
南イタリア・ヴェスヴィオ山の北麓に眠る、ローマ時代の壮大な建築遺構。
その発掘調査を2026年も継続するために、今、3000万円の資金が必要です。
私たち東大発掘チームは、20余年にわたりこの地を掘り続け、「噴火罹災地の長期的復興のプロセスを復元する事」と「初代ローマ皇帝アウグストゥスの終焉の地を、考古学的に検証する事」を目的として、調査研究を行っています。
2000年前、ヴェスヴィオ山の噴火によって埋もれたもう一つの文明を、日本の学知でよみがえらせることに、考古学者たちがそれぞれの研究人生をかけて挑んできました。
そして、今、その確証まであと一歩という重要な局面を迎えています。
しかしながら、近年の資金難により、発掘調査の存続自体が危機的状況に瀕しています。
資金が集まらなかった場合、残念ながら発掘調査は断絶せざるを得ません。
みなさまのご支援が、世界史の空白を埋める一歩になります。
どうか私たちに、これまでのかけがえのない成果を活かし、掘り続けるチャンスをください。
プロジェクトリーダーからの動画
東京大学大学院総合文化研究科 教授
村松 眞理子
アウグストゥス帝の没後、当地に立てられた建物(2世紀後半)の三次元モデル
https://sketchfab.com/3d-models/20251003-generals-71a36d46c12b47d6837c93445e8892f0

◆四半世紀に及ぶ学際的発掘プロジェクト
東京大学を中心とした、考古学・火山学・文学・歴史学・建築学・碑文学・土壌学・生命科学・情報科学・保存科学など、2002年から始まった学際研究による国際プロジェクトです。紀元前後から現代までの2000年間に何度も繰り返された火山噴火罹災の歴史と、それによる文化環境や自然環境の変遷を明らかにすることを目指しています。

◆アウグストゥスの「終焉の地」の真実を解き明かす歴史的プロジェクト
近年の調査で、当遺跡の1世紀以前に建てられた建物が、初代ローマ皇帝アウグストゥス終焉の地であった可能性が非常に高くなってきました。このことは、世界史のミステリーのひとつを紐解く大発見につながるかもしれません。
タキトゥスの伝説から始まった、100年越しの発掘の物語。

現地周辺には古くから「アウグストゥス帝の別荘がある」と語り継がれてきました。
1920年代、地元農夫が偶然掘り当てた硬い構造物。考古学者の試掘により柱や彫刻等の壮麗な建築物の一部が次々と発見されながらも、当時の政情や社会情勢による資金難のために埋め戻されてしまいました。
70年後、私たち東大チームはその地を再び掘り起こすべく、イタリア政府の協力のもと、2002年から本格的に発掘調査を再開しました。
残念ながら、1920年代に発見された建物は調査の結果、紀元後2世紀の後半に建てられたものであることが判明し、アウグストゥス帝との直接の関係は否定されました。
ところが、20年以上に及ぶ発掘調査を経て、近年さらに、「2世紀の壮大な公共施設のさらに下層に、1世紀の建造物が眠っている」、という驚くべき事実がわかったのです。
本プロジェクト自体が、さまざまな紆余曲折を経て、イタリアから日本の力に託された、100年越しの発掘のストーリーなのです。
★動画で知るソンマ!発掘開始から20余年の足跡をドキュメンタリーで知ることができます!
【ソンマ・ヴェスヴィアーナ発掘調査プロジェクト、20余年の足跡】
類例なき発見!『7基のカマド』。―初代ローマ皇帝アウグストゥス別荘説への大きな前進
最近の注目すべき成果として、調査対象となった部屋には、現時点で少なくとも7基ものカマドが設えられていたことが確認されました。同時代のイタリア国内の遺跡にも類例を見ない、極めて稀有な施設であり、この遺跡がもつ特異性を示しています。
初代ローマ皇帝アウグストゥスが没した時代と同時期の建築物であることが証明されたこととあわせて考えると、歴史的にこの地域に存在したと推定されてきた彼の別荘が、まさに私たちの調査対象である建物そのものであるという仮説は、いよいよ現実味を帯びつつあると言えます。
~資金不足による調査断絶の危機。みなさまへご支援のお願い~
しかしながら、調査は今、大きな岐路に立たされています。深刻な資金不足に直面しており、このままでは2026年の発掘調査を実施できない可能性があります。7基のカマドの発見が示すように、遺跡はアウグストゥス帝別荘説に迫る重要な段階にあります。ここで歩みを止めることなく、火山灰の下に眠る歴史を明らかにするためには、皆様からのお力添えが不可欠です。
どうか本調査の意義にご理解を賜り、より一層の温かいご支援を心よりお願い申し上げます。

「オール東大で挑む学際研究と国際教育」
古代の「復興」から、現代の私たちは何を学べるか。
本プロジェクトの本質的価値は、「古代ローマの建物を掘ること」そのものではありません。
この遺跡が語るのは、巨大災害の後、人類がどのように生き延び、崩壊した社会がどのように再興されたのか?――という、地震・噴火国である日本にも通じる普遍的な問いです。
「文明は一度壊れても、再び立ち上がる」という人類史のリアルな証言なのです。
本プロジェクトでは、東大のさまざまな学知を連携し、学問の垣根を越えた総合的研究を進めてきました。さらに、専門教育とともに、学際的人材育成を目標に多分野に開かれた国際研修プログラムも展開しています。
イタリアと日本、両国の研究者や学生が協働するこの挑戦は、「人類共有の遺産を守る」国際的モデルケースにもなりうるのです。
「文化を共有し守り合う力を育てる。—「平和への貢献」
なぜ、イタリアの遺跡を日本が掘るのか?
文化遺産が自然災害や国際紛争の危機と破壊に瀕する現在、有形無形にかかわらず、文化財の研究・保護・保存修復は人類にとって緊急の課題です。それは世界の多様な人々の生活と文化と「記憶」を共有する平和への貢献でもあります。
イタリアの遺跡を日本の東大チームが発掘する意義とは、「人類共通の文化遺産を国境を越えて守り・解き明かすこと」です。
世界の近代考古学発祥の地であるイタリアで、日本の大学が学際協働と文化的共生のモデルを示すことは、それ自体に価値があり、東大だからこそできる、東大でなければできないことです。

