我が国では科学や要素技術は高いレベルにありながら、世界に通用する革新的サービスの実装は充分とは言えません。
企業内における新規事業開発は手探りで行われており、高度な技術や科学技術の研究成果を社会課題と結び付けて事業化する方法論も、充分に開発・普及しているとは言えません。
本プロジェクトでは、「デフレーミング」と呼ばれる概念とフレームワークをもとに、情報技術が社会に与える本質的影響を踏まえた事業創造を行える人材の育成に取り組みます。ワークショップ型の講座等を通じて、具体的な事業構想を行える人材を育成します。
また、Web3(ブロックチェーン技術を用いた分散型の社会・サービスの仕組み)領域における人材育成にも取り組みます。東京大学情報学環ブロックチェーン研究イニシアティブとも連携し、人材育成、調査研究、イベントの開催等を行います。
デジタル・イノベーションを通じて、社会をより良くし、経済的にも持続可能な仕組みを作っていける人材の育成を行い、創造性豊かな社会の実現に向けて取り組んでいきます。
ぜひご支援を賜りますようお願い申し上げます。
東京大学 大学院 情報学環
教授 高木聡一郎
デジタル・イノベーション人材育成プロジェクトは、最先端のデジタル技術と実社会の課題解決の双方に精通したイノベーション(※)人材の育成に取り組みます。人工知能、プラットフォーム、Web3/ブロックチェーン等の先端技術への理解とともに、ビジネスや社会課題解決においてイノベーションを生み出すプロセスを理解し、実践することで意義のある成果を生み出すことができる人材の育成に取り組みます。
特に独自のフレームワークである「デフレーミング」を含むイノベーション・マネージメント領域の教育の推進、東京大学情報学環ブロックチェーン研究イニシアティブと連携した各種研究・発信活動、イノベーションに関する国際的な調査研究の推進を実施し、人材育成、情報発信、コミュニティの形成により成果を社会に還元します。
デフレーミングとは、フレーム(枠組み)が無くなるという意味の造語です。その定義を簡潔に示すと、『伝統的なサービスや組織の「枠組み」を越えて、内部要素を組み合わせたり、カスタマイズすることで、ユーザーのニーズに応えるサービスを提供すること』です。デフレーミングには以下の3つの要素があります。
第一が「分解と組み換え」で、従来の業界や事業の枠組みを超えて、その内部要素を分解し、柔軟に組み合わせ直すことです。例えば、送金とメッセージングを融合したアプリなどが挙げられます。
※ここでのイノベーションとは、革新的な製品やサービスの開発・提供を行うことで社会の課題を解決するとともに、収益を上げることで事業を持続可能にすることを指します。イノベーションを生み出すプロセスに関する研究領域をイノベーション・マネージメントと呼びます。
第二の要素は「個別最適化」です。これは、画一的なものを大量に生産して販売するのではなく、ユーザーによって細かくカスタマイズしながら届けることです。様々なウェブサイトで導入されているパーソナライゼーションの機能が挙げられます。ビッグデータとAIの時代になったことで、膨大なユーザーのニーズを形式知化し、オーダーメイドのサービスへとつなげることが容易になりました。
そして第三の要素が「個人化」です。これは、企業に所属し、専属的に働くだけでなく、フリーランスやクラウドソーシングなど、個人として働く場面が増えてきていることを指します。国内外でフリーランサーやクラウドワーカーの増加という形で広がりが見られますが、YouTuberやインスタグラム等で活動するインフルエンサーといった働き方も出てきています。Web3/ブロックチェーンを用いたサービスも、アルゴリズムとネットワークを活用した個人の連携により実現されるという点では、「個人化」の一部となります。「個人化」は、デジタル化がもたらす組織運営や働き方に関する変革です。
以上の3つの要素は、いずれもデジタル化がもたらす「取引コストの削減」という共通の要因によってもたらされる変化です。
■講座の実施
「デフレーミング」に基づく事業創造に関するワークショップ型講座の開催等
■研究活動の推進
Web3、ブロックチェーン分野に関する調査研究を通じた人材育成
例)2024年2月にはスタンフォ―ド大学等と連携し「DAO UTokyo」カンファレンスを開催予定
■セミナー・シンポジウム等の開催
