歴史家ワークショップ支援基金

若手歴史研究者を育成し「歴史的思考法」をひろく日本社会と共有したい

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プロジェクト設置責任者

経済学研究科マネジメント専攻 准教授
山本 浩司

今年度寄付総額
415,000円
今年度寄付件数
19件
現在の継続寄付会員人数
3人

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東京大学へのご寄付には税法上の優遇措置が適用されます。

「歴史的思考」 ― 社会を活性化させるための基本ツール

世界的な感染拡大や金融危機に、想定を超える巨大災害。未曽有に感じられる出来事に直面する時、現在の危機を理解し乗り越える手がかりを求めて、私たちは過去と向き合い歴史を紐解きます。歴史に遡って考えることは、現在を理解し、未来を構想するための足がかりとなるはずです。

目指すべき未来社会の設計やイノベーションにおいても、工学や医学をはじめとする諸分野の学問と並んで、歴史を振り返る視点が果たす役割は小さくありません。「温故知新」という故事成語が表すように、過去を振り返り現状を的確に把握する作業が、新たな発想や将来構想には不可欠だからです。ビジネスにおいても科学技術開発においても、そして政治や政策立案においても、これは共通しています。

歴史を学ぶ意義はそれにとどまりません。

歴史研究が培ってきた「背景への想像力」は、実はメディア・リテラシーそのものでもあります。過去の事実を理解・認識しようとする時、歴史研究者は当時の人々が遺した手紙や記録を読み解き、過去を再構築します。その過程では内容そのものを鵜呑みにせず、まずそれらの史料が生み出され、受け継がれてきた背景にも目を凝らします。情報が生み出される現場を理解し、その信憑性を評価することは、あらゆるメディアをつうじて情報が飛び込んでくる現代社会において、必須の情報リテラシーと言えるでしょう。

さらには、過去を生きた人々がおかれた境遇をエビデンスに即して誠実に理解しようとすることは、現在の私たちが、物事の背景を想像し、他者に共感し、現在の「あたりまえ」から距離をとって自分たちのあり方を反省することにもつながります。歴史的思考を身につけた人が増えることは、社会をより豊かに、より公正に、より活力あるものとするための基本条件なのです。

こうした社会の活性化に必須である思考の方法を実践し、実際の研究成果を発信し、そこで培われたスキルを書物や授業を通して社会と共有するための「ベースキャンプ」となるのが歴史研究です。

「歴史家ワークショップ」 ― 活性化のための仕組み

社会と経済の活性化のために不可欠であるはずの歴史的思考は、先細りしつつあります。長らく文系学問が軽視されてきた現在の日本では、歴史学や歴史的思考を担う若手研究者の育成に十分な資源が投じられず、研究者の数は減り孤立しがちです。その知見や研究成果の社会還元は個々の研究者に委ねられており、教員の待遇と労働環境が悪化する中で、社会への知識の発信は滞り、財源とロールモデルの減少によって若手研究者も減り続けるという負のサイクルが起こっています。社会を活性化するために過去から学ぶ、という活動の基盤が失われつつあるのです。

こうした現状を改善し、歴史研究を盛り上げ、歴史的思考法とその成果を社会に還元するために、私たちは2016年から「歴史家ワークショップ」という事業を行ってきました。当ワークショップは東京大学経済学研究科を拠点とし、日本各地と国内外の歴史研究者有志によって運営されています。設立から5年間、私たちは大学院生を中心とする全国の歴史系研究者を対象に、初めての英語発表から英文原稿の推敲と査読のノウハウ、一流国際誌への投稿、一般向け講演の技術と実践まで、国内外で最高水準の研究者に期待される成果発信の工程をシームレスに支援し、学術成果を社会と共有する場を提供してきました。

歴史系の研究者は、文学部に在籍する日本史や西洋史研究者に限らず、医学の歴史ならば医学部に、法と政治の歴史であれば法学部に、理系・文系の諸分野をまたがる多くの学部に点在しています。こうした様々な学問領域において活躍する歴史研究者が有志として集い、専門分化した学会・研究室や個別研究者単位の努力を補完する活動を行なっています。全国の若手研究者を支える私たちのこれまでの活動の成果は、オックスフォード大学出版局の発行する歴史学分野のトップジャーナル Past & Present誌への日本人研究者として40 年ぶりの掲載決定(2022年刊行予定)という形でも現れています。

専門的研究を支援するだけでなく、歴史研究を広く内外に発信し、世代を超えた知識の継承を可能にするために、100年続く学問の基盤を形成したい。過去の出来事やその意義を多様な史料を手掛かりに誠実に解き明かそうとするあらゆる人や組織と協働し、歴史的に思考することの価値や楽しさを社会と共有したい。歴史学分野のみならず、人文社会科学分野全体の活性化に寄与することも、私たちは企図しています。過去を振り返り、良い前例に学び過ちを繰り返さないよう思考し行動することの価値と必要性が、実感を伴って受け継がれていく社会。歴史的背景を考えることが汎用性の高いスキルの一つとして認知され、奨励され活用される社会。そのような社会の実現を、私たちは目指しています。