ご支援は、現地での発掘・保存・分析等に充てられます。
【具体的に必要な作業にかかる費用】
たとえば、発掘調査を実施するにあたって、以下のような費用が必要になります。

◆初代リーダー 青柳 正規(東京大学名誉教授、文学博士)

東京大学を中心とする発掘調査団が2002年からヴェスヴィオ山の山麓で発掘を行っています。場所は北山麓に位置するソンマ・ヴェスヴィアーナ市で発見されたローマ時代の遺跡です。ヴェスヴィオ山を挟んで反対側にあるポンペイと比較することによって、ローマ時代の歴史と文化をいっそう深く広く理解できることでしょう。
◆現(4代目)リーダー・村松 真理子(大学院総合文化研究科教授)

私はイタリア地域文化論を専門とする研究者です。
発掘現場で実際に土に触れ、人々の痕跡を感じるたびに、言葉を超えた“人類の記憶“と重層的なイタリアの歴史、そして人間の物語に出会います。
初代リーダーの青柳正規先生から3代にわたり続いてきたこのプロジェクトのかけがえのない成果を、次の時代に引き継ぐ、それが私たちの責務です。発掘の手を止めないために、皆さんの力をお貸しください。
◆松山 聡(大学院総合文化研究科 特任研究員)

私は、2002年以来一貫して、発掘現場監督、現地対応、調査に関わる経理処理など、マルチに関わっています。
作業には苦労が伴いますが、出土するものは、一片の土器片であれ、壮大な建築物であれ、すべて世界中の誰よりも早く目にするものばかりで、自由に想像を羽ばたかせることができ、これこそが最前線の現場に関わる醍醐味です。
後世に名を残すであろう遺跡の調査にかかわれる幸せを、是非皆様にも共有していただきたいと、切に願っております。
◆杉山 浩平(大学院総合文化研究科 特任研究員)

2002年から暑いナポリの太陽の下で発掘調査に従事しています。考古学を専門としており、火山学など自然科学の研究者との共同研究に大変魅力を感じています。
遺跡の発掘で地層を1枚ずつ掘り下げていくなかで、どうして土がたまったのだろう、どうして瓦などがたくさん出てくるのだろう…など、考えてきた遺跡のストーリーもあと少しのピースで埋まるかなと思っています。
◆岩城 克洋(大学院総合文化研究科 特任研究員)

1995年からタルクィニア郊外でのローマ別荘発掘調査に参加して以来、現在まで30年以上、本プロジェクトの発掘調査に携わってきました。ソンマでの調査も20年を経過し、地表面から10m以上も掘り下げた地点から、2000年前の古代ローマ時代の新たな巨大遺構が顔を出し始めています。様々な研究テーマの宝庫であるこの遺跡の調査は驚きの連続です。今後も未知の世界の新たな知見を発信しつづけてまいります。
2026年02月04日(水)
1.2025年の活動
当該遺跡の発掘調査
東京大学は、2002年からおよそ四半世紀にわたって南イタリア、ヴェスヴィオ火山の北麓域においてローマ時代の大規模建物遺跡の発掘調査を続けています。この調査を通じて、敷地面積が優に4,000㎡を超えると推定される、紀元後2世紀に創建されて西暦472年のヴェスヴィオ山の大噴火で破壊された建物のおよそ300年間にわたる歴史を明らかにすると共に、大規模な火山噴火罹災にともなう自然環境や文化環境の変遷を辿る研究を続けてきました。
一方、この発掘調査の進展に伴って、2018年には、先に述べた紀元後2世紀に創建された建物のさらに下には、より古い時代に建てられた建物が埋もれていることが明らかになりました。2021年からは、この古い時代の建物の発掘調査に主軸を移し、2023年の調査と分析により、この古い建物が紀元後1世紀の半ばには既に存在しており、西暦79年のヴェスヴィオ山の噴火によって壊滅したことを証明しました。
2025年は、この建物の創建時期と、発掘された部屋がどのような機能を有していたかの解明を目的として、8月中旬から10月初旬の時期に発掘調査を実施しました。

すでに2024年までの調査で明らかになったように、この建物は西暦79年のヴェスヴィオ山噴火で埋没するまでに何度か改築された痕跡が見つかっており、創建時期は紀元前の共和制期にまで遡る可能性があります。また、この部屋の壁には、現在判明しているだけでも7基のカマドが設えられていたことがわかりました。

これは、イタリア国内の同時期の遺跡にも類例の認められない極めて稀有な施設であり、この遺跡の特殊性を示す大きな成果です。初代ローマ皇帝アウグストゥスが息を引き取った時期と同時期の建築物であることが証明されたことと併せて考えると、歴史的にこの地域に存在したことが推定されている彼の別荘が、我々の調査する建物そのものであるという仮説に関しては、その可能性がますます高まりつつあると言えるでしょう。
ただし、調査範囲が極めて限定されていることから、こうした特徴的な遺構の機能や、建物全体の性格などを推定する為には、現在まで得られている情報ではまだ十分ではありません。今後も調査を続ける必要があることは言うまでもありません。
以上の新たな学術成果については、国内外での記者発表を実施したほかに、国際的学術雑誌に掲載を予定しています。

教育プログラムの拠点と成果公表
ソンマ・ヴェスヴィアーナの発掘調査の現場を、教育の分野において活用することがどのように有効か、考古学の本来の学際性とその国際的な環境に注目し、専門家の育成という視点に加えて、さまざまな専門分野をもつ(もちうる)東京大学の学生たちへの学際的教育を主眼に、2017年度以来研修プログラムを実施しています。
2025年の研修においても、実際に調査現場において発掘作業に参加した上に、調査や研究に関連した遺跡での特別講義や、現地学生との直接交流会の実施など、充実した研修を行いました。