一般向けのデフレーミング、Web3分野のセミナー・シンポジウム開催等を通じて、学生や社会人向けにWeb3分野の最新動向の情報提供、また研究発表の機会を提供します。
未来を形作るデジタル・イノベーション人材を育て、
デジタル技術と社会課題の架け橋を築くため、
皆さまの温かいご支援をお願い申し上げます。
2024年03月08日(金)
〇Web3に関する国際的カンファレンスの開催
今期は、Web3/ブロックチェーン領域を中心に、国際的な研究連携が展開されました。2024 年2月6-7日には東京大学の福武ホールにて東京大学情報学環ブロックチェーン研究イニシアティブ、Stanford Cyber Policy Center、Decentralization Research Center(分散型研究センター)が共同で「DAO UTokyo 2024」カンファレンスを開催いたしました。DAO(Decentralized Autonomous Organization)とは、分散型自律組織といい、従来の株式会社のような組織とは異なり、Web3 やブロックチェーン技術などを活用して、分散型で業務を実行したり、参加メンバーの投票により意思決定するような新しい組織形態です。「DAO UTokyo」は、アジア太平洋地域の研究者、政策立案者、実践家らが一堂に集まり、DAO およびWeb3 空間に関する研究、法的観点、政策について議論する招待制のカンファレンスです。ハーバード大学で開催された「DAO Harvard」などに続くカンファレンスで、日本、アメリカ、韓国、台湾などから多岐にわたる参加者 70 人近くが集まり、スタートアップの起業家、研究者、Ethereum Foundation(イーサリアム財団)のメンバー、ソウル大学、スタンフォード大学、政策関係者など多様なバックグラウンドの人々とつながる貴重な機会となりました。
イベントの概要としては、
① Day 1 はポリシーフォーカスで、アジア太平洋地域でのWeb3 ポリシーの取り組み、成功事例、課題についてのライトニングトークやパネルディスカッションが行われました。
② Day 2 は研究フォーカスで、協同組合、オープンソースコミュニティ、DAO などが公正な所有権を実現する役割や、それらが直面している法的障壁等についてのライトニングトークやパネルディスカッションが行われました。非DAO Web3 研究に関するトークもありました。
本カンファレンスで、プロジェクト設置責任者の高木教授が「DAO Development」をテーマに講演しました。
DAO はビットコイン誕生当初から存在する概念であるものの、普及に伴って変遷を遂げてきたことが紹介されました。原型であるDAO1.0、分散型金融などの分野で複雑化してきたDAO2.0 に対して、DAO3.0 は投票権にフォーカスしたもので、広く普及しつつあるものの技術的には必ずしも先進的なものではないことが示されました。
リアルブレークアウトルームでは、5 人一組くらいでテーブルに分かれ、フリートークも行われ、貴重な情報交換や連携の機会になったと考えられます。カンファレンスを通じて学生や社会人向けにWeb3 分野の最新動向の情報提供、また研究発表の機会が提供されました。
今回のカンファレンスで、世界のWeb3 やDAO に関する専門家が集まり、対話を行う場を作ることが重要であり、東京大学がそのような場として期待されていることがわかったと高木教授は述べています。
今後もデフレーミング、Web3 分野のシンポジウム開催を通じて、社会をより良くし、経済的にも持続可能な仕組を作っていける人材の育成を行い、創造性豊かな社会の実現に向けて取り組んでいけるように皆様のご支援をお願いいたします。ぜひご支援を賜りますようお願い申し上げます。
DAO UTokyo 2024 Conference について詳しくはこちらをご覧ください。
また、当日の詳細なレポートはこちらでも公開されています。(ハッシュド・オープンリサーチのウェブサイト)
〇各種カンファレンス等での発信、登壇
2023年11月28日に丸ビルホールで開催された大丸有まちづくり協議会が主催するシンポジウム「FACE2023対面すれば、生まれる未来。」に高木教授が登壇しました。
大丸有は大手町・丸の内・有楽町の略で、日本を代表するビジネス街を舞台に、どうすれば創造性豊かな都市を作れるのかをテーマに開催されました。
