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「釜石市学習支援活動プロジェクト」活動報告(東日本大震災救援・復興支援プロジェクト)

「釜石市の学校への学習支援  復興を担う世代から新たな希望が生まれることを目指して」

 東京大学では、釜石市から「復興に力を発揮するような人材育成のための講座を開いてほしい」との要望をいただき、2012年に「東京大学釜石カレッジ」を開設しました。

釜石カレッジの事業内容
(覚書第2条より)
•復興・再生をテーマとした市民及び市職員向け連続講座の開講
•地域の学校・児童・生徒に対する復興に関する学習及び活動等への指導・助言
•その他復興及びまちづくりの推進に関する専門的研修等の実施

 この事業の一部として行われた「釜石市学習支援活動プロジェクト」では、生産技術研究所の大島まり教授、川越至桜講師、大学院生らが、2013年度に岩手県立釜石高校スーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業への協力を行いました。この活動には「東日本大震災救援・復興支援プロジェクト」へのご寄附が活用されています。ご支援を頂いた皆様に厚く御礼申し上げます。

             

釜石市の風景 研究室にて
写真左:被災の痕跡が残っていた釜石市中心部の風景。写真右:研究室にて、生産技術研究所の川越講師と大島教授。

 生産技術研究所では、2011年に次世代育成オフィスONG(office for the next generation)を立ち上げ、青少年に対する科学技術教育を行ってきました。小・中学校や高校に対して教材開発・ウェブでのコンテンツ配信を行ってきた実績を活かし、「東京大学釜石カレッジ」の中では、特に釜石市の学習支援を行っています。
 2012年に釜石高校がSSHに指定されてから、ONGに対し、課題探求学習について指導をしてほしいとの要請があり、同年から学習支援活動を開始しました。

※SSH(ス-パーサイエンスハイスクール)…文部科学省より指定を受けた、科学技術人材の育成のため、独自のカリキュラムによる授業や大学との連携などを行っている高校。

〇具体的な学習支援の内容について
 課題探求学習では、高校生が自分たちで課題を設定し、グループごとに調査結果をまとめてプレゼンテーションを行います。2013年10月に中間発表、1月には最終的に校内発表が行われ、投票により上位2チームは県大会、全国大会へと進むことになります。この発表における調査方法や発表の技法について、教員や大学院生が指導を行いました。校内発表には釜石市の市職員の方々も視察に訪れたとのことです。

写真1 写真2
テーマは地元の川の水質調査、四つ葉のクローバーの発生原因など様々。グループごとに教員や大学院生が指導を行う。

写真3 写真4
プレゼンテーションの様子。校内発表では多くの生徒が見守る中、上位2グループが投票で選ばれる。

大島教授「発表の仕方や、実験のデータの整理の仕方などについても、教員や大学院生が指導を行いました。最近は世界的に、課題解決型の教育が重要とされているので、早期の段階でトレーニングを行うことは重要だと思います。日本における課題解決思考の取り組みは、欧米諸国と比較して遅れています。私たちは大学での教育を通じて、イノベーション人材と言われるような、課題解決の出来る人材育成に取り組んでいますので、そのような教育のサポートには適していると思います。」

〇今後の学習支援の展望について
 引き続き2014年度も、釜石高校では学習支援を行う予定です。なおONGでは、小・中学校用など幅広い教材を提供しており、今後他の学校からも要請があれば、出張授業、映像素材の提供など、その学校に適した方法で学習支援を行うことが可能です。

写真1 写真2
ONGオフィスの学習支援では出張授業や指導のほか、ウェブコンテンツの提供なども幅広く行っている。

川越講師「2012年には釜石小学校でワークショップを行ったのですが、エネルギー政策に通じる課題として、釜石湾の発電を取り上げ、『電気をどのように使えば自分たちの町がよくなるか』というテーマで発表を行いました。そのときの児童の発表の中には『自分たちの町が島になって浮いていて、津波が来たら電気の力で島ごと避難する』というものもあり、被災の経験に基づいた内容に複雑な思いもありましたが、経験から新たな希望や発想が生まれると思うと、『自分で考える』ということの訓練として、このようなワークショップの意義があったと思います。」

大島教授「これは釜石の先生から伺ったことですが、「生徒たちは『将来自分たちが釜石に対してどういう貢献が出来るのか』ということを非常に真剣に考えている」ということです。ほかの高校と比較しても、釜石高校の先生方や生徒さんからは、特に熱意の強さを感じます。生徒さんは将来進学や就職で町を離れることがあっても、何らかの形で釜石に貢献してくれることと思っています。
 また釜石はかつて製鉄業が盛んでしたが、現在は衰退しつつあります。そのような状況下で、釜石の方々は『では次はどんな産業を興そうか』ということを考えていらして、釜石高校の生徒さんも、新たなことを始めたいのではないかと感じています。
 私たちに出来ることといえば教育であり、それはすぐに成果が見えるものではありません。しかし『新しい産業を創出する』ということは、まさに『自分で考える』という課題解決の考え方です。現在の釜石の生徒たちへの教育支援が、将来そのような新たな発想のきっかけとなればと思い、それが私たちの出来る釜石への貢献の一つではないかと思っています。継続していくことが大事と考えていますので、このような活動を末長く見守っていただければと思います。」

※ONGオフィス(学習指導についての依頼はこちら)

※肩書きはすべて活動報告当時のものです。

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