
※本基金は2022年10月に「藤田ナノサイエンス基金」から〔統合分子構造解析拠点「FS CREATION」における研究と教育の支援基金 〕に名称を変更しました。
2022年に開設したFS CREATIONは、ライフサイエンス研究の基盤となる「統合分子構造解析」を主軸とする、本分野における世界唯一のオープンイノベーション拠点です。
FS CREATIONの母体の1つである藤田研究室は、「自己組織化」という複数の分子が比較的弱い相互作用でおのずと秩序だって集合し機能化する現象を、世界でいち早く科学の世界に取り入れました。そして長年の研究の結果、「結晶スポンジ法」と呼ばれる画期的な分子構造解析手法を発見しました。この新技術により、たとえば創薬の過程でできる微量化合物の立体構造が素早く解析できるようになり、新しい薬の開発期間が大幅に短縮されます。この技術は薬学や医学のみならず、食品や農薬、香料、有機合成など広く応用されます。
人間社会でも、はじめは無秩序な集団が人と人の触れ合いを重ねるうちにおのずと組織化し、機能化した集団に成長します。このように、構成成分が収まりの良い状態を求め秩序化する仕組みは自己組織化と呼ばれ、宇宙でも生体内でも、あるいは経済や産業が発展する過程でも起こっています。ところが、原子・分子のレベルでものづくりを担う化学の分野では、半世紀ほど前までは自己組織化の現象は全くと言って良いほど注目されていませんでした。藤田研究室は、金属と有機化合物の間に働く弱い結合(配位結合)を駆動力とする自己組織化に世界でいち早く取り組みました。1990年に報告した正方形分子の自己組織化が,その最初の例です。
長年の自己組織化の研究から、ミクロの細孔(穴)が空いた物質をつくることができました。この物質は様々な有機化合物をスポンジのように吸い込みますので、これを結晶スポンジと名付けています。吸収された化合物は細孔を鋳型に強制的に周期配列をつくり出すことから、X線結晶構造解析により隅々まで構造が見えるようになりました。こうして,これまでX線結晶構造解析の「100 年問題」とまで言われていた試料の結晶化の工程を不要とする分子構造解析手法「結晶スポンジ法」が誕生しました。分子が関与するあらゆる研究分野で結晶スポンジ法が使われはじめています。
どのように画期的な研究でも、研究室の中に留まっているだけでは何の価値も生みません。私たちは社会の皆さまと共に挑戦し、その成果を皆さまに還元しなければならないと考えています。
社会に役立つ科学であるために、私たちは4つのステップを設定しています。
① [科学の最先端を切り拓く]新たな自己組織化ナノサイエンスの創造
② [新たな産業を創る]産業界と一体になったオープンイノベーションの実現
③ [社会とともに歩む]最先端化学を一般市民に紹介するアウトリーチ活動
④ [次世代の研究者を育む]新たなものづくりの仕組みに果敢に挑む若手研究者の発掘と育成
現在、②研究成果の事業活用に向けた取り組みについては民間企業との協働により活発に活動出来ていますが、①本研究のさらなる発展にはより多くのリソースを必要としており、また、研究と両輪で進めていくべき③研究の内容や成果を社会に伝えていく活動、そして ④この研究の未来を担っていく若い研究者を発掘し育てていく活動については道半ばであり、より力強く推進していかなければならないと考えています。
本研究で豊かな社会を創り、科学研究の重要さや楽しさを社会に広め、未来を担う優秀な科学者を育てていくために、ぜひ皆さまのお力をお貸しください。
これまでそうであったように、科学は今後も何世代にもわたって継続的に進化を続け、豊かな社会創りに貢献していかなければなりません。しかし多くの報道等にもある通り、残念ながら近年、我が国の科学研究の世界的競争力は低下傾向にあります。研究予算の削減や若手研究者の就職難などの社会課題が、その背景として大きく横たわっています。日本では、自分の生涯をかける研究テーマを定め、その基本的なアイデアを固めていく20代後半から40代前半までの時期に、自分が本来やりたい研究に専念することができない立場にいる研究者が多いという現状があります。
こうした状況を打破するために私たち自身が出来ることとして、私たちは若手研究者に新たな機会・環境を与えてあげたいと考えています。
たとえば従来、若い研究者はベテランの研究者と同じ研究室に所属して、ある意味「下積み」のような期間を過ごす必要がありましたが、そのスタイルが優れた若い人たちを研究室から遠ざけてしまっている、あるいは若い研究者の成長スピードを遅らせているかもしれません。FS CREATIONは、複数の事業会社と場を共有し、社会実装に近い場所で異なる立場の研究者と意見や情報を交換しながら研究が出来るのが特長です。こうしたアグレッシブな環境において、余計な雑用等に時間を費やすことなく、若い研究者にいかんなく能力を発揮していただけるようにしたい。それが日本の科学力、ひいては国力を高めることに繋がっていくと信じています。
また、未来を創る優れた研究者を輩出するために、そしてこれからの研究活動のさらなる活性化のために、科学研究の重要性や研究者という職業の魅力に理解のある社会環境を創ることはとても重要です。そのために、最先端の研究成果を社会に伝えていくためのアウトリーチ活動にも、より力を入れていかなければなりません。
