ナフトピジルという主に前立腺肥大症に伴う排尿障害の治療に用いられている薬には、あらゆるがん種においてがん細胞を抑制する効果が期待されています。既に動物実験では効果が確認され、人間においても過去の症例を調べる研究(後ろ向き研究)ではナフトピジルを服用した症例において前立腺がんの発生頻度が約50%減少したという研究結果が報告(参考文献は最下部をご覧ください)されています。
私たちは、ナフトピジルが本当にあらゆるがん種への抑制効果を持つのかを検証するため、まず前立腺がんに焦点を当て、将来にわたる服用の効果を測定するための臨床研究(前向き研究)を2016年より開始しました。日本では近年、前立腺がんの罹患数・死亡数ともに増加傾向にあり、毎年約9万人が罹患し、それにより毎年約1万2千人が亡くなっています(出典:国立がん研究センターがん情報サービス)。この研究が証明されれば、日本で年間4万5千人、世界で年間66万人の前立腺癌患者を減らすことができます。同様に、前立腺癌の死亡を日本で年間6千人、世界で年間20万人減らすことができると期待されます。
前立腺がんで効果が実証されれば、その後はあらゆるがん種に対しての臨床研究へ進みたいと考えております。しかし、あらゆるがん種への応用へ進むためにも、まずは前立腺がんの予防効果についてしっかりと臨床研究を進め、実証していく必要があります。
世界的に見ても、がん予防の研究はなかなか進んでいません。現状での予防法は禁煙する、過度な飲酒を避ける、野菜をとるなど、生活習慣の改善によって異常な細胞ができるだけ出来ないようにする消極的なものが一般的です。これらは勿論重要なのですが、細胞は毎日分裂を繰り返しており、いくらリスクを減らしても、いつか異常な細胞の発生が起きるのは避けられません。また、紫外線のように日常生活では避けようがない原因と考えられているものも多数あります。
しかし、実際に異常な細胞が発生してしまった場合でもそれを修復する様々な力を人は持っています。その中の一つにアポトーシス(細胞の自殺)があります。アポトーシスがあることで、異常な細胞は複製されずに死滅するようにプログラムされるのです。いま私たちが予防効果を検証しているナフトピジルはがん細胞のアポトーシス死を促進します。下の画像の青い斑点はがん細胞で、赤い斑点はアポトーシスを起こしている細胞です。これにより、がん細胞の増殖を抑制します。
青:すべてのがん細胞 赤:アポトーシスを起こしている細胞
ナフトピジルのがん予防効果が実証されれば、生活習慣の改善によってがん細胞の発生確率を抑える従来の予防法ではなく、薬の服用によって積極的にがん細胞の増殖を抑える未来の予防法が実現するのです。
さらに、予防だけでなく治療の観点へも応用の可能性があります。ナフトピジルが従来の抗がん剤治療と大きく異なる点は、がんでない正常な細胞のへの影響が異なることです。抗がん剤は正常な細胞も異常な細胞も傷害します。これは、正常な細胞は何とか耐えられるけれども、がん細胞のような異常な細胞は耐えられない具合の量で投与していくことでがん細胞を死滅させていく薬なのです。これに対しナフトピジルは、正常な細胞を長生きさせながら、がん細胞は死滅させることができるのです。
がん患者さんの正常な細胞の様子。画像の多くを占める茶色の部分はアポトーシス死が起こっていないことを示しており、正常な細胞を長生きさせていることがわかる。
がん患者さんのがん細胞の様子。上の画像と比較すると茶色の部分がほとんどなく、がん細胞は死滅が進んでいることがわかる。
2016年に開始した研究は、2022年4月現在、科学的に必要な症例数に対して既に100%の登録数を達成し、研究途中で行われた解析でも予想通りの数値が確認されるなど、順調に進んでいます。今後、3年の経過観察を経てから前立腺がんの発生頻度を測定する予定となっています。しかし、2021年度で受託研究の契約が終了するため、2022年度以降、残り3年間の観察期間を継続するための資金を新たに調達しなければ、臨床研究を続けることができない状況です。
私たちが実施しているような前向きの発がん調査研究では、大変多くの症例を長年にわたり経過観察する事が要求されます。しかし、莫大な費用がかかる一方で、出資者に対する直接的な経済的リターンが少なく、このような研究において資金提供先を探すことは困難です。この研究の社会的インパクトに賛同していただける皆様からのご支援がどうしても必要なのです。
