東京大学には1877年の開学以来、研究や教育のために集められた学術標本資料(=東京大学コレクション)が大量に蓄積され、今も絶え間なく増加を続けています。それらは、太陽系の起源を物語る隕石、自然の神秘を示す動植物、世界最古の文明や文字記録のない日本の歴史を伝える遺物などが含まれ、総数は400万点以上にのぼります。
この貴重なコレクションは、人類が宇宙を、地球を、そして自らを理解するために不可欠な物的証拠であり、日本が誇る最先端の研究教育をささえる基盤となってきました。総合研究博物館は、これを守り、発展させ、未来の学術を導くと同時に、広く展示公開して社会に役立てる使命を担っています。
ところが国立大学予算が削減される昨今の状況下で、その安定的維持が課題となってきています。そこで、上記の使命を果たし、充実した博物館活動を通じて豊かな社会を実現していくために、本基金を設立することとしました。皆様の温かいご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げる次第です。
東京大学総合研究博物館とは
1996年に発足した国内初の大学博物館です。東京大学コレクションを創造的な手法で展示公開するとともに、これを維持・発展・継承し、世界最高水準の研究と、次世代人材を育成する役割を担っています。
東京大学コレクション
地学(鉱物、岩石・鉱床、鉱山、地史古生物、地理)、生物(植物、森林植物、薬学、動物、水産動物、人類先史、医学)、文化史(考古、建築史、考古美術、美術史、文化人類)に関わる、400万点以上の学術標本を主体としています。その内容は、「かつて日本列島にゾウがいた」ことや、「縄文時代という時代があった」ことなどを解き明かした明治期の歴史的資料から、生物の種を決めるタイプ標本(数万点)、自然環境や文化の変遷および人類進化などを探る最先端研究に供される資料など、多種多様です。こうしたコレクションは、研究活動の進展に伴い、今も絶え間なく追加・拡充されています。
左)大森貝塚の土器。1877 年にE・モースにより発掘され、「縄文時代」の存在が明らかになった。重要文化財。
中)1881年にH. E. ナウマンが記載したナウマンゾウの最初の化石。東京駅に近い江戸橋で発見された標本。
右)世界最後の「幻の大蝶」と呼ばれるブータンシボリアゲハの標本。2011年にブータン国王より寄贈された。
※こちらから展示案内をご覧になれます
知的好奇心を社会と共有する「多館体制」と「入場無料」
社会と広い接点を持ち、多くの方にコレクションに触れていただけるよう、学内外に複数の拠点を持つユニークな体制をとっています。展示はどなたにもご覧いただけるよう、入館無料の運営を続けてきました。
新発見を求め、最先端を切り開く博物館
私たちは大学コレクション・センターとしての立場にとどまらず、「大学博物館」の潜在力を最大化する模索を続けてきました。これまでの活動は多岐にわたっています。
1996年 国内初の「教育研究型」大学博物館として誕生
1997年 未来型「デジタルミュージアム」の構想を披露
2000年 世界に先駆けて高精度CT撮影装置を導入し、人類の起源解明などに貢献。
2001年 小石川分館「建築ミュージアム」開館
2006年 先駆的な「モバイルミュージアム」の構想を披露
2013年 東京駅前にインターメディアテク(IMT)誕生(日本郵便株式会社との協働施設)
2014年 後楽園の宇宙ミュージアムTeNQ内に「太陽系博物学リサーチセンター」開館
2016年 最先端の放射性炭素年代測定装置を導入しその運用現場を展示
2020年 東京大学の学際融合研究施設として改組
2023年 福島県に「楢葉町×東京大学総合研究博物館連携ミュージアム 大地とまちのタイムライン」開館
本館で公開している放射性炭素年代測定現場
博物館のホームページはこちらをご覧ください。
博物館のスタッフについてはこちらをご覧ください。
東京大学コレクション未来基金
コレクション保管機能の改善
博物標本は情報(真実)の源泉であり、その価値は時代を越えて不変です。近年では、DNA解析や元素分析による古環境復元など新たな分析手法が続々と開発され、それらを適用する対象としての標本の重要性がますます高まっています。しかし当館の収蔵施設は1966年当時から抜本的に改修されておらず、スペース不足のほか、雨漏りや移動棚の故障にも悩まされています。コレクションを未来へ継承するため、貴重標本室の改修や、収蔵施設の拡充を行います。
コレクション収蔵室
展示機能の改善
誰もが感動を味わい好奇心を共有できる場とするため、私たちはコレクションを無料で公開しています。しかし本郷本館の展示室は築40年ほどを数え、老朽化が進んでいるだけでなく、セキュリティや外気遮断が担保できる構造になっていません。そのため、展示可能な標本が限られているのが現状です。施設を改修し、皆様に最前線を体験いただける、より魅力的な展示環境をつくっていきます。
博物館玄関(左)と展示室の様子(右)
