【お知らせ】
このプロジェクトは2024年6月30日をもって、寄付募集を終了しました。
ご支援ありがとうございました。
アジアは世界人口約78億人のうち、約46億人と約6割を占め、世界の過半の資源を消費し、GDPの比率もついに世界最大となりました。アジア地域は、言語や宗教などの共通のバックグラウンドを持つ欧米諸国とは異なり、多様な言語、文化、宗教、政治体制、経済発展モデルを有しています。自然災害も多様で、成長の副作用としての環境問題も深刻です。
グローバル化を経て、大国間対立に見られる文明間の摩擦も増大している今日、日本だけでなく他の国・地域にとっても、アジア地域との関係を巧みに管理する必要性は増大しています。アジアの多様な国・地域との間で相互理解・相互信頼を築いていくためには、正しいアジア理解に基づいたリベラルアーツ教育を行うことが必要であり、そのためには良質な研究書が、高い対価を支払わずとも全ての人に行き渡ることが不可欠です。こうした研究・教育による他者への共感力、多文化社会への寛容性、国際感覚の醸成は、SDGsの実現にとっても極めて重要なのです。
現在、英語で行われている「アジア学」に関する高等教育は、日本国内のみならず多くの地域で欧米発の教材が使われています。日本のような非英語圏のアジア研究は、領域によっては日本語または現地語(例えば中国語や韓国語)による成果の発信が重視されてきました。他方で、英語による発信が手薄なままで、数多くの優れた研究成果があるにも拘わらず、アジアに根ざしたアジア研究はグローバルな発信ができていない状況にあります。
しかし、世界のより多くの人がアジアに対して正しい理解を深めるためには、欧米発の学問体系に加え、アジアに根差す日本のアジア研究をもとにした教育も行っていく必要があります。これからは、日本語圏でなされた優れたアジア研究を、広く世界の研究者や学生に発信したいと考えています。日本のアジア研究の中核を担っていた東京大学東洋文化研究所こそがその責を担うべきです。
私どもは、以上の問題意識のもと、主として日本語でなされてきた優良なアジア研究の成果を英訳し、The University of Tokyo Studies on Asia(東京大学東洋文化研究所アジア研究叢書)として、シリーズ刊行します。
東洋文化研究所及び著名な世界の研究者によって審査された、日本語によるアジアに根差したアジア研究成果を翻訳、編集し、Springer Nature社※から、無料でダウンロードできるオープン・アクセスでのシリーズ出版をします。1冊目は、学内の部局横断的な「アジア学」教育の教科書(Indo-Pacific: History and International Relations in Emerging Asia(仮題))として刊行準備が進んでいます。
東洋文化研究所では、2019年度から社会科学研究所とともに、英文図書刊行支援事業(UT-IPI)を立ち上げ、英文エディターを配置して、英語による人文研究の対外発信を展開中です。2冊目以降は論文や本の候補を募集し、UT-IPI と連携して定期的に出版事業を展開していく予定です。なお、東大を始め、国内外の英文による優れたアジア研究成果(学位論文等)の刊行も視野に入れています。
※Springer Nature社
…オープン・アクセスの研究を出版する世界最大の学術出版社。国際科学誌として有名なNatureを出版。他にも毎年100万件を超える記事の投稿を取り扱い、約3,000の雑誌、13,000の書籍で約300,000の記事を公開している。
委員長 松田康博(教授)
委員 青山和佳、中島隆博、桝屋友子(以上、教授)、小川道大、佐橋 亮、Christopher Byron-Gerteis(以上、准教授)
Patricio Abinales (University of Hawai’i at Manoa, USA)
Cemil Aydin (University of North Carolina at Chapel Hill, USA)
Sébastien Billioud (University Paris-Diderot, France)
Michael Charney (SOAS University of London, UK)
Fei Deng (Fudan University, PRC)
Evelyn Goh (Australian National University, Australia)
Kim Hang (Yonsei University, Republic of Korea)
Laura Hein (Northwestern University, USA)
A-chin Hsiau (Academia Sinica, Taiwan)
Martin Kern (Princeton University, USA)
Czarina Saloma-Akepedonu (Ateneo de Manila University, Philippines)
Mansur Sefatgol (University of Tehran, Iran)
Upinder Singh (Ashoka University, Sonipat, Haryana, India)
Mimi Yiengpruksawan (Yale University, USA)
Hilde De Weerdt (Leiden University, The Netherlands)
Zhang Yongle (Peking University, PRC)
募集を開始し、3年間で6冊の英文図書を刊行予定
オープン・アクセス出版にすることにより、東大発の質の高いアジア学の研究成果を誰でも、どこにいても享受することができ、SDGsの目標達成に貢献するとともに、論文への引用を促進し、本叢書の学界へのインパクトを高めることができます。
また、日本語から英語への翻訳、編集を支援することで、英文図書刊行に対するハードルを下げることも大きな目標です。このことを通じて、日本語圏の人文・社会科学を世界に参入させ、同時にその国際化を加速させることが期待されます。
日本語圏の優れた研究成果を東大発として世界に発信し、同時に世界から優れた著作を募ることで、広い地域における研究者と知識を共有することができ、東大のアジア研究ハブ拠点としての国際的な存在感を高めます。これにより、欧米を軸に積み重ねてきたこれまでの学問体系や蓄積だけではたどり着けなかった新たな視角を打ち出し、アジア研究のグローバル・スタンダードの確立に挑戦します。
本基金で集まった寄付金は、
・出版社編集委託費
・翻訳費
・校閲費
・事務局編集・改訂費
等として、活用いたします。
アジア研究80年の蓄積に裏付けられた東京大学東洋文化研究所が、Springer Nature 社と協力して、継続的に無料でアジア研究の成果を国際発信し、全世界の若者へ平等な学びの経験を提供するために、皆様からの温かいご支援を賜りたくお願い申し上げます。
2024年10月07日(月)
アジア発のアジア研究をオープンアクセス方式により英語で発信するというコンセプトの下、Springer Nature社を契約相手として出版活動を行いました。
東洋文化研究所内にアジア研究叢書刊行委員会を設置し、原稿の募集、審査、Springer Nature社への推薦、Springer Nature社による査読、契約、出版という制度を作りました。
基金の設置から3年あまりたち、10冊の応募があり、8冊が審査を通過し、2冊が刊行されるにいたりました。
寄付金は主に1冊目のオープンアクセス出版費として使用させて頂きました。
プロジェクト運営のための人件費と以下にあるシリーズ1作目のオープンアクセス出版費用の一部として支出致しました。
不足分は東洋文化研究所の予算から支出致しました。2024年9月17日現在、同書のダウンロード数は1万回を超えております。
Jin Sato and Soyeun Kim eds., The Semantics of Development in Asia: Exploring ‘Untranslatable’ Ideas through Japan, Springer, 2024.
今後は、後継の特定基金「 東洋文化研究所基金」に引き継ぎ、最高水準のアジア研究環境を整備し、世界に開くことで、国際的ハブ拠点機能をさらに強化します。
今まで温かいご支援を賜り、誠にありがとうございました。
2021年11月12日(金)
東京大学基金活動報告会2021 第2部オンライン交流会グループCの冒頭にて行いました、プロジェクト活動報告の動画です。
<東大アジア研究叢書基金>
<東大アジア研究叢書基金>