ソンマ・ヴェスヴィアーナ発掘調査プロジェクト

イタリア共和国にあるローマ時代遺跡の発掘調査

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プロジェクト設置責任者

東京大学大学院総合文化研究科 教授
村松 眞理子

今年度寄付総額
29,000円
今年度寄付件数
7件
現在の継続寄付会員人数
1人

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ご支援のお願い
~プロジェクトリーダーからのメッセージ~

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ソンマ・ヴェスヴィアーナの位置(Google Earthに加筆)

日本列島で大陸から伝わった米作りが広まってきた頃、ヨーロッパの地では「ローマ帝国」という民族の枠を超えた一つの領域国家が発展しつつありました。その帝国が、地中海を中心にその版図を大きく広げつつあった西暦1世紀の後半に起こったイタリア・ナポリ近郊の、ヴェスヴィオ山の巨大噴火によって埋もれた町「ポンペイ」の話はあまりにも有名です。

ポンペイは、その噴火によって壊滅して地中に埋もれてしまい、町として復興される事はなく、人々の記憶から消えてしまいました。しかし、同じ噴火で罹災した地域の中には、見事に復興を遂げた場所も存在しています。我々は、そうしたローマ時代の遺跡の発掘調査を、2002年以来現在まで続けています。  

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ソンマ・ヴェスヴィアーナの遺跡の最近の発掘調査区

一方、ローマ時代の有名な歴史書の中には、帝国の初代皇帝であったアウグストゥスは、ヴェスヴィオ山の北側に所在した別荘で西暦14年に息を引き取り、その後その別荘は、彼を顕彰する施設として奉献されたという記述がありますが、現在に至るまでその別荘の存在は特定されていません。

そうした中、近年の我々の発掘調査で西暦79年のヴェスヴィオ山の噴火によって埋没した建物の一部が発見されました。これは、とりもなおさずこの地域で初めてアウグストゥス帝の別荘と同時代の建物が学術的な裏付けをもって見つかった事を意味しています。

調査を通じて得られた、「噴火罹災地の長期的復興のプロセスを復元する事」と「初代ローマ皇帝アウグストゥスの終焉の地を、考古学的に検証する事」という2つの大きなテーマを追求するためには、発掘調査の規模をなお一層拡大する事が不可欠です。

もう一つのポンペイを現代によみがえらせ、アウグストゥス帝の事績とローマ帝国のはじまりをたどるために、是非ともより多くの方々のご支援を賜り、共に人類の歴史の重要な1ページの新たな発見者になっていただきたいと思っています。
 

東京大学大学院総合文化研究科 教授
村松 眞理子

プロジェクト初代設置責任者からのメッセージ

東京大学を中心とする発掘調査団が2002年からヴェスヴィオ山の山麓で発掘を行っています。場所は北山麓に位置するソンマ・ヴェスヴィアーナ市で発見されたローマ時代の遺跡です。ヴェスヴィオ山を挟んで反対側にあるポンペイと比較することによって、ローマ時代の歴史と文化をいっそう深く広く理解できることでしょう。

東京大学名誉教授、文学博士
青柳 正規

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2023年活動報告
ーイタリア共和国にあるローマ時代遺跡の発掘調査の経緯と本年度の活動ー

【イタリア共和国にあるローマ時代遺跡の発掘調査の経緯と本年度の活動】
写真1 2003ー2004年で検出された2世紀の建物_サイズ調整済み.jpg
2003ー2004年で検出された2世紀の建物

東京大学では、2002(平成14)年から現在に至る22年間に渡って、イタリア共和国カンパーニア州ナポリ県ソンマ・ヴェスヴィアーナ市において、ヴェスヴィオ山の噴火によって埋没したローマ時代遺跡の発掘調査を継続的に実施してきました。

現在まで3,500㎡ほどの範囲で発掘調査を行ってきましたが、調査対象となる建物のかなりの部分はまだ地中に埋もれたままで、その全貌は未だ明らかではありません。現時点では、この建物は、優に4,000㎡を超える大規模な建物であったであろうことや、出土した遺物や現在までに判明している建物のレイアウトや建築装飾要素などから、創建は紀元後2世紀頃と推定されています。さらに、近年の調査によって、この建物に覆われた形で、より古い、紀元後1世紀以前に建てられた別の建物がまだ地中に遺存していることが明らかになりました。

なお、現在まで調査の進んでいる建物は、創建当初には何らかの公共的な性格を有する施設の一部を構成していた可能性が高く、例えば、地域の宗教センターのような役割を果たしていたと考えられること、その後、途中幾度かの大きな改築を経て、3世紀以降に建物の使用目的が大きく変わり、以後はワイン醸造所として利用されたと考えられます。5世紀に入るとワイン製造も廃れて全体が徐々に荒廃し、建物の周囲で耕作されるようになると、建物の一部を便宜的に利用するだけの施設となったようです。472年のヴェスヴィオ山噴火によって壊滅的な破壊を受けた際には既にほぼ廃墟化した状態にあったと考えられます。