2024年02月15日(木)
当館が保管する、400万点以上の貴重な学術標本資料群「東京大学コレクション」。これをさらに充実させ、多面的に分析して得られる最先端の研究成果を魅力的な手法で展示・公開し、学内外の多くの皆様と共有することが、私たちの重要な使命です。当館の展示施設は、本学の多彩な研究教育活動を社会に発信するための重要な拠点ともなっています。
そのため、当館では本郷本館、小石川分館、インターメディアテク、楢葉町×東京大学総合研究博物館連携ミュージアムといった4つの主要な展示施設での常設展示を維持管理しつつ、年間を通じて様々な特別展示を企画したり、私たちがモバイルミュージーアムと呼ぶ国内外の移動展示場を開設したりしています。
その中でも核となる本郷本館の展示施設は、これまで数度にわたり大きくリニューアルされてきましたが、展示場の魅力を維持・向上させるため、その合間にも日常的な管理作業や展示標本の部分的な変更・拡充を行っています。
そうした博物館活動を支えていただくために皆様より頂いたご支援を、本年は以下のように活用させていただきました。
・コレクションボックス内の標本、およびケースの清掃
本郷本館の正面玄関を入るとすぐ目に飛び込む「コレクションボックス」は、本学が保有する学術標本の多様性と研究の歴史を物語る、当館常設展のアイコンです。各部門の選りすぐりの貴重標本が集められていますが、ここ数年はカビの発生に悩まされるようになりました。360°どの方向からも標本がみられる構造とした分、標本の出し入れやケースの清掃が困難なのですが、それは変えずに定期的な標本のメンテナンス、ケースの点検、清掃を行うこととしました。
・新たな展示品
本郷本館の現在の常設展示『UMUTオープンラボー太陽系から人類へ』は、2016年5月にオープンし、その後、2017年に『人類先史、曙———東京大学所蔵の明治期人類学標本』を追加するなど、若干の更新を行ってきました。本年はそうした新たな拡充として、千葉県匝瑳郡(現匝瑳市)で発掘され当館に寄贈された長さ4mほどの丸木舟を追加しました。製作年代は現在調査中です。丸木舟の歴史は1万年ほど前までさかのぼり、人類史において非常に長く使われてきた水上航行具ですが、本例もその貴重標本の1つとなります。
・グラフィック張替え
以上と合わせて、正面玄関付近の展示室内デザインを変更しました。来館者の皆様におとりいただくパンフレット類の配置を見直し、壁面には新作のポスターを掲示し、全体にすっきりしたと思います。さらに、当館を応援いただく和が大きく広がるよう思いを込めて、展示室内に本基金の紹介を含めることといたしました。
博物館の活動は多くの方の目にふれる展示や関連イベントから、その基盤となる学術標本の維持管理まで、本当に多種多様です。限られた予算の中でこうした活動の安定的な維持が困難な中、東京大学コレクション未来基金を通じた皆様のご支援はたいへんありがたく、心より感謝申し上げます。
当館は標本コレクションの増加に対して、標本収蔵場所が逼迫しているという最大の課題を抱えており、今後も展示施設、および収蔵移設の機能改善、拡張に活用させていただく予定です。
引き続き、温かいご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
2023年09月05日(火)
東京大学基金で年1回開催している活動報告会開催日に、総合研究博物館における東大基金ツアーを開催しました。本ツアーは、東大基金のプロジェクトの活動内容を実際に見ていただくために、昨年度より東京大学基金活動報告会開催日(今年度は7月31日)に同日開催しており、今年は、総合研究博物館を含む3ツアーを実施しました。
総合研究博物館のツアー「大学博物館が所蔵する『知の源泉』を体験」には36名の方々にご参加いただきました。
ツアーは西秋館長の挨拶から始まりましたが、今年度は大変多くの方にツアーをお申し込みいただきましたため、参加者一人ひとりがツアーを楽しめるように2つのグループに分かれて見学がスタートしました。
総合研究博物館の最上階に位置するミューズホールでは、西秋館長から、東京大学コレクション(東京大学が1877年の開学以来、研究や教育のために集めてきた学術標本資料)の概要や歴史、そして現在の取り組んでいる研究に関する詳細な解説が行われました。これにより、参加者はツアーの全体像を理解すると共に、総合研究博物館の貴重な取り組みについて理解を深められたことと思います。
先史考古学の資料室では、西秋館長の解説を聞きながら、参加者の皆様は特注の木製引き出しで埋め尽くされた展示に興味津々で見入っていらっしゃいました。これらの資料は天井まで届くほどの高さで収納されており、その充実した内容に参加者の皆様が注目し、興味深くご覧になっていました。
「人類先史、曙」と題する特別併設展示では、遠藤副館長の解説を聞きながら、実際に研究をしている作業スペースや研究スペースの見学。さらに、通常は公開されていないバックヤードにて参加者の皆様は、貴重な蝶の標本に見入っていらっしゃいました。
