チタンは、軽量で、抜群の耐食性を有し、資源的に無尽蔵の「夢の金属」です。金属のなかで最高の比強度があるため、最も優れた金属構造材料です。現在、広く一般に用いられている構造材料は、鉄鋼ですが、すぐに錆びてしまうため、長期間に渡って錆を防ぐメンテナンスが欠かせません。金属構造材料の腐食による事故を防ぐために、土木や建築、航空宇宙の用途で今日広く普及している耐食性が高い材料はステンレス鋼です。ステンレス鋼には、ニッケルが合金元素として利用される場合が多いですが、資源的に限りがあるほか、採掘や製錬に伴い大きな環境負荷をもたらします。ステンレス鋼などの材料をチタンに代替し、チタンが広く普及すれば、安全で豊かな生活に役に立ちます。チタンは、高度持続型社会に不可欠な“未来材料”です。
東京大学生産技術研究所 次世代育成オフィス(ONG)映像教材 「未来材料:チタン・レアメタル」
しかし、現時点では、鉱石から金属チタンを効率良く製造する技術が開発されておらず、膨大なエネルギーとコストと時間がかかります。1トンのチタンを製造するのに10日以上の時間と100万円以上のコストがかかります。これは、ステンレス鋼の数倍のコストとなります。このため今は、チタンの用途は航空・宇宙分野など特殊な分野にしか利用されていません。チタン普及の鍵は、革新的な製錬技術の開発であり、1791年のチタン発見から200年以上にわたる人類の挑戦は、今も続いています。
抜群の性能を有し、資源的にも無尽蔵なチタンの製造技術の革新を加速させるには、一人でも多くの若手研究者や有能な技術者を育てることです。柔軟な発想をベースに新しい製造法を考案し、長い時間をかけて忍耐強く試行錯誤を繰り返し、今後のチタン研究の発展を支える人材の育成は、とても重要な課題です。
実のところ、チタンの製錬プロセスは、研究に必要な最低限のインフラを整備するのに多大な手間とコストを要します。また、実験の難易度が高く、成功率も低い上、1000℃前後の高温で活性金属の反応を伴う実験は危険を伴うため、費やす時間や努力の割には研究成果が上がりません。即効性が高い研究成果が求められる昨今、「チタンの夢とロマン」を追い求めるのは無謀かもしれません。しかし、チタンの製造技術の開発は、困難な分、深みがあり、とても面白い研究分野であるため、一度チタンの可能性に魅了された若手は大きく成長する可能性を秘めています。
スポンジチタンの製造工程
(写真提供:株式会社大阪チタニウムテクノロジーズ)
若い世代がチタン研究を長期的に続けるためには、新しいアイディアと夢をもって研究を推進することを通じて得る、自信とモチベーションが不可欠です。新しいアイディアは、多様な交流や経験によって生まれます。当基金は、シンポジウムや学生・若手研究者の海外派遣の実施など、質の高い安定した環境の整備によって、研究者・技術者としての視野を広げるとともに、チタン研究の進展、チタン産業の飛躍的な発展を目指します。さらに、日本のチタン世界生産シェアをさらに向上させ、日本が圧倒的なチタン生産大国、技術超大国として全世界に貢献しつづけることを目的とします。
このような活動には、多額の経費がかかりますが、現状では、資金は恒常的に不足しております。チタンの将来性に共感していただける皆さまのご理解、ご協力を賜り、どうか温かいご寄付を賜りますようお願い申し上げます。
100年前、アルミニウムは稀少で非常に高価なレアメタルでしたが、革新的な製錬技術が開発された結果コモンメタルに変身し、いまでは日常に欠かすことのできない金属素材となっています。本基金は、チタンが、アルミニウムのようにレアメタルからコモンメタルに変身することを目指した、あらゆる活動を行います。
具体的には、本基金を活用し、以下の活動を行う予定です。
→例: シンポジウム等の開催、学生・若手研究者の海外派遣、情報発信・啓発活動
米国、マサチューセッツ工科大学(MIT)にて毎年開催されるリアクティブメタルワークショップ(RMW)の様子
現在、チタンの研究を行う研究者、特にチタンの製造技術を革新する試みにチャレンジする若者が世界的に不足しています。本基金により、チタン・シンポジウム等のイベントを開催し、また、学生や若手研究者を海外に派遣する等の活動を長期的に行うことにより、 チタンに関する研究の進展、チタン産業の飛躍的な発展を目指します。
上記の活動やチタンの重要性、将来性の一般社会への発信・啓発には、多額の経費がかかりますが、現時点では恒常的に不足しています。チタンを愛する、あるいはチタンの将来性に共感できる皆様のご理解、ご協力を賜り、ご支援よろしくお願い申し上げます。
2024年06月17日(月)
本プロジェクト設置責任者 岡部徹が進めて参りましたチタンに関する研究に関して大きな進展があり、6月14日に、プレスリリースを行いましたのでご報告いたします。
本研究が、将来、チタンの製造プロセスの研究に大きな変革をもたらす起点となることを願い、今後も研究を続けていきます。
引き続き、ご指導、ご支援くださいますようお願い申し上げます。
岡部 徹
プレスリリースの詳細についてはこちら
2023年09月25日(月)
岡部 徹 教授が、学術・芸術・スポーツ分野で著しい業績を挙げた方に授与される令和5年春の紫綬褒章を受章されました。岡部教授のこの度の受賞は、以上のレアメタルの製錬やリサイクル分野の研究、教育、啓発活動の功績が高く評価されたものです。
