東京大学医学部附属病院 消化器内科の胆膵グループでは、胆膵がん(胆道がん・膵がん)の診療に日々取り組んでいますが、診断・治療ともに十分な成績が得られているとは言えません。難治がんである胆膵がんの治療成績の向上を目指して、我々は短期・長期的な視野と多角的なアプローチからunmet needsの克服を目指しています。具体的には膵がん早期診断のための新規バイオマーカーを探索する研究、膵がんの高危険群である膵嚢胞に対するより効率的なサーベイランス法を確立するための研究、さらには腹膜播種を伴う膵がんや切除不能進行胆道がんに対する新たな抗がん剤治療の臨床研究および基礎研究を実施しています。
これらの研究は公的な競争的資金や東京大学医学部附属病院の研究費を用いて実施していますが、皆様のご支援を得ることができれば、より質の高い研究を迅速に実施することが可能になります。最難治がんである胆膵がんの治療成績を向上するためにも、早期診断・新規治療の開発に向けた研究に対する、皆様のご支援を賜りますようお願い申し上げます。
東京大学医学部附属病院
消化器内科 特任講師 高原 楠昊
胆膵がんは発病初期には自覚症状に乏しいため、“沈黙の臓器“のがんとして恐れられています。根治的な手術が望めない進行した状態で診断されることが多く、また手術できたとしても高率に再発することから、満足のいく治療成績は得られていません。これらのがんは近年増加傾向にあり、早期診断ならびに新規治療開発は喫緊の課題のひとつとなっています。私たちは多角的なアプローチにより胆膵がんにおけるunmet needsの克服を目指しています。
腹膜播種(腹膜への転移)は膵がんに好発する転移形態で、最も重要な予後規定因子のひとつです。しかし、腹膜播種の制御に注目した治療開発は不十分で、近年の化学療法の進歩にも関わらず、経時的な予後延長が得られていません。そのため、私たちは標準的な治療に新しい抗がん剤治療である腹腔内化学療法を併用する治療法を開発し、これまで東京大学基金に設置した「スキルス胃癌、膵癌、大腸癌に対する腹腔内化学療法の研究開発」基金を通じた多くのご支援により、現在、全国の6施設の協力を得て「腹膜播種を伴う膵癌に対するゲムシタビン/ナブ-パクリタキセル点滴静注+パクリタキセル腹腔内投与併用療法」の臨床研究を先進医療の制度下に遂行中です。腹膜播種の制御と治療成績向上のためには、治療効果を予測する革新的なバイオマーカーの確立に加えて、腹腔内化学療法に対する耐性獲得のメカニズム解明とその克服が必要不可欠であると考えています。そのために患者さんから得られる臨床検体を用いて探索的な検討も進めています。このような、腹腔内化学療法の研究開発に加えて、次のステップとして、胆膵がんに対する早期診断・新規治療の実現に向けた多角的アプローチによる研究開発を行うために、胆膵がんに絞った基金を設置してこの度、支援をお願いする次第です。
膵がんは特異的な症状に乏しいため、臨床症状を早期発見の指標とすることは困難です。そのため健診等による定期的な画像検査が提案されていますが、一般人口における膵がんの有病率は低いため、膵がんの高危険群を対象としたスクリーニングが必要と考えられています。近年の画像診断装置の機能向上に伴い、膵のう胞が指摘される機会が増加しています。膵のう胞は膵がんの危険因子のひとつであり、各種ガイドラインで定期的な画像検査の必要性が強調されていますが、その悪性化の頻度は年率0.5-1%程度と比較的低く、繰り返しの画像検査を行い続けることも負担となるため、より簡便で低コストなサーベイランス法の確立が求められています。
そのため、私たちは増加の一途を辿っている膵のう胞の患者さんに着目して、膵がん早期診断のための新規バイオマーカーを探索する研究を行っています。近年がん組織からはDNAやRNAなどの種々の遺伝子情報が、血液中に分泌・漏出してきていることが分かってきています。この情報を血液中から的確に入手することによって、直接腫瘍組織にアプローチすることなく、非侵襲的にがんの存在・特性を知ることができるようになってきました。私たちは膵がんで異常に作られているHSATII とよばれる特殊な反復配列RNAの定量法を独自に開発し、膵のう胞の患者さんにおける膵がん早期診断のためのサーベイランス法について研究しています。この研究により、膵のう胞の患者さんに生じる可能性がある膵がんを、より早期により低侵襲に診断できるようなると期待しています。