【イベント概要】(イベントウェブサイトより抜粋引用)
UX: アーバントランスフォーメーションへの挑戦-ポストシリコンバレーの行方-
いつの時代でも求心力を持続している都市は、常に新たな価値を創造しながら独自の発展を続けています。
その発展のためには、機能性、環境性、強靭性を基軸としたハード中心の成長ではなく、ハードという都市基盤の上で、活発な交流や活動から新たな産業を生み出すようなソフト中心の都市創造が必須なことは自明です。
とりわけ価値創造の源泉となる「人」を中心に据えた都市変容(アーバントランスフォーメーション)の実現は、ここ大丸有にとどまらず、都市に競争力をもたらすまちづくりの中心テーマとなり得ると考えられます。
【高木教授のビジョンと提言】
高木教授が第一部のパネルディスカッション「ポストシリコンバレー/クリエイティブシティの現状と今後」に登壇しました。今後の都市のあり方を高木教授が提唱する「デフレーミング」に基づき概念化し、都市やスマートシティの第一人者の著者と共同執筆した『インターネット・オブ・プレイス 「都市」の新しい拡張』(東大出版会)の概要を紹介し、都市が創造性を育むための論点を提示しました。特に、「挑発的な刺激」を得られる場や仕組みづくり、個人だけではなくチームとしての創造性を高めるための場づくりの重要性を強調し、その一例として、慶應丸の内シティキャンパスで実施しているデフレーミングに基づく事業創造ワークショップなどを紹介しました。
イノベーションを生み出す環境として、クリエイティブシティの研究にも取り組んでいます。
大丸有まちづくり協議会シンポジウムの動画もぜひご覧ください。
また、2月22日には東京大学とソニーグループの越境的未来協創社会連携講座(通称:Creative Futurists Initiative)のキックオフシンポジウムが行われ、高木教授が関連活動としてデフレーミングに基づく事業創造の経験を紹介し、越境的な知見の交流の重要性とその際に有効な成果を生むための仕組みの重要性について講演しました。
今後、この社会連携講座とも連携して、デフレーミングに基づくイノベーション/事業創造の取り組みも行っていきます。
東京大学×ソニーグループ 越境的未来協創社会連携講座の詳細やシンポジウムの模様はこちらからご覧ください。
〇デフレーミングを用いたイノベーション/事業創造に関する教育活動
その他に、東京大学の学生向けに授業内でデフレーミングのワークショップを実施するなど、学生向けの教育活動も開始しています。
また、タイのスリパトゥム(Sripatum)大学・Graduate School of Management(大学院経営学研究科)にてデフレーミングに基づく事業創造ワークショップを全編英語で実施しました。タイにおけるデフレーミングに基づくイノベーションの事例と可能性について、現地の教員・大学院生の皆さんと議論を行いました。デフレーミングに基づく事業創造の国際的な展開についても取り組んでいます。
2024年02月13日(火)
2024 年2月6-7日に東京大学の福武ホールにて東京大学情報学環ブロックチェーン研究イニシアティブ、Stanford Cyber Policy Center、Decentralization Research Center(分散型研究センター)が共同で「DAO UTokyo 2024」カンファレンスを開催いたしました。DAO(Decentralized Autonomous Organization)とは、分散型自律組織といい、従来の株式会社のような組織とは異なり、Web3 やブロックチェーン技術などを活用して、分散型で業務を実行したり、参加メンバーの投票により意思決定するような新しい組織形態です。「DAO UTokyo」は、アジア太平洋地域の研究者、政策立案者、実践家らが一堂に集まり、DAO およびWeb3 空間に関する研究、法的観点、政策について議論する招待制のカンファレンスです。ハーバード大学で開催された「DAO Harvard」などに続くカンファレンスで、日本、アメリカ、韓国、台湾などから多岐にわたる参加者 70 人近くが集まり、スタートアップの起業家、研究者、Ethereum Foundation(イーサリアム財団)のメンバー、ソウル大学、スタンフォード大学、政策関係者など多様なバックグラウンドの人々とつながる貴重な機会となりました。