大学入学後間もない1、2年生の学生にとっては、学術調査・研究を取り巻く国際的環境を垣間見ることによって、グローバルな視野から自らの立つ場所を客観的に評価する端緒を体験的に会得することにつながり、大変有益かつ貴重な機会となりました。
2.基金に関連する活動

2025年10月 寄付者への現場通信送付

2025年10月27日(月)
【見逃し配信情報・ご支援のお願い】
BS朝日25周年特番『人は2000年前をどう生きたのか』
前編「ポンペイ篇」
天海祐希さんと巡る古代ローマの世界、いかがでしたか?番組では東大ソンマ・ヴェスヴィアーナ発掘プロジェクトの最新トピックも紹介されました
後編「ローマ篇」
100万人都市ローマの課題と皇帝たちの都市経営に迫りました!
見逃し配信情報はこちらから!
(テレ朝動画/TVer/ABEMAで。期間限定)
2025年10月20日(月)
この度、ソンマ・ヴェスヴィアーナ発掘調査プロジェクトの成果の一部が、下記の番組で紹介されることになりました。
是非ご視聴いただきますよう、お願い申し上げます。
BS朝日開局25周年記念 ウェルビーイングスペシャル
「人は2000年前をどう生きたのか 天海祐希と古代ローマの謎を解く」
第一夜:2025年10月25日(土)21:00〜22:54(ポンペイ篇)
第二夜:2025年11月1日(土)21:00〜22:54 (ローマ篇)
*2週連続。 各2時間
10月25日のポンペイ篇におきまして、
このプロジェクトの創始者で、本学の名誉教授である青柳正規先生と漫画家のヤマザキマリ氏が、発掘調査成果の動画を交えて、その最新の状況を語る対談が収録されております。
2025年10月20日(月)
2025年は、様々な制約の中で実施された発掘調査でしたが、関係各所のご協力もいただき、去る10月3日(金)に、発掘調査現場での作業をすべて終了し、調査を担当していた研究員も10月10日迄には全員無事に帰国しました。
調査開始当初に予定していた作業は、概ね完了することができて、今年も新たな知見を加えることが出来ましたが、次年度以降に向けての様々な宿題なども新たに課されることになり、実り多い調査となりました。 調査成果の概要につきましては、改めて投稿いたしますが、ここでは、調査の終了のみを報告させていただきます。
2025年09月05日(金)
この度、ソンマ・ヴェスヴィアーナ発掘調査プロジェクトは2025年大阪万博イタリア館で特別イベントを開催します。
長年の研究成果を広く社会に発信する貴重な機会です。
~イベント概要~
「ほんとうにアウグストゥス帝のヴィラなのか?―東京大学ソンマヴェスヴィアーナ発掘プロジェクトの24年 とその最新成果」
東京大学がイタリア・ソンマ・ヴェスヴィアーナで20年以上にわたり継続してきた考古学調査の成果を発表する特別イベントです。ローマ皇帝アウグストゥスの別荘であった可能性が高い貴重な遺跡の発掘調査と最新の発見について、詳細な解説が行われます。
【ラウンドテーブル】
登壇者:青柳正規(東京大学名誉教授)、ヤマザキマリ(漫画家・作家、イタリア共和国功労賞コンメンダトーレ受賞)、村松真理子(東京大学教授)
【開催情報】
・開催日時:2025年9月9日 PM4:00
・開催場所:2025年大阪万博イタリア館
・参加費 :無料(万博入場料は別途必要)
・参加方法 :イタリア館は予約制となっています。万博公式サイトからイタリア館の入場予約が必要です。
2025年09月01日(月)
お陰様で発掘調査は8月25日から始まり、
計画に従って現地での掘削作業を進めております。
遅ればせではありますが、
この度現地の様子をインスタグラムで発信することにいたしました。
硬軟取り混ぜた内容になりますが、
ご興味のある方は下記のリンク先をご覧になって下さい。
2025年08月22日(金)
来る8月25日から10月3日までの6週間の期間で、遺跡の発掘調査を実施します。
今年も西暦79年のヴェスヴィオ山の噴火で被害を受けた建物の調査を継続する予定です。調査範囲は写真で示したとおりですが、2023年以来複数見つかっている、当時の湯沸かしのカマドであろうと考えられる施設の周辺において調査範囲を拡張して、それらの大変特徴的な性格を明らかにするよう努めます。
「なぜこのように沢山のカマドを造る必要があったのか??」 この大きな謎を解く鍵は、まだ見つかっていません。
発掘調査に先立ち、現地では8月18日から調査の準備作業に入りました。まずは1年間のブランクの間に、遺跡の内外で伸び放題に伸びた草刈りから始めています。
2025年08月21日(木)
去る8月13日に、ローマにあります在イタリア日本国大使館の大塚建吾公使、小池聡子書記官、後藤義人館員が、我々の調査する遺跡にお越しになりました。
当プロジェクトの責任者である、総合文化研究科・村松真理子教授が応対させていただき、発掘調査の経緯、現在の進展状況などを説明させていただきました。
大塚公使以下大使館の皆様には、およそ2時間にわたって大変熱心にご見学いただき、今後の我々の活動に対しても、大使館としての様々なご協力をご検討いただけるなど、当発掘調査プロジェクトに対して高い評価をいただきました。
またその際には、大使館の皆様の他に、ローマ在住の日本人の方々なども併せて見学に訪れられ、今後の当プロジェクトにご寄付いただいた方への遺跡見学会の開催を検討する上で有益な、様々な情報を得ることが出来ました。
陪席していた発掘調査担当者が、写真などの記録をとることを失念しておりましたので、残念ながらここに当日の様子などをご覧になっていただく事が叶いませんが、在イタリア日本国大使館の広報ページには、当日の訪問記事が、写真を交えて掲載されておりますので、是非下記のリンクからそちらの記事もご覧になって下さい。
2025年04月04日(金)
学生たちの国際研修と時期を同じくして、2024年9月に現場へお越し頂いた当プロジェクト支援者でもあるライターのBさんが、臨場感あふれる訪問記を寄せてくださいました。前編と後編に分けてここに紹介させていただきます。
【いざ!ソンマ・ヴェスヴィアーナ遺跡、発掘現場へ!】
遺跡のあるソンマ・ヴェスヴィアーナ市は、イタリア南部ヴェスヴィオ北麓に位置しており、ナポリから鉄道で30分程揺られた場所にある。
遺跡発掘によって、近年名称が”Mercato Vecchio”(旧市場)から”Villa Augustea”(アウグストゥスのヴィラ)に変わったという最寄り駅から発掘現場へは歩いておよそ2分ほど。のどかなソンマの日常風景を楽しみつつ、現場へと到着した。現地では、東京大学の発掘調査団の皆さん(松山研究員、杉山研究員、岩城研究員)が、プロジェクトリーダーの村松真理子教授といっしょに出迎えてくれた。
【ついに念願の、本物のソンマ遺跡と出会う】
門に入って数歩進むと・・・
目の前に広がるのは、ついさっき車窓から見ていた風景とは別の時空に迷い込んだような・・・本物のソンマ遺跡の姿。
あまりに唐突に現れたその全容に、足がすくみ、思わず身震いしてしまう。
想像をはるかに超えるスケールの大きさ。しばしその光景に圧倒される。2000年の永い眠りから目覚めたその古代遺構は、まるで再び時を刻みだしたかのように生き生きとした波動を放っている。すごい・・・としか言葉が出てこない。
この日は国際研修の一貫で数名の東大生たちが発掘作業に参加しており、その様子をじっくりと見学させていただく貴重な機会を得た。
3班に分かれ、毎日ローテーションしながら、学生たちは作業を体験する。
もちろん、熟練した研究員から安全面を考慮した入念なレクチャーを必ず受けてから。
【発掘作業の今】
想像していた以上に広大で、バラエティ豊かな様相を呈する発掘現場。
現在、作業が進行している場所はかなり深く掘り下げられ(地下約12m)、明らかに遺構と思われる様々な部屋?のようなものが現れている。
発掘現場の今はどんな状況なのだろう?プロジェクトリーダーの村松教授に伺ったところ、「毎日どんどん新しい発見が出てきていますが、確実なのは私たちがアウグストゥス帝の時代にたどり着いたということ」
【学生たち、人生初の「発掘作業」に挑戦】
さて、発掘作業とはいかなるものか・・・?
撮影や取材をしつつ、ライターBもすべての作業を見学!
ああ、こんな貴重な体験ができる日が訪れるとは・・・。
古代の土をしっかり踏みしめ(裸足になりたい衝動にかられる…)、ひとりじわじわと感無量にひたる。深く掘り下げられた遺跡の中から青空を見上げる。古代の人たちも、こうして同じ空を見上げて、そろそろ秋めいてきたねえ、なんて同じようなことを語らっていたのだろうか。・・・そこに間違いなく人々の営みがあったことを妄想し、胸が高鳴る。
そして、初めて握る「発掘作業道具」を手にし、否応にもテンションがあがる。
この日の発掘作業は大きく3つ。
① 「土の壁から地層を出す作業」
コテなどの道具を使って土の壁の断面を削り、地層をきれいに表出する作業。
「地層がきれいに出たら、表面に薬剤と布を貼り付け、それを剥がす。つまり地層全体を剥ぎ取る作業。剥ぎ取った地層は貴重な堆積資料として保管する」。そう、松山研究員が丁寧に説明してくださった。
遺跡とはいえ、ザクザクとかなり力を入れて大胆に削っていく必要があるようで…「とてつもない重大なところを傷つけてしまったら」…等とドキドキしながら、古代の地層と直に触れ合う学生たち。今、彼らが手に触れているこの土が、2000年前のもの…と思うと、それだけで自分まで胸が高鳴る(常に妄想…)。 ザクザクという音とともに、まるで古代の土と対話しているような気持ちになってゆく。
中には「ひたすら無になれる」と、すっかりハマっている学生も。やっぱり学生の体力はすばらしい。
② 「粘土質から石や土器等の破片を取り出す作業」
限られた区画内でも、場所によって土の性質が異なる。見た目ではわかりづらいが、場所によっては粘土質の部分も。そこから道具を使って、石や遺物の破片等を取り出す作業。
石のかけらや何らかの破片が出てくるため、一番「発掘作業」らしい作業。すごいものが出てくるかも!とワクワクしながら学生たちは作業を進めていた。
③ 「遺物の破片を洗浄する係」
担当作業班が発掘して選別した石や遺物の破片等を手で丁寧に洗浄する作業。地味な作業のように思えるが、ひとつひとつの遺跡のかけらを手の中でじっくりと観察できる、これまた興味深い作業である。中には、何らかの模様が入ったようなものや、「これってこの石と同じ部分じゃない?」と同じ素材を呈したものなどをみつける学生もいて、見ているだけでワクワクする。