組織と活動の詳細はこちらをご覧ください。

歴史家ワークショップHPはこちら

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社会発信

一般参加者に「研究者の問題関心」を知ってもらうとともに最新の歴史研究の知見を社会に還元するため、参加型ワークショップや連続講座などを企画・開催しています。英米圏のアカデミアで重視されつつあるパブリック・エンゲージメントを若手研究者が企画・実践する、ボトムアップの取り組みです。

2018~19年には、国立西洋美術館で開催中の美術展に合わせた講演会シリーズ「『ミケランジェロ展』を3倍楽しむ。」「『ルーベンス展』を3倍楽しむ。」「『ハプスブルク展』を4倍楽しむ。」を行いました。それぞれの芸術が生まれた時代背景を新進気鋭の研究者が解説し、好評を博しました。

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2019~20年に2回開催した「史料読解ワークショップ」では、専門家による解説の後、事前配付された資料を用いて参加者同士が議論するグループワークを行い、過去の史料を読み解く楽しさと難しさを共有しました。

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2020~21年に開催した連続講座「伝記の読み方を考える」では、歴史上の偉人のイメージの形成に伝記が果たしてきた役割について考えました。講演動画はYouTubeで配信され、講演録の書籍化も予定されています。

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ご支援のお願い

「歴史家ワークショップ」は卓越した研究者を輩出し、世界最高水準の研究成果を広く社会に還元することを目標に、事業の組織化と拡充を進めています。日本の歴史研究を活性化させ、その知見に基づいた未来社会像の構築を加速させる諸活動は、東京大学の重要なパブリック・エンゲージメントです。当事業の継続とさらなる発展のために、この度「歴史家ワークショップ支援基金」を設立し、皆さまからのご支援をお願いすることとしました。当基金を通じていただくご支援は大学発の社会貢献事業に活かされ、より良い未来社会の構築につながるでしょう。皆さまの温かなご理解・ご協力、そしてご支援を心よりお願い申し上げます。

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スキル・ワークショップ「歴史地図を描く」を開催しました

2021年09月14日(火)


歴史家ワークショップYouTubeチャンネルはこちら


歴史家ワークショップへのご支援をありがとうございます。2021年7月27日(火)に開催され、好評を博したスキル・ワークショップ「歴史地図を描く」の開催報告および録画動画をご覧いただけます。
 

開催報告はこちら

講師の衣笠太郎先生がお話される様子
企画・司会進行の吉田瞳さんがお話しされる様子

白地図に境界線を書き込む様子1

拡大した白地図にマウスで境界線を丁寧に描いていきます…

白地図に境界線を書き込む様子2

「液タブ」だと描線も少し楽だそうです

歴史家ワークショップは高度な学問的訓練を持続可能な形で行うため、所属機関や専門分野を超えたコミュニティ形成とスキル共有のための若手研究者自身による企画を支援しています。京都大学博士課程に在籍する大学院生の企画・司会進行による上記イベントは、学生や研究者だけでなく出版編集者や高校教員など幅広い参加者約100名を集め、悩める人々の地図作成スキル向上に寄与しました。

*同じ企画者による「配信時代のアウトリーチ」(9月25日(土)21:00~23:00)では、YouTubeやSNSを駆使して研究成果の発信を行う気鋭の歴史家2名(藤村シシンさん、ヒロ・ヒライさん)をお招きします。歴史家ワークショップ公式YouTubeチャンネルで生配信しますので、ぜひご覧ください。

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お名前 日付 金額 コメント
******** 2021年09月11日 5,000円 知の根幹は人文系にありますが、近年、東大の技術・工学重視、人文系軽視の傾向が顕著であり、大変憂慮しています。私自身は数学と法学を学んだ者ですが、数学は理系、法学は社会科学とするのは誤りであり、いずれも人文系と言うべきです。僅かな金額ではありますが、お力になりましたら幸いです。
<歴史家ワークショップ支援基金>
島村 光子 2021年07月30日 10,000円 とても良い事業だと思います。僅少ですが、若手研究者を応援する機会をいただき感謝しています。
<歴史家ワークショップ支援基金>
金城 亜紀 2021年07月06日 30,000円 若手歴史研究者が活躍できる社会の構築を願います。
<歴史家ワークショップ支援基金>
******** 2021年06月29日 10,000円 様々な研究成果を楽しいにしています。微力にて恐縮ですが支援させて頂きます。
<歴史家ワークショップ支援基金>
島田 仁 2021年06月26日 100,000円 戦後成長を最高の目標としてきた日本では、歴史は軽んじられ、きちんとした記録を残そうとしても上司から遊びは止めろと言われた。成長が止まって20年以上も経つのに、成長が最大の目標と考えるのが主流のように見える。その中で、歴史家養成プロジェクトが基金の中に出てきたのは本当に嬉しい。
<歴史家ワークショップ支援基金>
田村 正人 2021年06月26日 100,000円 私は法学部に進学しましたが、中高生のときは史学を強く志望していました。山本准教授のコメントを読み、当時のことを思い出しました。少しでも若い歴史家の助けになれば幸いです。
<歴史家ワークショップ支援基金>
******** 2021年06月20日 10,000円 ここから続々と面白い研究が出てきますように!
<歴史家ワークショップ支援基金>
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准教授
山本 浩司

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  • 歴史家ワークショップ主催の各種イベントをご案内いたします(原則としてメールでお知らせいたします)
  • 個人/企業の方々向けの限定イベントや研修プログラムを検討中です

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