 覚(いわた さとる)教授
弓術部長。大学院情報理工学系研究科所属。数理工学全般における基礎的諸問題の解決をテーマとし、特に離散最適化とその工学的応用である離散数理工学を研究して、数々の業績をあげている。東京大学の学部生のころ、4年間弓術部に所属。
穴迫 春海(あなさこ はるみ)さん
東京大学文学部4年生。弓術部主将
谷口 茉結(たにぐち まゆ)さん
東京大学工学部4年生。弓術部女子責任者
※写真:左から、谷口さん、岩田教授、穴迫さん。育徳堂正面入り口の前で
関係する東大基金プロジェクト
弓術部 育徳堂大改修支援基金
マサ:インタビューを担当いたします、東京大学4年で、学生ファンドレイジングサポーターを務めておりますマサです。弓術の魅力が伝わり寄付をしたくなるようなインタビューを作りたいと思っております。よろしくお願いいたします。
まずみなさん、どうして弓術部を選択されたのか教えていただけますか?
谷口さん:中高は全く弓道をやったことがなかったのですが、兄が弓道をやっていたので、弓道部か弓道サークルに入りたいなと思っていました。
そこで、弓道部に体験入部してみたのですが、2年生が1年生に一対一で教えてくれるという時間があって、全く何も知らない私に向かってすごく丁寧に教えてくれた上級生に対して「お優しいな、かっこいいな」と思って、入部することを決めました。
穴迫さん:僕は中学から弓道を続けていて、大学でも弓道をすることにすごく魅力を感じていました。ですので、僕は、大学選びというよりも弓道部選びという感じでした。行ける大学でどこが一番強いかなという時に、東大が一番強いことがわかり、「あ、じゃあ東大行こう」と思って、進路を決めたようなものです(笑)
マサ:すごいですね。東大の弓術部は都学二部に所属をされているそうですが、これはどのくらいの強さなのでしょうか?
穴迫さん:二部はスポーツ推薦などで選手を取ってくる私立の2校と他のスポーツ推薦をやってない大学3校で構成されています。東大は一般入試で入ってくる部員が所属する大学としては、トップクラスだと思います。
マサ:非常に強いのですね。4年生に上がり、執行代ということで、どういうチームを目指していきたいか、お2人にお聞かせ願えますでしょうか。
穴迫さん:全員が弓道をやっていて楽しいチームにしたいです。そのためにも試合で勝つことにこだわっていきたいです。
二部に昇格したのは僕が1年生の時でした。二部への昇格をかけた試合には全部参加していたのですけど、その時の一体感がすごくて、当時のような試合や勝利の瞬間を部員に体験してもらいたいです。
谷口さん:私も同じように強い弓術部にしていきたいなと思っていて、特に全員が努力を続けられるような環境を作っていきたいです。
特に今年は『常昇』という目標を掲げていて、一人一人が常に高い目標を立てて、練習に精進していきましょう、という考えを持っています。そのような環境を整備していきたいし、それに応えて、部員一人一人が練習に全力を注いでくれるような部にしていきたいです。
マサ:ありがとうございます。今後の活躍を非常に楽しみにしております。
未経験者から入部する方も東京大学だと非常に多いと思うのですが、弓術部は初心者へのトレーニングが充実していますよね。どのようなことを意識されているのか詳しく教えていただけますか?
穴迫さん:弓道は「型の武道」だと僕の中高時代の先生はおっしゃっていました。
ただ、その型が存在していること自体に、別に意味はなくて、その型をいかに自分が理解するかということが大切だと思っています。
入部したての頃は、「この動きはなんだ!?」と思うし、見様見真似でやるしかないと思うのですが、練習していく中で、「実はここにはこういう意味があって、ここはこうするためにあるんだ!」と理解できるようになってきます。徐々に自分の視界が開けてくるというんですかね。
だから型は型でしかないんですけど、弓道という競技そのものへの理解を広げるための一つの足がかりではないかなと思っています。
マサ:現在、弓術部の部長を務めておられる岩田教授にもお話を聞かせてください。学生時代、弓術部にご在籍だった頃に育徳堂は活用されていたのですか?