詳細はこちらをご覧ください。
2022年05月26日(木)
2021年11月5日(金)に、本所コンベンションホールにて、チタンシンポジウム2021(第5回チタンシンポジウム)が開催されました。このシンポジウムは、本所持続型エネルギー・材料統合研究センター、非鉄金属資源循環工学寄付研究部門(JX金属寄付ユニット)、レアメタル研究会(第98回レアメタル研究会)、(一社)日本チタン協会、日本チタン学会による合同で企画されました。チタンの現状、未来について6件の講演が行われました。
本シンポジウムは、新型コロナウイルス感染予防対策の観点から、現地での参加者を講演者と関係者の20名程度に制限し、講演の様子をZoomウェビナーおよびYouTubeライブを用いてオンライン配信するハイブリッド形式で行いました。
生産技術研究所教授、所長の岡部徹先生が第62回(令和3年度)東レ科学技術賞を受賞されました。賞状の贈呈は、3月14日(月)に開催予定の(公財)東レ科学振興会の設立60周年記念式典において行われる予定でありましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により延期され、3月31日(木)に贈呈式のみが開催されました。
岡部先生は、35年以上にわたって一貫して、チタンをはじめとするレアメタルの精錬やリサイクルに関する研究に取り組んでこられました。この度は、「レアメタルの環境調和型リサイクル技術の開発」に関する先駆的な研究業績が認められ、本賞が授与されました。
詳細はこちらをご覧ください。
2021年3月26日(金)に、"URBAN MINING" - developing new and more sustainable methods for the production and resource recovery of metals used in modern electronic devises (都市鉱山からのレアメタル回収:電子材料スクラップからの新規かつ環境調和型のレアメタルの回収・生産技術の開発)の貢献に対して、ノルウェー科学技術大学 (NTNU) から岡部徹教授に名誉博士号 (the Degree of Doctor Honoris Causa at NTNU, Honorary Doctor of the Norwegian University of Science and Technology) が授与されました。
詳細はこちらをご覧ください。
2021年08月19日(木)
研究内容の紹介は、2:16から始まります。
2021年04月21日(水)
岡部 徹 教授、竹田 修 リサーチフェロー、大内 隆成 助教が令和3年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰を受賞しました。4月14日(水)に開催された表彰式においては、科学技術賞 研究部門受賞者を代表して、岡部 徹 教授が文部科学大臣から表彰状を代表受領し、さらに、令和3年度の表彰者(全受賞者)を代表して謝辞を述べました。
詳細はこちらをご覧ください。
https://www.iis.u-tokyo.ac.jp/ja/news/3540/
2021年03月04日(木)
2020年11月6日(金)に、リアル講演会+Zoomを利用する講演のネット配信のハイブリッド形式で、第4回チタンシンポジウムを開催し、約190名の方々にご参加いただきました。新型コロナウィルス感染症予防のため、リアルでの参加は講演者とその関係者のみを原則として開催しました。資料をこちら(PDF1.8MB)よりご覧いただけます。
いただきましたご寄付は今後、チタン製品の購入代金の一部に活用させていただく予定です。引き続きご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
2020年05月01日(金)
皆様方の心温まるご支援により、東大基金「夢とロマンのチタン基金」は、多くのご寄付が集まりました。心より感謝申し上げます。東大基金「夢とロマンのチタン基金」の立ち上げから、まだ1年も経過しておりませんが、チタンをはじめとするレアメタルに関係する私どもの活動をここにご報告させていただきます。
詳細の報告書はこちらをご覧ください。
活動報告書PDF(8MB)
今からが量産体制に持っていけるかの正念場と思います。
<チタンの夢とロマン基金>
私の業務に関しては、貴殿の開発方法からデメリットも想起されますが、応援しております。
<チタンの夢とロマン基金>
稲盛和夫氏の答え
「成功するまで続けたから。」
正確には覚えていませんが稲盛氏について
こんな趣旨の記事があったと記憶しています。
ゴールに到達していなくてもプロセスが人材を育てると思います。
<チタンの夢とロマン基金>
<チタンの夢とロマン基金>
チタンの持てるポテンシャルをフルに生かす研究も大いに興味、期待を持つ。
<チタンの夢とロマン基金>
<チタンの夢とロマン基金>
<チタンの夢とロマン基金>
<チタンの夢とロマン基金>
<チタンの夢とロマン基金>
<チタンの夢とロマン基金>
<チタンの夢とロマン基金>
<チタンの夢とロマン基金>