もちろん、「発掘」と一言でいっても、これだけではない。
他にもたくさんの土木的な作業や発掘の工程がある。発掘現場って、掘るだけじゃないんだなあ・・・
【発掘作業の大変さを、身をもって知る】
ほんのわずかでも、発掘現場を見学させていただいてまず感じたことは、
・とにかく、力仕事で大変!
今回は比較的過ごしやすい9月中旬であったが、真夏の発掘作業は1日屋外にいるだけでも体力を消耗する上、作業の多くは思いのほか力仕事。
また、土埃や砂埃を浴びるため、作業中もあっという間にゴーグルが曇るほど。必ずマスク着用での作業となるため、特に暑い季節は本当に大変・・・。
・地道にコツコツと・・・!
手で行う作業はどれも地道で繊細な作業。一気に進めたいからと粗い作業をすることはできない。何が出来てくるかわからないからこそ作業は慎重になる。そのため、コツコツ作業をしても、進むのはわずか。それは本当に気の遠くなるような作業・・・。
・安全面も慎重に。常に神経をはりつめて・・・
地表に何かを建設するのとは異なり、地底深く掘り下げる作業ゆえ、不用意に歩けば足場が崩れたり、崩壊したり・・・という事態もありうる。それゆえ、安全対策には万全を期しているが、常に気を緩めることはできない。しかも、そこにあるすべてが貴重な遺跡。安全面とあわせて、遺構の保全にも慎重になるため、常に神経を張り詰めなければならない・・・。
2025年04月04日(金)
【発掘現場のリアルな苦悩。20年続くプロジェクト存続の危機・・・】
これほどまでに大規模かつ世界的な注目を浴びる本プロジェクトだが、国からの予算は年々削減の一途を辿り、プロジェクトそのものの存続が危ぶまれているらしい。つまり、20年間掘り続けて、ついに世紀の大発見に近づきつつある発掘作業が、資金難のために継続できなくなる可能性もあるのだ。
今回、現場を見て実感したのは「気の遠くなるような地道な作業だ」ということ。丸一日手を動かしても、限られたマンパワーで進められる作業量には限界がある。
私たちはメディア等で、キラキラした発掘の成果だけしか目にすることがないけれど、その裏にこれほど長い苦労の道のりがあったとは・・・それを心の底から実感した。
考古学的な発掘作業自体はひとつひとつ人力頼りで行い、空間的広さから作業に入れる人の数にも制限もあるが、研究費の削減から人件費が減れば、当然現場で掘れる規模が縮小される。
【リアルに知った、寄付の使い道】
一方、今回現地に伺って、寄付が、様々な部分で活用されていることもわかった。過去の大型寄付金のおかげで導入された大型クレーンは、地中深いところで掘削された土を運び出すのに大変有効だ。また、発掘作業のための新しい道具の購入や、今回の国際研修の諸経費にも寄付の一部が使われており、発掘作業そのものにも、未来を担う学生たちの教育やアウトリーチ活動にも生かされていると知って、とても嬉しく思った。
【さいごに、声を大にして伝えたい。寄付があればできることがたくさんある!】
目の前に広がる広大な遺跡は、東大チームによって発掘されなければ、ただの地面のまま、誰にも気づかれぬまま永遠に眠り続けたかもしれない。そう思うと、「20年間掘り続けた」ことの意義と重みを感じずにはいられない。
それが、資金の不足という理由で、今、発掘そのものが継続できない危機にある。そんなの悲しすぎる・・・
私の支援はほんのわずかなものだけれど、寄付によって叶うことはたくさんある。
発掘作業を前進するための機械や道具、設備への投資による効率化。また、作業員を増やすことで、マンパワーもアップできる。そして、将来、遺構を保護し続けるための新たな大屋根の設置。壁絵や床のモザイクの専門家による記録写真の撮影と保存的修復。さらに、もっと寄付を募るための広報活動やアウトリーチ活動も、現在は調査団の面々が自ら行っているが、専属の人を雇うことだってできれば。。。
本プロジェクトが今後も継続し、さらに発展し、世界が驚く歴史的発見につながってほしい!東大だからこそできる唯一無二の、学際的な研究成果をぜひ生み出してほしい!
そのためにも、今後も微力ながら、できるかぎりの支援を続けていきたいと強く思った。
20年間という歳月をこのプロジェクトに捧げた調査団のみなさんに改めて敬意を示すとともに、今後ますますの発展に向けて精いっぱいのエールを送りたい。
今後も新たな発見を楽しみにしています!応援してます!
【番外編:現場名物。チッチョさんの豪快ランチ!】
発掘現場では、いつもイタリアの現地作業員が日替わりでランチを作ってくれるそうだ。
それをみんなで、遺跡の敷地内のテーブルで(なんと贅沢!)わいわいと食べるのが恒例。こうして、食事を共にすることで仲間の一体感を強くすることも大切なこと。
体力仕事の合間に、おいしいごはんとホッとするひととき。きっと古代の人たちも、ここで同じように家族や仲間と大切な時間を過ごしていたことだろう。(意外と食べていたものも同じだったのかも・・・)
おまけ
【調査団と地元民との関係について】
今回ソンマを訪問して印象的に思ったことがもう一つある。
調査団の方々がソンマの地元の市民と本当に馴染んでいること。受け入れられていることに驚いた。
ソンマの人たちが道すがら“Satoshi!”(松山研究員のお名前)と手を振り、何気ない会話を楽しむ(もちろんイタリア語)。それはすっかり馴染みの地元仲間と交わす小気味よい会話そのもので、発掘調査団の皆さんがいかに街に受け入れられているかを垣間見る思いだった。
しかし、当然ながら、ここまでの関係性を築くのはとても大変だったそう・・・。
そもそも観光客は滅多に訪れないソンマ、東洋人が珍しかったこの地に、突如現れた極東の大学からの名の知れぬ日本人たち。今のように受け入れてもらうまで、かなりの努力もあったことだろう・・・。
ちょうど同じ日に現地入りしていた東京大学大学院人文社会系研究科の松田陽准教授は、ソンマ遺跡において、地元住民が同遺跡をどのように認識・理解し、また遺跡とどう関わっているのか、調査団と地元民との関係性形成までを「パブリック・アーケオロジー」の研究対象としている。その著書「実験パブリックアーケオロジー 遺跡発掘と地域社会」において、発掘調査を進める上では、地元の市民との「良好な関係性構築」や、地域の歴史の再構築への貢献がとても重要であることが示されている。
2025年03月10日(月)
UTokyo Future TV Vol.16「ソンマ・ヴェスヴィアーナ遺跡調査の20年〜古代の「記憶」をミライと世界へ〜」の対談を、2025年2月26日に無事に終えることが出来ました。おかげさまで大変好評で、視聴者の方々から多くの質問などもいただいたと伺っております。ご覧になっていただいた方々は勿論ですが、実施に際して様々にサポートしていただいたディベロップメントオフィスの皆様には本当にお世話になりました。皆様に厚く御礼申し上げます。
さて、私たち東京大学の研究チームは、イタリア共和国南部、ナポリ湾を望む地にそびえるヴェスヴィオ山の北麓にあるソンマ・ヴェスヴィアーナ市において、ヴェスヴィオ山の噴火で埋没したローマ時代の遺跡発掘調査を2002年から現在まで行っています。最近の調査では、地下15m付近から、あの有名なポンペイなどの街を壊滅に追い込んだ紀元後79年のヴェスヴィオ山の噴火によって大きく壊された建物の一部が姿を現し始めました。ここ数年の調査を通じて、これが、私たちが長年追い求めてきた「ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスの別荘」の一部である可能性がますます高くなっていると言えましょう。
配信中にもお話しましたが、この20年間続けてきた発掘調査は決して平坦な道のりではありませんでした。
過去には資金不足や現地の厳しい環境、さらには調査に対する懐疑的な意見にも直面してきました。しかし、それらを乗り越えて地道に発掘調査を続けた結果、現在では、私たちは「アウグストゥス帝に近づいている!」という確信を持ちつつあり、調査を継続することでさらに重要な発見があると信じています。
いただいたご支援は、この重要な発掘調査の推進に大変貴重です。私たちは、「アウグストゥスの終焉の地の考古学的な検証」と「人類がいかにして噴火罹災から復興してきたのか」を明らかにするため、引き続き努力してまいります。この調査が、人類の歴史や文化に新たな光を当てることを心より願っています。
これからも、皆様のご期待にお応えできるよう、研究チーム一同、日々精進してまいります。今後とも引き続き皆様のご支援を賜りますようお願い申し上げます。
2025年02月21日(金)
1.2024年の活動
当該遺跡の発掘調査
2024年まで3,650㎡ほどの範囲で発掘調査を行っております。この調査を通じて、敷地面積が優に4,000㎡を超えると推定される、紀元後2世紀に創建されて西暦472年のヴェスヴィオ山の大噴火で破壊された大規模な建物に加え、それと重層する形で、紀元後1世紀前半以前に建てられて、西暦79年の大噴火により罹災して放棄されたと考えられる建物の存在が近年確認されました。
2024年は、2023年に引き続いて西暦79年の噴火によって壊滅した建物の性格をより明らかにするために、およそ150㎡規模で調査範囲を拡張し、2023年に既に調査されたひとつの部屋に隣接する別の部屋の調査に取りかかりました。
2023年から調査を行っている部屋については、既報のとおり、西暦79年の噴火で埋没するまでに何度か改築された痕跡が見つかっており、創建時期は紀元前の共和制期にまで遡る可能性があります。これは、既に指摘したとおり、初代ローマ皇帝アウグストゥスが息を引き取った時期と同時期の建築物の存在が証明されたことを意味し、この遺構の構造が極めて例外的、あるいは特殊なものであることを考慮に入れると、歴史的にこの地域に存在したことが推定されている彼の別荘が、我々の調査する建物そのものであるという仮説に関し、これを否定する矛盾点は、2024年の調査でも見つからなかったのみならず、むしろその可能性は逆に高まりました。
そうした新たな学術成果については、国内外での記者発表を実施したほかに、国際的学術雑誌に掲載が予定されています。

