カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)は、宇宙への根源的な疑問に答えるために設立された国際的研究機関です。世界中から最高レベルの研究者を集めて宇宙と物質の起源に迫ります。
Kavli IPMU研究棟 (Credit:Kavli IPMU)
議論の様子 (Credit:Kavli IPMU)
宇宙は何で出来ているのでしょうか? 宇宙はどのように始まり、どんな運命を迎えるのでしょうか? 宇宙を支配する法則は何なのでしょうか?そして、私たちはなぜこの宇宙に存在するのでしょうか? このような疑問は人類共通の疑問です。だからこそKavli IPMUでは国際的、学際的な研究機関を目指しているのです。
この疑問に答えるためには世界水準の研究機関である必要があり、Kavli IPMUは研究者の半分以上がすでに海外からの優秀な研究者で構成されています。政府からの寛大な支援のもと、ほとんどゼロからのスタートだったにもかかわらず、今は約80名の研究者を抱えており、世界水準の研究機関へと日々成長しています。多く斬新な論文が海外からの優れた研究者との共同研究によって生まれました。
しかしながら、これまで国際的に見て非常に安定的と考えられてきた日本政府からの補助金も昨今の政治情勢や景気の影響に強く左右される状況下にあります。研究の要となる人材獲得競争が世界的にも激しさを増す中、世界に伍して魅力的な研究機関として存続するためにも、安定的かつ柔軟に活用出来る財源の確保がどうしても必要なのです。
機構長 大栗 博司
2020年03月05日(木)
●観測ロケット実験FOXSI-3で取得した世界初の太陽コロナ観測データの公開: 太陽コロナの研究は、太陽物理やプラズマ物理という基礎学問としてだけでなく、地球環境への影響調査という点でも極めて重要。理想のコロナ観測に必要な軟X線用の高速度カメラを国立天文台、名古屋大学、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) 宇宙科学研究所の研究者らと共同で開発。世界最先端の太陽コロナ観測データを公開。(高橋忠幸主任研究者グループ)
●共鳴現象が解き明かす銀河ダークマター分布の謎に関する論文を発表:ダークマターが比較的軽く、そして特別な固有の速度のときだけ互いに散乱する性質を持っていれば、矮小楕円銀河においてはダークマターに共鳴現象が生じるため、これまで謎とされてきた矮小楕円銀河と銀河団の間でのダークマターの分布の違いを上手く説明できるという新しい理論を発表。(村山斉主任研究者グループ)
●「SuperKEKB プロジェクト」Belle ll実験の本格的な物理解析のためのデータ取得(フェイズ3)開始:フェイズ3で極めて重要な崩壊点位置検出器 (VXD)の中心部には、ピクセル検出器(PXD)とシリコンバーテックス検出器(SVD)があり、カブリIPMUはSVDの制作を担当。フェイズ3により電子と陽電子の衝突データを本格的に取得・解析しBelle II 実験で新しい物理を解明する研究の進展が期待できる。(樋口岳雄准教授グループ)
●ダークマターは原始ブラックホールではない可能性が高い、との論文を発表:ハワイのすばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam (HSC) で得たアンドロメダ銀河のデータを詳しく解析し、ホーキング博士がその存在を予言した月質量より軽い原始ブラックホールによる重力レンズ効果を探索。その結果、約260万光年の距離にあるアンドロメダ銀河と我々の天の川銀河の間に存在するダークマターが原始ブラックホールではない可能性が高いことを観測的に初めて明らかにした。(高田昌広主任研究者グループ)
●第二世代星に観測された大量の亜鉛は、初代星のジェットを吹き出す激しい爆発の産物:宇宙初期の初代星の超新星爆発がジェット状の非対称な爆発であった可能性が高いことを、観測と亜鉛の高い存在量に着目したシミュレーション結果から明らかにした。この結果は、宇宙再電離という重要な時代に対する従来の知見に影響を与える可能性がある。(野本憲一上級科学研究員グループ)