いただいたご寄付につきましては、臨床研究の経過観察・最終解析・最終報告書作成にかかる費用に使わせていただきます。臨床研究では、多くの施設から収集したデータをマネジメントし、また、それらを実際に施設へ訪問して照合するモニタリングをおこなうことで、効果の検証をより確実なものとします。この臨床研究をしっかりと前に進め、がん予防の未来を切り開くため、皆様のご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
研究代表者
東京大学医学部附属病院
泌尿器科学教室
山田 大介
(1) Kanno T, Tanaka A, Shimizu T, Nakano T, Nishizaki T: 1-[2-(2-Methoxyphenylamino)ethylamino]-3-(naphthalene-1-yloxy)propan-2-ol as a Potential Anticancer drug. Pharmacology 2013.
(2) Iwamoto Y, Ishii K, Sasaki T, Kato Y, Kanda H, Yamada Y, Arima K, Shiraishi K, and Sugimura Y: Oral Naftopidil Suppresses Human Renal-Cell Carcinoma by Inducing G1 Cell-Cycle Arrest in Tumor and Vascular Endothelial Cells. Cancer Prevention Research 2013.
(3)Yamada D,Nishimatsu H, Kumano S, Hirano Y, Suzuki M, Fujimura T, Fukuhara H, Enomoto Y, Kume H and Homma Y: Reduction of prostate cancer incidence by naftopidil, an α1-adrenoceptor antagonist and transforming growth factor-β signaling inhibitor. International journal of Urology 2013.
2023年12月20日(水)
がん予防プロジェクトは積極的な「がん予防法の確立」に向けて、がんを予防する研究を行うプロジェクトです。現在、「前立腺針生検陰性例に対するナフトピジルによる前立腺がん発生頻度の低下効果に関する前向き無作為化比較研究」を特定臨床研究として行っています。2022年3月末に目標症例数1,200例(100%)に到達し、2023年12月には予定していたイベント数に到達しております。各関連施設へのモニタリング、経過入力、安全性報告を継続して行っており、問題なく経過しております。
2025年3月に経過観察を終了し、その後前立腺がんの発生頻度を統計学的に解析する予定です。有効性が認められれば他のがん種でも臨床研究を行います。
2023年03月15日(水)
がん予防プロジェクトは積極的な「がん予防法の確立」に向けて、がんを予防する研究を行うプロジェクトです。現在、「前立腺針生検陰性例に対するナフトピジルによる前立腺がん発生頻度の低下効果に関する前向き無作為化比較研究」を特定臨床研究として行っています。2022年3月末に目標症例数1,200例に到達し新規の登録を終了しております。現在は各関連施設へのモニタリング、経過入力、安全性報告を継続して行っており、大きな問題なく経過しております。
2025年3月に経過観察を終了し、その後前立腺がんの発生頻度を比較検討する予定です。有効性が認められれば他のがん種の前向き臨床研究を行います。
2022年06月08日(水)
がん予防プロジェクトは「積極的ながん予防法の確立」に向けて、がんを予防する研究を行うプロジェクトです。ナフトピジルという前立腺肥大症で普通に使われている薬には、前立腺がんをはじめとする多くのがんの発生を抑える可能性があることが報告されており、現在、前立腺がんで実際に抑制効果があるかという大規模な臨床研究を進めています。