教育プログラムの拠点と成果公表
ソンマ・ヴェスヴィアーナの発掘調査の現場を、教育の分野において活用することがどのように有効か、考古学の本来の学際性とその国際的な環境に注目し、専門家の育成という視点に加えて、さまざまな専門分野をもつ(もちうる)東京大学の学生たちへの学際的教育を主眼に、2017年度以来研修プログラムを実施しています。
2024年の研修においても、実際に調査現場において発掘作業に参加した上に、調査や研究に関連した遺跡での特別講義や、現地学生との直接交流会の実施など、充実した研修を行いました。大学入学後間もない1,2年生の学生にとっては、学術調査・研究を取り巻く国際的環境を垣間見ることによって、グローバルな視野から自らの立つ場所を客観的に評価する端緒を体験的に会得することにつながり、大変有益かつ貴重な機会となりました。
2.基金に関連する活動
2024年3月 「ソンマ・ヴェスヴィアーナ発掘調査プロジェクト」
紹介ビデオの作成
基金の「ソンマ・ヴェスヴィアーナ発掘調査プロジェクト」
ページのリニューアル公開
2024年4月17日 2023年の調査成果の記者発表
2024年5月 寄付者への現場通信送付
2024年7月 広報用パンフレット印刷(2000部)
「東大基金活動報告会 感謝の集い」へのPRブース出展
寄付者へのパンフレット送付(1回目)
2024年8月 寄付者への現場通信送付
2024年9月 ソンマ・ヴェスヴィアーナにて発掘調査の実施
広報用パンフレット(イタリア語版)印刷(100部)
土層剥ぎ取り用薬剤の購入とイタリアへの輸送
2024年12月 ウェブページの多言語化とUIの改良作業
寄付者への現場通信
2024年11月13日 イタリア・ナポリPalazzo Realeにおいて
2023年の調査成果の記者発表
2024年12月 テレビ朝日「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん
年末特別番組」でプロジェクトの紹介と寄付事業に関する告知
広報用パンフレット第二刷印刷(500部)