岩田教授:もちろんです。育徳堂は建設されてから約90年ですからね。雰囲気はほとんど変わっていません。
ただ、先行的に実施した改修工事でこの辺りの色なんかはガラリと変わりましたね。もちろん建物全体の補修をして、最後に色を塗るという形なので、見た目は色が劇的に変わっているのですけど、建物の強度としても改善されております。
マサ:なるほど。今回育徳堂はどうして、改修の工事を行うことになったのでしょうか?
岩田教授:一番大事なのは、耐震の観点ですね。
耐震検査を行って、結果としては、しばらくは問題なく使えるとのことでした。
ですが、屋根瓦のところで少し水漏れしていて、それがコンクリートの中に染み出していることがわかりました。
将来的に、建物の構造にとって危険だということがわかりました。その話が最初に出た時に「先送りにしちゃいけない」と感じました。「まだ今すぐやらなくてもいいよね」とかって言って先延ばしにしていると、将来もっともっとお金がかかりますしね。
なので、すぐに手を打とうということで、とりあえず初期的な工事を行った段階です。一方でお金もきちんと集めて、10年以内に本格的な工事ができるといいなと考えております。
マサ:ありがとうございます。それは先送りできない、重要な問題ですね。
現在の寄付金の状況なのですけれども、順調に集まっておりまして、1700万円ほど集まっているようです。これはOB・OGの方からの支援が多いのでしょうか。
岩田教授:そこは本当に大きいですね。
OB・OGの方でも育徳堂の改修に向けて、同期の方に対して積極的にお声がけいただくなど努力されている方が多くいらっしゃって、そういう方々のおかげで本当に成り立っていると思っています。
マサ:部員の方は、OB・OGの方と普段から接することはあるのですか?
穴迫さん:まず師範がOBの方なんですよ。それから今日もそうなのですが、ご自身の弓道の練習や学生の指導のために育徳堂に来てくださることもありますね。
マサ:先ほども育徳堂の伝統的なところを残していきたいという話があったと思いますけど、僕もキャンパスの中を歩いていて、やっぱりすごく特殊な雰囲気だなと感じることが多いです。育徳堂の好きな点があれば、ぜひ教えていただきたいです。
穴迫さん:僕の場合、ずっと弓道をやってきて、さまざまな弓道場を見て回ってきたのですが、配色がいいですよね。 こういうシックな配色の道場ってなかなかなくて、すごく落ち着く空間だと思っています。さらに築90年の弓道場って、もうほぼ残ってないんですよ。
だからそういう歴史のある道場に自分がいられるっていうこと自体がすごく貴重な時間だと感じて弓道に取り組むことができます。
マサ:最後に寄付者の方に向けて、育徳堂への思いも併せて一言メッセージをお願いします。
穴迫さん:育徳堂に興味を持っていただきありがとうございます。
育徳堂はすごく歴史のある道場でして、この国の文化財レベルで価値のある建築だと思っています。
こういう歴史のある弓道場を保存するということは、歴史的な意義のある活動なのだということを、ぜひ知っていただけたらありがたいですし、これからも学生が大学4年間を捧げる場所を保存するためにお力をいただきたいです。
ぜひご支援をお願いしたいと思っています。
マサ:ありがとうございます。谷口さんはいかがですか?
谷口さん:今まで数多くのOBOGの方が、練習をして歴史を紡いできた現場ですので、これから先の学生が同じように歴史を紡いでいったり、弓術部を形作っていったりする場として、保存したいです。そのためにぜひご協力をお願いしたいと思っております。
マサ:ありがとうございます。最後に岩田先生お願いします。
岩田教授:立場上、大学の弓道場を拝見する機会が多いのですが、育徳堂のようにキャンパスの一番メインのところに弓道場があることって、なかなかないんですよね。
今回運営面で弓術部に携わってきて、東大の弓術はとても恵まれた環境で、4年間を過ごしているんだなと思うようになりました。
そういった百年の思いを、次の百年につないで、東大の中で弓術部がきちんと活動していくことを期待しております。
マサ:はい、ありがとうございます。貴重なお話、ありがとうございました。
〈インタビューを終えて〉
今回のインタビューを通じて初めて育徳堂のなかに入らせていただきましたが、ピンと張り詰めた空気の中、矢が的を捉えた時の音が響き渡り、百年の歴史を感じる特別な雰囲気の場所でした。こうした伝統が次の百年にも受け継がれて欲しいと思います。