私たちはこれまで、高校生に向けて、ITCを活用した模擬授業・講演会や高額装置を使った実験実習を毎年複数行ってきました。また、わかりやすいweb動画の作成やテレビ番組への出演など、積極的に化学に関するコミュニケーションの機会創出に尽力しています。分子の世界を自分の視界で仮想体験できるVRシステムも開発しました。しかし、現状ではまだまだ社会的に有意な影響力を得るには至っていません。皆さまのお力をお借りして、こうした活動をさらに強化していきたいと考えています。
いただいたご寄付は主に以下の通り、大切に活用させていただきます。
研究支援:新たな自己組織化ナノサイエンスの創造
社会認知促進:公開講座,講演会,見学会の開催
若手人材育成:ラボ内若手牧場の建設および運営費・若手研究者の雇用
東京大学は、産学協創を通じてイノベーションの加速を推進し、社会課題の解決と経済成長への貢献に取り組んでいます。イノベーション加速のためには、学知と企業の潜在能力との適切な融合が必要であり、研究開発段階から産業化を見据えたエコシステム構築が重要です。
とても小さくて直接目で見ることのできない分子の世界は、私たちの暮らしや日常とは無関係だと思われがちです。しかし、私たちの世界のすべてのモノは分子によって出来ています。分子科学の進化は、世界のあらゆるモノをより良くしていくことに直結しているのです。人類の繁栄にとって、また、激しい国際競争にさらされている我が国にとって、不可欠かつ普遍的な重要性を持った学問分野です。
私たちの活動を長期にわたり継続性を持って実現するために不可欠なのが、安定した活動資金の確保です。本基金を通じて個人の皆様から企業の皆様まで裾野広くご支援を募ることにより、研究を強化・加速するとともに、特に若手研究者の育成と社会的認知の拡大に力を注ぎ、社会に大きく貢献していきたいと切に願っております。
皆さまのご支援を心よりお願い申し上げます。
FS CREATION
東京大学 大学院工学系研究科応用化学専攻
社会連携講座「統合分子構造解析講座」特任教授
分子科学研究所 客員教授
佐藤 宗太
FS CREATIONの研究・活動内容に関する詳細は、こちらの各リンクをご参照ください
[FS CREATION]https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400181778.pdf
[東京大学藤田研究室]http://fujitalab.t.u-tokyo.ac.jp/
[東大社会連携講座 統合分子構造解析講座]https://satolab.t.u-tokyo.ac.jp/
[分子科学研究所 藤田 誠グループ]https://www.ims.ac.jp/research/group/m-fujita/
[自己組織化]https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/f_00054.html
[結晶スポンジ法]https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/f_00051.html
2025年02月18日(火)
世界初の統合的に分子構造解析の手法を探索する拠点、「FS CREATION」では、アカデミアと産業界とが本気で連携しながら世界最先端の研究を推進しています。また、最先端研究の成果を、次世代の研究を担う中高生や一般市民の方たちへの教育・アウトリーチ活動も積極的に行っています。
FS CREATIONにおける活動を報告します。今後もFS CREATIONをご支援いただけますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。
FS CREATION開設から3年目を迎えた2024年、たくさんの方たちに研究活動を知ってもらうことができました。2024年8月2日には、90名もの高校生たちが宮崎県立宮崎西高等学校からFS CREATIONに来訪してくれました。このサマースクールでは、FS CREATIONでともに活動している分析装置メーカーである島津製作所、日本電子、リガクの3社の研究員の方たちに加え、FS CREATIONが拠点をおく柏の葉の街を開発している三井不動産の社員の方たちと一緒に活動いたしました。街と一体化した研究活動、世界の分子科学を支える企業活動に触れてもらい、実際に3種類の精密分析機器を使った実習実験を体験してもらいました。当日の様子は こちら をご参照ください。
2024年12月21日には、FS CREATIONが拠点をおく千葉県と連携し、県内の理数教育拠点校 県立船橋、連携校 市川学園・県立柏・芝浦工大柏・長生・東葛飾・薬園台、あわせて7つの高校を対象としたウインタースクールを開講し、60名の高校生たちに来訪いただきました。参加した高校生たちは、大学の先生だけでなく、企業の研究者とも交流でき、さらに街全体でサイエンスを盛り上げようと工夫を凝らしている不動産デベロッパーにも大きな興味をもってくれました。
FS CREATIONを飛び出して、2024年1月12日に近畿大学理工学部で大学院生20名に、2024年11月20日に東京都立武蔵高等学校で高校生13名に、2024年11月30日に麻布高等学校 麻布中学で中高生28名に出張模擬授業をしました。2024年12月24日には愛知県内の高校生700名が集まった「科学三昧 in あいち 2024」にブース出展して分子科学の楽しさを感じてもらいました。
