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私達は、沿岸域から深海まで、海中を全自動で探査する自律型海中ロボットAUV (AUV: Autonomous Underwater Vehicle) および各種センサなどの研究開発を行っています。水中では、水深10mごとに0.1MPa(1気圧)の圧力がかかります。Full Ocean Depthと呼ばれる世界最深部の水深は11,000m、水圧は110MPaにもなります。これは親指の爪ほどの面積に1トン以上の力がかかる、途方もない力です。このため、深海機器を開発するためには、耐圧設計が不可欠です。
私達は、世界的にも貴重な120MPaまで加圧できるFull Ocean Depth 対応の耐圧試験装置(大深度海底機器機能試験装置)を有しており、AUVやセンサ類の耐圧試験に用いています。開発時だけでなく、実際に海で調査を行った後には、水漏れはないか、海の塩分による腐食はないか、コネクタの緩みはないか、等々のメンテナンスを行います。そして耐圧試験を行い、安全を確認してから、次の調査へと向かいます。耐圧試験装置は、深海機器の開発、および深海での調査を安全に行うのに不可欠な機器なのです。また、東大内だけでなく学外の利用者にも使っていただき、日本の深海技術開発に貢献しています。
タイトルにある「EX」は「Explore」の略で、深海を探査したいという思いを込めています。
現在の耐圧試験装置は2000年に完成しました。それ以来、私たち深海機器開発に関わるメンバーでメンテナンスをしてきましたが、経年劣化による故障が頻発するようになり、ついに、制御装置全体の更新を伴う大規模改修が必要になってしまいました。このため、深海機器開発に係わる方々だけでなく、広く皆様にご支援いただき、機器の改修を行い、今後のFull Ocean Depth機器開発および運用に益したいと思います。
一部部品は入手に時間を要するものがあり、大規模改修には1年ほどかかる予定です。また、継続的なメンテナンスが必要なため、今後のメンテナンス費用にも充てさせていただきたいと思います。
日本発の魅力的な深海機器の研究開発を推進するとともに、産業化に貢献します。
日本は世界でも珍しい「深海がすぐそばにある国」です。生物学、地質学、考古学等の学術調査から海底資源探査、環境調査、捜索救助活動など、深海探査のニーズは大きく、深海機器はそのために不可欠です。私達は生まれ変わった耐圧試験装置を用いてFull Ocean Depthの世界に挑戦し続けます。
このプロジェクトを成功させるためには、皆様からのご支援が必要です。
ご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます。
生産技術研究所 准教授 巻 俊宏
2025年02月20日(木)
本年度は手動で運用できる範囲でセンサ類の耐圧試験を実施するとともに、念願だった大規模改修に着手しました。制御装置全体の更新が必要なのですが、何しろ20年以上前に納入された特注品です。メーカーの当時の担当者にご協力をいただき、幸いにも残っていた資料をもとに、部品やソフトウェアの更新をお願いすることができました。皆様からの温かいご支援により、今年度に主要な部品を発注し、来年度には更新をほぼ完了できる見込みです。
返礼品のカップメン容器の準備も進めています。図は試験的に加圧してみた結果です。左は加圧前、右は加圧後、圧力は70MPa(水深7,000m相当)です。写真のように加圧後のものは若干ゆがんでしまいましたが、皆様にはより綺麗な状態のものをお渡しできるよう、試行錯誤しています。
私達の活動をご支援いただき、本当にありがとうございます。おかげさまで昨年7月に本プロジェクトを開始してから2025年1月までの間に計16件、4,550,000円というとても大きなご支援をいただきました。
深海機器の研究開発の推進に向けて、関係者一同、より一層頑張って参りますので、今後ともご支援のほどよろしくお願い申し上げます。
<Full Ocean Depth EX基金>
<Full Ocean Depth EX基金>