イベントの概要としては、
① Day 1 はポリシーフォーカスで、アジア太平洋地域でのWeb3 ポリシーの取り組み、成功事例、課題についてのライトニングトークやパネルディスカッションが行われました。
② Day 2 は研究フォーカスで、協同組合、オープンソースコミュニティ、DAO などが公正な所有権を実現する役割や、それらが直面している法的障壁等についてのライトニングトークやパネルディスカッションが行われました。非DAO Web3 研究に関するトークもありました。
高木先生が「DAO Development」をテーマに講演しました。
DAO はビットコイン誕生当初から存在する概念であるものの、普及に伴って変遷を遂げてきたことが紹介されました。原型であるDAO1.0、分散型金融などの分野で複雑化してきたDAO2.0 に対して、DAO3.0 は投票権にフォーカスしたもので、広く普及しつつあるものの技術的には必ずしも先進的なものではないことが示されました。
リアルブレークアウトルームでは、5 人一組くらいでテーブルに分かれ、フリートークも行われ、貴重な情報交換や連携の機会になったと考えられます。カンファレンスを通じて学生や社会人向けにWeb3 分野の最新動向の情報提供、また研究発表の機会が提供されました。
今回のカンファレンスで、世界のWeb3 やDAO に関する専門家が集まり、対話を行う場を作ることが重要であり、東京大学がそのような場として期待されていることがわかったと高木先生が述べていました。
今後もデフレーミング、Web3 分野のシンポジウム開催を通じて、社会をより良くし、経済的にも持続可能な仕組を作っていける人材の育成を行い、創造性豊かな社会の実現に向けて取り組んでいけるように皆様のご支援をお願いいたします。ぜひご支援を賜りますようお願い申し上げます。
DAO UTokyo 2024 Conference について詳しくはこちらをご覧ください。
2023年12月21日(木)
2023年11月28日に丸ビルホールで開催された大丸有まちづくり協議会が主催するシンポジウム「FACE2023対面すれば、生まれる未来。」に高木先生が登壇しました。
大丸有は大手町・丸の内・有楽町の略で、日本を代表するビジネス街を舞台に、どうすれば創造性豊かな都市を作れるのかをテーマに開催されました。
【イベント概要】(イベントウェブサイトより抜粋引用)
UX: アーバントランスフォーメーションへの挑戦-ポストシリコンバレーの行方-
いつの時代でも求心力を持続している都市は、常に新たな価値を創造しながら独自の発展を続けています。
その発展のためには、機能性、環境性、強靭性を基軸としたハード中心の成長ではなく、ハードという都市基盤の上で、活発な交流や活動から新たな産業を生み出すようなソフト中心の都市創造が必須なことは自明です。
とりわけ価値創造の源泉となる「人」を中心に据えた都市変容(アーバントランスフォーメーション)の実現は、ここ大丸有にとどまらず、都市に競争力をもたらすまちづくりの中心テーマとなり得ると考えられます。
【高木先生のビジョンと提言】
高木先生が第一部のパネルディスカッション「ポストシリコンバレー/クリエイティブシティの現状と今後」に登壇しました。今後の都市のあり方を高木先生が提唱する「デフレーミング」に基づき概念化し、都市やスマートシティの第一人者の著者と共同執筆した『インターネット・オブ・プレイス 「都市」の新しい拡張』(東大出版会)の概要を紹介し、都市が創造性を育むための論点を提示しました。特に、「挑発的な刺激」を得られる場や仕組みづくり、個人だけではなくチームとしての創造性を高めるための場づくりの重要性を強調し、その一例として、慶應丸の内シティキャンパスで実施しているデフレーミングに基づく事業創造ワークショップなどを紹介しました。
イノベーションを生み出す環境として、クリエイティブシティの研究にも取り組んでいます。
大丸有まちづくり協議会シンポジウムの動画もぜひご覧ください。
未来の都市創造に共に挑戦し、成果を築くために、
皆さまの温かいご支援をお願い申し上げます。
担当チーム
akira kadota
<デジタル・イノベーション人材育成プロジェクト>
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