前述のように胆道がんの多くは切除不能な状態で診断され、また術後再発も多いことから、抗がん剤による薬物療法が胆道がん治療の中心的な役割を果たしています。従来は胆道がんに対する薬物療法として細胞障害性性抗がん剤 (がん細胞に作用し、細胞の増殖を抑える薬)のみが使用可能でしたが、2022年12月より免疫チェックポイント阻害剤であるデュルバルマブが、細胞障害性性抗がん剤であるゲムシタビン・シスプラチンとの併用で使用可能になりました。
免疫チェックポイント阻害剤は、 PD-1 (患者のTリンパ球に発現)と PD-L1 (がん細胞に発現)の結合を阻害する事で、患者自身が持っているTリンパ球が、がん細胞を攻撃できるようにする薬のことです。現在、デュルバルマブ以外にも様々な免疫チェックポイント阻害剤が盛んに開発されており、固形がんに対する薬物療法の中心的存在になりつつあります。
免疫チェックポイント阻害剤の作用機序
免疫チェックポイント阻害剤の奏功を予測する因子として様々なものが知られていますが、近年腸内細菌叢が免疫チェックポイント阻害剤の奏功に大きく関わることが報告されています。整腸剤として知られている酪酸菌製剤を内服することで、腸内細菌叢が変化し、免疫チェックポイント阻害剤が奏功するということが、さまざまながんで報告されています。そのため、胆道がんにおいても免疫チェックポイント阻害剤に酪酸菌製剤を併用することにより、治療効果の向上が期待されています。
私たちは、ゲムシタビン・シスプラチン・デュルバルマブ併用療法に酪酸菌製剤を併用する臨床試験を進めています。
新しい抗がん剤治療である腹腔内化学療法や酪酸菌製剤併用の免疫チェックポイント阻害剤の有効性を示すことができれば、より多くの患者さんの助けになる可能性があります。更にこれらの治療効果や耐性獲得についての解析により、さらなる新規治療の開発につながる知見が得られるものと期待しています。
これらの研究は公的な競争的資金や東京大学医学部附属病院の研究費を用いて実施していますが、より質の高い研究を迅速に実施するためには、更に研究費が必要です。最難治がんである胆膵がんに対する早期診断・新規治療の開発に向けた研究に対する、皆様のご支援を賜りますようお願い申し上げます。
2024年01月23日(火)
本プロジェクトのひとつとして、腹膜播種を伴う膵癌の患者さんを対象とした腹腔内化学療法の臨床研究を行ってきました。2020年からゲムシタビン/ナブ-パクリタキセル療法+パクリタキセル腹腔内投与併用療法の有効性および安全性を評価するために、東京大学医学部附属病院をはじめとする全国6施設による多施設共同研究を実施し、目標症例数の登録を完了することができました。現在ご参加いただいた患者さんの治療を継続し、2024年6月に試験結果を解析する予定です。私たちは腹腔内化学療法の高い有効性を実感しており、腹腔内化学療法を保険適応の治療のひとつに加えることができれば、腹膜播種で苦しんでいる患者さんのお役に立てるものと考えています。
また膵がん早期診断のためのバイオマーカーの確立を目指した研究も進めています。これまでに私たちは膵がんで異常に作られているHSATII とよばれる特殊な反復配列RNAの定量法を独自に開発しました。現在、膵のう胞患者さんの血液サンプルを用いて、診断精度のさらなる向上を目指した改良が進行中です。
これらの研究は公的な競争的資金や東京大学医学部附属病院の研究費を用いて実施していますが、より質の高い研究を迅速に実施するためには、更なる研究費が必要不可欠です。最難治がんである胆膵がんに対する早期診断・新規治療の開発に向けた研究に対する皆様のご支援を宜しくお願い申し上げます。
些少ですが研究に役立ててください。
<胆膵癌に対する早期診断・新規治療の研究開発>
ほんの少しの額ですが、助かるがんになるための研究に協力させてください。
<胆膵癌に対する早期診断・新規治療の研究開発>
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