2025年02月10日(月)
2024年は支援者のみなさまから多くの応援・ご支援をいただきまして、ソンマ・ヴェスヴィアーナ古代遺跡プロジェクトより、あらためて感謝申し上げます。
2024年の年の瀬、12月28日(夜6:56〜)に放映されたテレビ朝日系列【サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん】「イタリア 世界遺産3時間SP」で、当プロジェクトが大きく紹介されました。広い世代を対象にした、エンターテイメントと教養と教育がひとつになった人気番組の年末特別枠の中で、ポンペイ・ローマとならんで(!)、私たちのソンマ・ヴェスヴィアーナでの遺跡発掘調査について、アウグストゥス帝時代の遺構の発見をめぐる最新成果もふくめてわかりやすく興味深く語られました。大変好評で、私たちにも多くの方からの反響がとどいています!
この番組がきっかけで、当プロジェクトに新たにご支援くださったみなさま、まことにありがとうございます。
現場での感動を情熱あふれる映像とフレッシュなことばに表現された杏さん、山本・リシャール登眞さん、スタジオ出演で発掘調査を魅力的にコメントしてくださった芦田愛菜さん、伊集院光さん、サンドウィッチマンさん、貴重な記録映像を提供してくださったドキュメンタリージャパン関係者のみなさま、そして、当プロジェクトの研究に関心を寄せたのしく興味深い番組にまとめられたテレビ朝日のチームのみなさま、あらためて心より感謝します。
この機会に多くの方からさらに励ましをいただき、考古学の魅力と、古代ローマという人類共有の文化遺産・記憶を研究する重要性をあらためて実感しつつ、発掘調査により一層邁進するべく、プロジェクトのスタッフ一同、新年に思いを新たにしています。
そして、支援者のみなさまとのつながりや発掘調査の進展について、今後もご報告をつづけていきます。
どうぞ本年もよろしくご支援のほど、お願いいたします。
2025年02月06日(木)
東京大学基金の発信メディアであります、UTokyo Future TV(オンラインイベント)におきまして、下記の通り本プロジェクトを紹介していただけることになり、当プロジェクトの責任者である村松眞理子教授が出演されます。
プロジェクトの現状と課題を、より深く知っていただく良い機会と存じますので、是非ご視聴下さい。
【UTokyo Future TV Vol.16(オンラインイベント)】
-ソンマ・ヴェスヴィアーナ遺跡調査の20年-古代の「記憶」をミライと世界へ
【日時】2月25日(火)19:00~20:00
【方法】オンライン(Zoom ウェビナー/YouTube)
詳細はこちら
Zoomウェビナーのお申し込みはこちら
YouTubeでのご視聴はこちら
2024年12月17日(火)
ソンマ・ヴェスヴィアーナでの発掘調査が、テレビ番組の中で紹介されることになりました。11月中旬には、現地において撮影も行われましたので、皆様にも成果の概要がおわかりいただけるように紹介してもらえるようです。年の瀬が迫った時期での放送とはなりますが、どうか是非ご覧下さい。
2024年11月22日(金)
2024年11月13日(水)に、ナポリ市の旧王宮内にある「ジョヴァンニ・カルボナーラ」ホールにおいて、東京大学が2002年以来発掘調査を続けているイタリア、ソンマ・ヴェスヴィアーナ市所在ローマ時代遺跡(通称「アウグスト帝時代のヴィラ」)の発掘調査プロジェクトに関する記者発表が行われました。