●すばる望遠鏡超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam で遠方超新星を多数発見:HSCを用いた半年間の観測により、赤方偏移1以上 (約80億光年遠く) の遠方超新星58個を始め約1,800個もの超新星を発見。近傍を含む大量の超新星を発見したことのみならず、遠方超新星を半年間という短期間の観測からこれほどの数発見できたことは、大口径のすばる望遠鏡の集光力と高解像度で広視野という HSC の特徴を合わせた、すばる HSC での観測の強みが存分に活かされた成果と言える。(安田直樹教授グループ)
●量子重力に対称性はない:重力と量子力学を統一する理論では、素粒子論の重要な原理であった対称性がすべて破れてしまうことを、ホログラフィー原理を用いて証明した。この証明にあたっては、量子コンピューターで失われた情報を回復する鍵とされる「量子誤り訂正符号」とホログラフィー原理との間に近年発見された関係性を用いるという新たな手法を利用。この成果は、素粒子の究極の統一理論の構築に大きく貢献すると同時に、近年注目の量子コンピューターの発展にも寄与するとの期待から、アメリカ物理学会の発行するフィジカル・レビュー・レター誌で、注目論文に選ばれた。(大栗博司機構長グループ)
●新たな高性能画像診断機器、医療用コンプトンカメラの臨床試験に成功(PET薬剤とSPECT薬剤の同時計測・画像化):1台で幅広いエネルギー範囲のガンマ線を複数同時に識別して測定できる新たな画像診断機器として「医療用コンプトンカメラ」を開発し、世界で初めてとなる人での臨床試験を実施。核医学診断薬剤 (18F-FDG(PET薬剤)と99mTc-DMSA(SPECT薬剤))の2種類の薬剤を同時に被験者へ投与し、このカメラで測定。薬剤が特定臓器に集積している様子を同時に可視化することに成功。本技術により PET 検査と SPECT 検査の期間短縮や患者被曝量の軽減化につながる。また、複数機能同時検査等の実現によって、新たな診断技術の発展が期待される。(高橋忠幸主任研究者グループ)
●人工知能(AI)が可能にする宇宙のシミュレーション:人工知能技術を駆使して、宇宙の複雑な3次元シミュレーションのモデルを作り上げることに初めて成功したと発表。(Li Yin 特任研究員が参加する米国カーネギーメロン大学等に所属する Siyu He 氏が率いる米国、カナダ、日本の国際研究チーム)
●女子生徒の進学を阻む要因に関する論文を発表:保護者の男女平等度や性役割態度、理系分野に対するイメージ分析に関する論文を発表。今後、研究グループは、性役割態度をはじめ、女性の理系進学に影響する社会的要因をモデル化し、国際比較を通じて、理系の中でも分野によって異なる女子学生率の低さについて解明していく予定。(横山広美教授グループ)
●超高エネルギーガンマ線で世界最高の空間分解能を達成(宇宙の標準光源「かに星雲」のサイズを超高エネルギーガンマ線で測定):西暦1054年に観測された超新星爆発の名残「かに星雲」が放つ超高エネルギーガンマ線の空間的広がりの測定に、世界で初めて成功。データサイエンス技術を極限まで追求することで、超高エネルギーガンマ線の大きさの測定がはじめて実現し、その結果、星雲内部の高エネルギー粒子の振る舞いを正確に記述することが可能となった。今回の研究成果からは、「宇宙線」と呼ばれる高エネルギー粒子が天体内でどのように生成され伝搬するのか理解が深まると期待される。(高橋忠幸主任研究者グループ)
●世界初、ガンマ線バースト残光から超高エネルギーガンマ線の検出に成功:10年以上の長きにわたる挑戦の末、宇宙最大の爆発現象である「ガンマ線バースト」から世界で初めて超高エネルギーガンマ線放射の検出に成功したことを発表。今回の発見は、ガンマ線バーストの新たな姿を明らかにしており、今後のガンマ線バーストの観測戦略に大きなインパクトを与える重要な結果と言える。(高橋忠幸主任研究者グループ)
<広報活動>
<カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)>
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