高校生だけでなく、幅広い層の一般市民の方にも魅力的な最先端分子科学を知ってほしいと思い、東京大学本郷キャンパスの東大生協第二購買部と手を組んで、オープンキャンパスが開催されていた2024年8月6-7日2日間にサイエンスイベントを開催しました。FS CREATIONで産学連携活動を行っている、ジーエルサイエンス、花王、三井不動産とともに活動し、香り成分の分析機器や、分子を精製する方法の展示、結晶スポンジの展示、分子を見て触って学べる「VR-MD」の体験コーナーなど盛りだくさん用意いたしました。本イベントを記念して、有機分子の精密構造決定法である結晶スポンジ法をわかりやすく伝えてくれるキャラクター「結晶すぽんじさん」のぬいぐるみも販売開始となりました㊗️。当日の様子は こちら をご参照ください。
教育・アウトリーチ活動を推進している佐藤宗太 特任教授の想いをインタビューした記事をJAICI化学情報協会でご紹介いただきました。
また、産学連携を加速するFS CREATIONの建築に隠されたヒミツを三進金属工業の研究設備総合カタログVol.7 巻頭P.11-20にご紹介いただきました。
ぜひご一読ください。
本 東大基金について、柏の葉スマートシティのfacebookにて紹介いただきました!今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
(記事へのリンク:https://www.facebook.com/kashiwanoha.smart/posts/pfbid02kuxDkxfopw6YRDudUkvCsbnmnTNfVtsyhX7zpM8NWYYcUuVy89nVXf54sdUH8xh7l)
<統合分子構造解析拠点「FS CREATION」における研究と教育の支援基金>
<統合分子構造解析拠点「FS CREATION」における研究と教育の支援基金>
<藤田ナノサイエンス基金>
<藤田ナノサイエンス基金>
<藤田ナノサイエンス基金>
<藤田ナノサイエンス基金>
<藤田ナノサイエンス基金>
<藤田ナノサイエンス基金>
藤田先生の素晴らしい研究が東大で継続・発展されるよう、些少ですが支援させていただきます
今年の化学賞の発表も楽しみです
<藤田ナノサイエンス基金>
<藤田ナノサイエンス基金>
<藤田ナノサイエンス基金>
正井 卓馬
2025年06月19日
100,000円
東大の分子科学での活躍に期待します。 <統合分子構造解析拠点「FS CREATION」における研究と教育の支援基金>
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2023年01月11日
823,226円
FS CREATIONの活動を支援します <統合分子構造解析拠点「FS CREATION」における研究と教育の支援基金>
小川 大地
2022年09月04日
100,000円
在学中のご恩に、微力ながらお返しさせていただければと存じます。門下生の一人として、藤田先生の益々のご活躍を心よりお祈り申し上げております。 <藤田ナノサイエンス基金>
エンジェルズハウス研究所 田中昌子
2021年10月11日
50,000円
子どもたちに良き未来を手渡したいという想いは同じです。三鷹高校の同級生として、また教育に関わるものとして、ずっと応援し続けます。ささやかですがお役立てください。 <藤田ナノサイエンス基金>
Dream 財団
2021年09月27日
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人類に役立つ新たな解明、新たな発見へ <藤田ナノサイエンス基金>
谷口 正彦
2021年06月10日
100,000円
更なる研究の発展と,若手研究者の育成にお役立て下さい。 <藤田ナノサイエンス基金>
尾嶋 正治
2020年12月13日
100,000円
東大発ノーベル賞受賞に最も近い藤田教授のプロジェクトを支援 <藤田ナノサイエンス基金>
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2020年11月01日
50,000円
11月1日の日刊工業新聞の記事を拝読いたしました。すばらしい研究をよい環境で継続して頂きたいです。よい成果があげられますことを心より願っております。 <藤田ナノサイエンス基金>
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2020年09月25日
10,000円
9月21日付の日本経済新聞の記事を読みました 藤田先生の素晴らしい研究が東大で継続・発展されるよう、些少ですが支援させていただきます 今年の化学賞の発表も楽しみです <藤田ナノサイエンス基金>
鬼塚 磐雄
2020年04月23日
20,000円
ささやかな寄付で恐縮だが、関係者一同力を合わせてプロジェクトを精力的に推進し、成果を挙げられんことを祈っています。 <藤田ナノサイエンス基金>
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2020年03月19日
10,000円
藤田先生の素晴らしい研究のために些少ながら支援させていただきます。 <藤田ナノサイエンス基金>