この記者発表は、「ナポリ都市圏における考古学・美術・景観監督局」の主催によるものであり、同監督局局長のマリアーノ・ヌッツォ氏と、ソンマ・ヴェスヴィアーナ市長のサルヴァトーレ・ディ・サルノ氏の挨拶の後に、本発掘調査プロジェクトの責任者である村松眞理子教授が、20年に及ぶ発掘調査の意義と最近の画期的な成果に関する発表を行いました。ほかにはプロジェクトの研究協力者であるクラウディア・アンジェレッリ博士とスオール・オルソラ・ベニンカーサ大学のアントニオ・デ・シモーネ教授も出席し、プロジェクトに関する所見や今後の展望などが発表されました。


関連情報
2024年09月27日(金)
9/11~9/19に2024年度国際研修「イタリアで考古学を体験する」が実施され、10名の学生が参加しました。この研修はグローバルな視野を養う駒場の授業として行われるものです。教養学部や工学部等、多様な学部に所属する学生が、考古学を通じて、イタリアの文化と歴史を学ぶことを趣旨としています。
今回のプログラムは、「ソンマ・ヴェスヴィアーナ遺跡にて考古学を体験する」をメインに、ポンペイ遺跡の見学やナポリ市内エクスカーション等、充実した内容で構成。ソンマ・ヴェスヴィアーナ遺跡発掘現場では、調査団からレクチャーを受けながら実際に発掘作業にもチャレンジしました。最終日には、与えられたテーマに関する考察をまとめた発表を行い、本研修を通じて各々が得た知見を共有するとともに、初代プロジェクトリーダーである青柳 正規 名誉教授による現場での遺跡発掘をめぐる文明史講義を受けて終了しました。

