ーD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を全学で推進し、誰もが平等に学び働くことのできるキャンパスの構築ー
東京大学では、2002年に設置された「バリアフリー支援室」と、2006年に設置された「男女共同参画室」が中心となり、障害者支援とジェンダー平等を推進し、インクルーシブなキャンパスづくりに貢献してきました。この東京大学のD&I推進を飛躍的に推し進めるために、2024年4月にこの2つの室が発展的に統合され、「多様性包摂共創センター(Center for Coproduction of Inclusion, Diversity and Equity、愛称はIncluDE)」が生まれました。
■ IncluDEの活動の中核:共同創造(Coproduction)
IncluDEの活動の中核になるのは、当事者(女性、性的マイノリティ、障害者など)と研究者が力を合わせて、ともにより良い社会をつくっていく「共同創造(Coproduction)」です。研究と実践を密に循環させて、当事者の視点に立った知識や技術を産み出そうとしています。しかし、多様な人々が共同創造できるキャンパスを実現する上では、ライフステージに沿った切れ目のない支援や、女性障害者など、複数の障壁が交差する困難を解消するための物理的環境、制度的環境、文化的環境の変革が不可欠です。
■プロジェクトの目的と重点分野
本プロジェクトは、そうしたキャンパス環境の変革を目的としています。とくに、女性学生に対する住居支援、入学後に発生するニーズに対応するバリアフリー支援、あらかじめ予想することのできない緊急性の高い問題への対応に力を入れたいと考えています。
■予測困難な緊急ニーズへの対応
日々キャンパス内外で発生するマイノリティの困り事は、そのすべてを事前に予測できず、予算計上が困難です。例えば東京大学では学部2年生のときに進学先が決定されますが、障害のある学生の場合、半年以内に進学先のバリアフリー工事などを完了させなければ、平等な機会を保障できません。
進学決定後、障害学生がすぐに利用できる設備の設置や、急な環境整備が必要になることがあるため、それらをカバーする予算が必要です。
■「ライフ」の安定とライフコース全体の支援
また、マイノリティ構成員が各々の「ワーク」で活躍するためには、ベーシックな「ライフ」の安定、たとえば、障害のある構成員の介助者の保障や、育児や介護の担い手となっている構成員の支援、通学困難な女性学生に対する一定の家賃支援などが不可欠です。しかし、大学の予算では「ライフ」にかかる費用のすべてを負担できません。
さらに、進学、ライフイベントからの復帰、キャリア形成など、長期的なライフコースに伴走した切れ目のない支援においても、既存の財政的な枠組みでは十分に対応しにくいものです。
緊急性が高いニーズや、ライフの領域におけるニーズ、ライフコース支援を中心に、DEIを実現するために必要な支援や環境整備のうち、既存の財源を利用することのできないものに寄付を必要とします。
■緊急性の高い物理的環境の整備
・老朽化した学内保育園の改修や備品整備
・女性や障害のある人々のための休養室・トイレ等の環境改善
・授乳室の整備
・生理用品の設置・整備
・学内キャンパス移動用電動車いすやハイバック車いすの常備
・障害のある学生・教職員の災害時対応整備(避難器具の設置)
・全学に向けた展示・体験用のバリアフリー対応デスクなど各種什器の展示
・支援機器の修理・メンテナンス
■情報アクセシビリティの向上
・アクセシビリティに配慮したデジタルマップおよびHP構築
・会議での同時多発的発話を視覚化するシステムの導入
・視覚障害者のためのナビゲーションデバイスの導入
・学内イベント等での手話通訳や文字通訳の提供
・書籍の電子データ化
■進学・キャリア形成・復職支援
・女子高校生への事前情報提供事業の拡充
・女性研究者のスキルアップ支援(研究費支援)
・育休復帰後のリスタートアップ経費
・入職後の中途障害に対する復職支援
■ライフの領域に関する支援事業
・育児・介護に携わる研究者への支援
・障害のある構成員のパーソナルアシスタントにかかる費用
・入学試験業務に派遣される教職員の子どもの保育支援
・女性学生向け住まい支援
これらの支援は、緊急性の高いニーズや、ライフの領域におけるニーズ、そしてライフコース全体に渡る切れ目のない支援を目指しています。
これにより、多様な構成員が公平かつ持続可能な形で大学の活動に参加する機会が保障されたキャンパスの実現が期待されます。
■多様な学生・教職員が学び、活躍できるキャンパス
この寄付によって、東京大学の構成員の多様性が向上すること、そして、多様な構成員が公平かつ持続可能な形で、大学の活動に参加する機会が保障されたキャンパスが実現することが期待されます。
■インクルーシブな文化の定着
マイノリティである当事者にとって、多くの寄付者の存在は心の支えになります。その支えは、大学での活動中のみならず、その後の生活にも良い影響を及ぼすものです。
マイノリティ性をもつ構成員の公平な包摂は、構成員自身のウェルビーイングや権利保障につながり、それ自体に価値が宿るものです。しかし同時に、大学や社会に対しても、様々な副次的な効果をもたらしもします。
例えば、多様なメンバーからなる研究チームは、そうでないチームと比べて、質の高い研究を行うという報告があります。また、社会的マイノリティの人々のニーズに応え、包摂的な社会の実現に貢献する、社会的インパクトの強い研究も、マイノリティ性をもつ研究者が同僚として存在することで促進されると言われています。
<UTokyo インクルーシブ・キャンパス構築プロジェクト>
<UTokyo インクルーシブ・キャンパス構築プロジェクト>