当初の目標症例数は1,100例でしたが、コロナ禍の影響により中止例が増加したことから、統計学の専門家らと協議し目標症例数を1,200例としました。現在、科学的に必要な症例数である1,200例の登録が完了し、研究途中で行われた解析でも予想通りの数値が確認できるなど、研究は順調に進んでいます。今後3 年間の経過観察を経て、前立腺がんの発生頻度を比較し、有効性が認められましたら他のがん種の前向き臨床研究を行います。
私たちが実施しているような前向きのがん調査研究では、大変多くの症例を長年にわたり経過観察することが要求されます。この臨床研究をしっかりと前に進め、がん予防の未来を切り開くため、皆様のご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
2022年01月14日(金)
がん予防プロジェクトは「積極的ながん予防法の確立」に向けて、がんを予防する研究を行うプロジェクトです。ナフトピジルという前立腺肥大症で普通に使われている薬には、前立腺がんをはじめとする多くのがんの発生を抑える可能性があることが報告されており、現在、前立腺がんで実際に抑制効果があるかという大規模な臨床研究を進めています。
当初の目標症例数は1,100例でしたが、コロナ禍の影響により中止例が増加したことから、統計学の専門家らと協議し目標症例数を1,200例としています。2020年8月のプロジェクト開始時には839例だった症例数は、2021年12月末現在で 1,152例まで増えたことで目標の96.0%を達成しました。中間解析も無事に通過し、がんの抑制効果の検証が順調に進んでいます。
2022年3月末で新規の登録を終了し、その後3 年間の経過観察を経て、前立腺がんの発生頻度を比較する予定です。有効性が認められれば他のがん種の前向き臨床研究を行います。
2021年11月12日(金)
東京大学基金活動報告会2021 第2部オンライン交流会グループBの冒頭にて行いました、プロジェクト活動報告の動画です。
2021年04月19日(月)
がん予防プロジェクトの設置責任者である久米春喜教授と研究代表者の山田大介講師がエムスリー株式会社からインタビューを受け、その記事がYahoo!ニュースにて掲載されました。
下記URLよりご覧いただくことができます。研究内容の詳細やこの研究を思いついたきっかけ、また資金調達の進捗状況などについて語られておりますのでぜひご覧ください。
目標金額3000万円、「がん予防PJ」寄付金で臨床研究、東大基金
https://news.yahoo.co.jp/articles/db834d0c483daa8b316a44321f505f3d6f5b7fb5
2020年09月28日(月)
「がん予防プロジェクト」にご寄付をいただき、誠にありがとうございます。プロジェクト開始から1か月間で330万円のご寄付をいただくことができました。これもひとえに皆様のご支援の賜物と、心より感謝申し上げます。
現在、東京大学臨床研究推進センターと協力して「前立腺がんの予防」につきまして前向き臨床研究を進めております。質の高い臨床研究遂行のために、研究の実施状況についての外部調査や、厳重なデータ管理等が必要であり、多くの費用がかかっております。
しかし、世界初の試みであり、日本のみならずアメリカやフランスからも注目されております。前立腺での効果が認められれば、他のがんでも臨床研究を計画していく予定です。今回の臨床研究で「新しいがんの予防法」を確立することにより、皆様のお役に立ちたいと考えております。今後ともご支援のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
<がん予防プロジェクト>
<がん予防プロジェクト>
<がん予防プロジェクト>
<がん予防プロジェクト>
<がん予防プロジェクト>
<がん予防プロジェクト>
<がん予防プロジェクト>
<がん予防プロジェクト>
<がん予防プロジェクト>
<がん予防プロジェクト>
<がん予防プロジェクト>
対象者の栄養状態や自律神経の状態DATAとの関連性もつかめれば素晴らしいと思います。
<がん予防プロジェクト>
<がん予防プロジェクト>
こういう有望な医薬品も栄養解析・栄養指導との相乗効果を期待します。
健康経営アドバイザーとして自社での栄養情報提供の成果に手ごたえを感じています。
それでも発癌するケースはあり、この研究に期待します。
<がん予防プロジェクト>
<がん予防プロジェクト>
成功をお祈りします。
<がん予防プロジェクト>
<がん予防プロジェクト>
<がん予防プロジェクト>