472年の噴火に伴う土石流によって建物のかなりの部分が一気に地中に埋没し、その後6世紀のはじめにも再度大規模な噴火に見舞われたため、建物の殆どの部分が地中に埋没しました。そして事態が沈静化した後もこの建物は復旧されることはなく、以後当地はもっぱら農耕地と利用されていたようです。

【2023年度の活動】
2023年度は、主に下記の2点に関する活動を実施しました。

1)当該遺跡の発掘調査
写真2 2023年の発掘調査区とソンマ山_サイズ調整済.jpg
2023年の発掘調査区とソンマ山

現在まで調査を続けている建物(2世紀に創建)の東側の屋外域に発掘範囲を拡げて、当時の2世紀頃の地表面からできる限り深いところまで掘り下げました。これは、2世紀以前の地層の性質や堆積構造などから、ここ数年の調査によってその存在が明らかにされた一段階古い時期の構築物の建築時期やその当時の周辺環境などを明らかにすることを主たる目的としています。

ここ数年の発掘調査によって、2002年以来一貫して調査を継続している2世紀創建の建物の下には、それより時期の古い構築物が埋没していることがいよいよ明らかになってきたので、本年度の調査では、調査範囲を拡張して、この古い時期の建物が構築された当時の地表面の検出に努めました。

その過程で、ポンペイなどの街を埋め尽くした西暦79年のヴェスヴィオ山噴火由来の軽石と火山砂の薄い層が昨年に引き続いて検出されたことに加えて、これらの火山噴火に伴う堆積物が、古い時期の建物が建てられた時期よりかなり後になってから堆積したものであろうことがより確実になり、この古い建物の構築時期が紀元後1世紀以前である蓋然性が高くなりました。一方、今年度は、79年の噴火砕屑物によって覆われた部屋の内部の調査を進め、紀元後1世紀の時期に広くローマ世界で流通した、ワインやオリーブオイルの運搬・貯蔵に供されたアンフォラ(大型の陶製壺)が10基以上部屋内部に保管されている状態で発見されたほか、それより古い時期に部屋内に構築された竈状の火床が複数発見されるなど、建物の建築時期やその性格、建築当時の周辺環境を検討する上で大変興味深い遺構や遺物が多数発見されました。

さらに、今年度の調査成果は、歴史的に当地周辺にその存在が推定されていた、初代ローマ皇帝アウグストゥスが息を引き取ったとされる彼の別荘、あるいは同時期の建築物の存在が確認されたことも意味し、本遺跡調査の意義は、今までの20年とは一線を画する大きな転換点を迎えたと言えます。

2)教育プログラムの拠点と成果公表の進展
ソンマ・ヴェスヴィアーナの発掘調査の現場を、教育の分野において活用することがどのように有効か、考古学の本来の学際性とその国際的な環境に注目し、専門家の育成という視点に加えて、さまざまな専門分野をもつ(もちうる)東京大学の学生たちへの学際的教育を主眼に、2017年度以来研修プログラムを実施しています。

本年度については、新型コロナウィルス(COVID-19)感染症が未だ完全に終息したとは言いがたい状況でしたが、万全の感染対策を講じた上で、同国際研修を9月に実施しました。現地においては、実際に調査現場において発掘作業に参加した他、調査や研究に関連して複数の講師による遺跡での特別講義や、現地学生との直接交流会の実施など、充実した研修を行いました。

大学入学後間もない1,2年生の学生にとっては、調査・研究を取り巻く国際環境の入り口を垣間見ることによって、グローバルな視野から自らの環境を客観的に評価する端緒を体験的に獲得することができ、大変有益かつ貴重な機会を提供しています。

前述の通り、長年にわたる発掘調査が大きな転換期を迎えている今、本プロジェクトを大きく前進させるためには皆様からのご支援が必要です。また、このような機会を、より多くの学生が実際に体験する教育の場として活用していくためにも、引き続き皆様からの温かいご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

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お名前 日付 金額 コメント
株式会社パレット 長谷川雅啓 2024年02月03日 10,000円 今後の研究報告を楽しみにしています!
<ソンマ・ヴェスヴィアーナ発掘調査プロジェクト>
岡田 幸村 2019年11月22日 10,000円 ローマ時代の歴史と文化の研究にお役立て下さい。(東京銀杏会・岡田幸村)
<ソンマ・ヴェスビアーナ発掘調査プロジェクト>
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