ツアーの最後は、博物館の入口にて、参加者の皆様と一緒に集合写真を撮影し、1時間にわたるツアーを終了しました。
ツアー終了後は「普段は入れないエリアまで見ることができて楽しかった」「館⾧・副館⾧や諸先生の、真摯なご説明と、博物館活動に抱く誇りに感銘を受けた」といった感想をお寄せいただきました。
総合研究博物館では、学内で生み出される最先端の研究成果を魅力的な展示技術で公開し、研究教育、社会発信に貢献することをめざしていますが、このような活動を続けていくためには、皆様からのご支援が必要です。これからも総合研究博物館への温かい応援をどうぞよろしくお願いいたします。
報告:東京大学基金「東京大学コレクション未来基金」担当
2023年02月27日(月)
当館が保管する400万点以上の貴重な学術標本資料群「東京大学コレクション」。本基金はこれを維持・発展させ、広く展示公開し、社会により一層の豊かさをもたらしたいとの意志から設立いたしました。まだ立ち上げから半年余りですが、多大なご支援をいただき、たいへんありがたく、心より感謝申し上げます。
本基金を、早速下記の事項に活用させていただきました。
・標本資料を守るための収蔵庫空調システムの整備
・標本収蔵棚の整備
博物館の表舞台である展示やイベントを下支えしているのは、学術標本コレクションであり、それを維持するための標本収蔵庫です。今回の整備は、貴重な標本資料をカビや害虫被害から守るためにどうしても必要なものでした。重ねて御礼申し上げます。
基金はこの先も標本収蔵設備の改修や拡充に活用させていただくほか、展示施設の機能改善などにも活用させていただく予定ですので、何とぞ、引き続き、温かいご支援をお願い申し上げます。
2022年12月01日(木)
2022年11月26日に開催されました、オンライン講演会の開催報告です。
演者:遠藤秀紀(総合研究博物館教授)
博物館は、知識や理論の源泉となる標本を集めて研究し、次世代に継承する仕事を積み重ねています。今日は、一例として動物の骨を採り上げます。サイやイルカなどを題材に、骨から新しい事実や理論を生み出していく挑戦、そして、「知」を創造する標本として骨を未来に残していく営みを紹介します。こうしたすべての活動が、東京大学コレクション未来基金によって支えられていることに、心から感謝します。
ペンギンの頭蓋骨と演者
2022年09月09日(金)
約3年ぶりに、安田講堂にて対面で開催された「東大基金活動報告会2022」。
第1部活動報告会終了後に7種類のプロジェクト体験ツアーが開催され、総合研究博物館のツアーへは13名の方にご参加いただきました。
ツアーは遠藤秀紀教授の解説から始まり、一同、博物館入口からどんどん奥へと進み、普段は見学できないバックヤードへ。
以前は講義室として使用していたバックヤードでは、一般公開されていない貴重な蝶の標本をツアー参加者の皆様に見学していただきました。
遠藤教授の説明からツアースタート
博物館の展示やオープンラボを見学しながら奥のバックヤードへ
普段は見られないバックヤードの蝶の標本を見学
続いて、先史考古学の資料室では館長の西秋の説明を聞きながら、参加者の皆様は天
井まで届くような特注の木製の引き出しに埋め尽くされた様子に興味津々で見入って
いらっしゃいました。
先史考古学の資料室にて
ツアー最後には、総合研究博物館の最上階ミューズホールにて、博物館の概要や歴史について解説後、博物館入口にて、参加者皆様と共に集合写真を撮影して、約 1 時間にわたるツアーを終了いたしました。
ミューズホールにて
総合研究博物館ツアー参加者の皆様と
西秋良宏館長(最後列左から5人目)、遠藤秀紀教授(最後列右端)、海部陽介教授(最後列左端)
総合研究博物館が、1877 年の東京大学創設以来、研究教育のために収集し、そして現在も収集している膨大な量の学術資料のごく一部を、今回のツアー参加者の皆様にご覧いただきましたが、今回のツアーを通じて、このような貴重な学術資料を整理、保管、研究、公開することの意義や重要性について実感していただけたのではと思います。
スタッフ一同、これからも、博物館の活動を通じて、本学の研究教育や社会発信に貢献することをめざして励んでまいります。引き続き、あたたかな支援を賜りますようお願い申し上げます。
<東京大学コレクション未来基金>
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来年2月、上京予定ですので、また楽しみです。
末長く続きますように!
<東京大学コレクション未来基金>
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UMUTが長きに亘り運営されますよう、支援させて戴きます。
<東京大学コレクション未来基金>
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