今回、初めての海外である学生も多く、異文化に触れることで大きな刺激を受けたようです。また、「歴史的都市や建築を現代から見る視点が得られた」「神話について考えを深めた」といった声もありました。
本研修に関わる費用や調査の一部にもご寄付を活用させていただいています。今後も継続して実施していくためにも、引き続きご支援のほどよろしくお願いいたします。
2024年06月24日(月)
ソンマ・ヴェスヴィアーナ発掘調査プロジェクト基金の村松教授と松山研究員が「美術展ナビ」に寄稿しています。
1920年代末にこの遺跡が最初に発見されて以降のお話や多くの現地画像など、発掘調査の経緯や現状がわかりやすく説明されています。
ぜひ以下のリンクからご覧ください。
寄稿文はこちら
2024年04月24日(水)
「ソンマ・ヴェスヴィアーナ発掘調査プロジェクト」ではヴェスヴィオ山の噴火によって埋没したローマ時代の遺跡発掘調査を2002年から行っていますが、最近の顕著な研究成果発表の記者会見を4月17日に駒場キャンパスにて開催しました。
最大の成果は、ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスの別荘である可能性が高い建物の一部を発見したことです。
ローマ時代のタキトゥスなどによる歴史書の中に、初代ローマ皇帝アウグストゥスはヴェスヴィオ山の北側に所在した父親が亡くなったのと同じ別荘の同じ部屋で紀元後14年に息を引き取ったとの記述がありますが、今までその所在が特定されることはありませんでした。
今回、すでに当プロジェクトが調査をつづけてきたヴェスヴィオ山北麓地帯で2世紀の広大な遺構の下に新たな建物が出土し、調査分析の結果アウグストゥス帝時代の1世紀の建造物であることを確定しました。
今後さらにこの建物の調査を進め、2027年の東京大学創設150周年に向けて、皆様にビッグニュースを届けるべく発掘調査を加速したいと思っています。
しかし、その一方で、昨今の大学研究費の削減の影響は本プロジェクトの研究にも影を落とし、必要な規模での継続的な発掘調査が難しくなってきています。
必要な資金を確保するために、東京大学基金のページをリニューアルして、ご寄付のお願いをさせていただいています。発掘調査はこれからが正念場です。
ひとりでも多くの方々に人類の歴史の重要な1ページの新たな発見者になっていただき、一緒に喜び合いたいと切に願っています。
ぜひご支援ください。
発掘されたアンフォラ
■東京大学基金「ソンマ・ヴェスヴィアーナ発掘調査プロジェクト」
■詳しい研究成果はこちら
東京大学では、2002(平成14)年から現在に至る22年間に渡って、イタリア共和国カンパーニア州ナポリ県ソンマ・ヴェスヴィアーナ市において、ヴェスヴィオ山の噴火によって埋没したローマ時代遺跡の発掘調査を継続的に実施してきました。
現在まで3,500㎡ほどの範囲で発掘調査を行ってきましたが、調査対象となる建物のかなりの部分はまだ地中に埋もれたままで、その全貌は未だ明らかではありません。現時点では、この建物は、優に4,000㎡を超える大規模な建物であったであろうことや、出土した遺物や現在までに判明している建物のレイアウトや建築装飾要素などから、創建は紀元後2世紀頃と推定されています。さらに、近年の調査によって、この建物に覆われた形で、より古い、紀元後1世紀以前に建てられた別の建物がまだ地中に遺存していることが明らかになりました。
なお、現在まで調査の進んでいる建物は、創建当初には何らかの公共的な性格を有する施設の一部を構成していた可能性が高く、例えば、地域の宗教センターのような役割を果たしていたと考えられること、その後、途中幾度かの大きな改築を経て、3世紀以降に建物の使用目的が大きく変わり、以後はワイン醸造所として利用されたと考えられます。5世紀に入るとワイン製造も廃れて全体が徐々に荒廃し、建物の周囲で耕作されるようになると、建物の一部を便宜的に利用するだけの施設となったようです。472年のヴェスヴィオ山噴火によって壊滅的な破壊を受けた際には既にほぼ廃墟化した状態にあったと考えられます。
472年の噴火に伴う土石流によって建物のかなりの部分が一気に地中に埋没し、その後6世紀のはじめにも再度大規模な噴火に見舞われたため、建物の殆どの部分が地中に埋没しました。そして事態が沈静化した後もこの建物は復旧されることはなく、以後当地はもっぱら農耕地と利用されていたようです。
【2023年度の活動】
2023年度は、主に下記の2点に関する活動を実施しました。
現在まで調査を続けている建物(2世紀に創建)の東側の屋外域に発掘範囲を拡げて、当時の2世紀頃の地表面からできる限り深いところまで掘り下げました。これは、2世紀以前の地層の性質や堆積構造などから、ここ数年の調査によってその存在が明らかにされた一段階古い時期の構築物の建築時期やその当時の周辺環境などを明らかにすることを主たる目的としています。
ここ数年の発掘調査によって、2002年以来一貫して調査を継続している2世紀創建の建物の下には、それより時期の古い構築物が埋没していることがいよいよ明らかになってきたので、本年度の調査では、調査範囲を拡張して、この古い時期の建物が構築された当時の地表面の検出に努めました。
その過程で、ポンペイなどの街を埋め尽くした西暦79年のヴェスヴィオ山噴火由来の軽石と火山砂の薄い層が昨年に引き続いて検出されたことに加えて、これらの火山噴火に伴う堆積物が、古い時期の建物が建てられた時期よりかなり後になってから堆積したものであろうことがより確実になり、この古い建物の構築時期が紀元後1世紀以前である蓋然性が高くなりました。一方、今年度は、79年の噴火砕屑物によって覆われた部屋の内部の調査を進め、紀元後1世紀の時期に広くローマ世界で流通した、ワインやオリーブオイルの運搬・貯蔵に供されたアンフォラ(大型の陶製壺)が10基以上部屋内部に保管されている状態で発見されたほか、それより古い時期に部屋内に構築された竈状の火床が複数発見されるなど、建物の建築時期やその性格、建築当時の周辺環境を検討する上で大変興味深い遺構や遺物が多数発見されました。
さらに、今年度の調査成果は、歴史的に当地周辺にその存在が推定されていた、初代ローマ皇帝アウグストゥスが息を引き取ったとされる彼の別荘、あるいは同時期の建築物の存在が確認されたことも意味し、本遺跡調査の意義は、今までの20年とは一線を画する大きな転換点を迎えたと言えます。
2)教育プログラムの拠点と成果公表の進展
ソンマ・ヴェスヴィアーナの発掘調査の現場を、教育の分野において活用することがどのように有効か、考古学の本来の学際性とその国際的な環境に注目し、専門家の育成という視点に加えて、さまざまな専門分野をもつ(もちうる)東京大学の学生たちへの学際的教育を主眼に、2017年度以来研修プログラムを実施しています。
本年度については、新型コロナウィルス(COVID-19)感染症が未だ完全に終息したとは言いがたい状況でしたが、万全の感染対策を講じた上で、同国際研修を9月に実施しました。現地においては、実際に調査現場において発掘作業に参加した他、調査や研究に関連して複数の講師による遺跡での特別講義や、現地学生との直接交流会の実施など、充実した研修を行いました。
大学入学後間もない1,2年生の学生にとっては、調査・研究を取り巻く国際環境の入り口を垣間見ることによって、グローバルな視野から自らの環境を客観的に評価する端緒を体験的に獲得することができ、大変有益かつ貴重な機会を提供しています。
前述の通り、長年にわたる発掘調査が大きな転換期を迎えている今、本プロジェクトを大きく前進させるためには皆様からのご支援が必要です。また、このような機会を、より多くの学生が実際に体験する教育の場として活用していくためにも、引き続き皆様からの温かいご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。
<ソンマ・ヴェスヴィアーナ発掘調査プロジェクト>
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発掘作業が出来るまでの努力、続けられてこられた皆さんを尊敬しております。
根気がいる発掘作業で、事故・災害・ケガなく発掘が進み、携わっている皆さんの健康をお祈りしております。
<ソンマ・ヴェスヴィアーナ発掘調査プロジェクト>
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日本のチームが大発見した事、誇りに感じました。ちょっとですが応援の気持ちです♪
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大変な事も多いと思いますが、頑張って下さい。
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微力ながら応援させてください。
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