※2019年4月1日をもちまして、政策ビジョン研究センター(PARI)は未来ビジョン研究センター(IFI)に組織統合いたしました。以下は(旧)政策ビジョン研究センター(PARI)の内容です。
現代では、社会で発生する諸問題を解決するために、最先端の研究成果を活用した政策の形成が求められています。東京大学の知的リソースを提供し、政策の選択肢を提示するために総長室の下に、シンクタンク機能を果たす政策ビジョン研究センター(Policy Alternatives Research Institute)を設置しました。
政策ビジョン研究センターは、東京大学の中に設けられたシンクタンク、政策発信を行う機関です。何をするところなのか、大学のほかの機関とどのように異なるのか、申し上げたいと思います。
大学の第一の役割は研究です。これまでの研究を塗り替える卓越した学術研究があってこそ大学という組織の存在意義があることは申し上げるまでもないでしょう。そして学術研究の第一の受け手は、研究者。これまでの研究とどう違うのか、どこが新たな貢献になるのかを最初に理解し共有するのがその分野の研究者である以上、当然のことでしょう。
ただ、研究者の外の世界に新たな学術貢献がどう関わるのかについては、研究者の関心は薄く、極端に言えば二次的な目的に過ぎないといってもいいくらいです。そして、学術研究を研究者のみによって展開する場合、そこから生まれた成果が研究者の世界に留まり、ひろく社会と共有する機会を失ってしまう可能性があります。
研究と並ぶ大学の役割が教育です。新しい世代が新たな研究を展開するために最新の研究成果を新しい世代に伝える必要があることは明らかでしょう。もちろん研究者の養成ばかりではありません。大学教育によって習得した学術研究の成果が、卒業生によって社会に活かされてゆく。教育は、大学と社会との間につくられた最も重要な回路です。
とはいえ、教育だけが大学と社会の回路であってよいとはいえません。大学を卒業してから十年、二十年と過ぎれば、キャンパスで教わった知識も古くなってしまいます。ここに、学部・大学院の教育のほかにも、大学と社会を結びつける必要が生まれます。
このように、研究と教育を主な任務とする大学ですが、それだけでは社会との結びつきを十分に果たすことができない。そこで政策ビジョン研究センターは、学術研究を社会に活かしてゆくために、大学と社会を結ぶ新たな回路として生まれました。いわばシンクタンクですが、社会に広く見られるシンクタンクとは異なって、政策構想の基礎に、大学で蓄積された学術研究、その先端的な知がある。そのままなら研究者だけの間で共有され、消費されてしまう研究成果を、政策発信という形によって社会に結びつけてゆくわけです。
ここで注意しなければならないのは、研究の社会的意義、レレバンスです。学術研究の世界ではそれまでにない発見を行うことがそのまま研究にレレバンスを与えますが、新しい発見が社会にとって持つ意味があるとは限りません。何が求められているのか、どのような問い、そしてどのような答えが期待されているか、そのような研究のレレバンスは研究そのものではなく、その成果の受け手との間の相互作用によって生まれることになる。単に成果をより広い世界に披露するだけでは社会への発信になりません。研究者のつくる世界の外に視点を置いて、何が成果として意味があるのかを捉える必要があります。
その焦点は、これまでにない選択を示すことでしょう。このセンターの名称は日本語では政策ビジョン、英語ではPolicy Alternatives。つまりこれまでに見られる選択とは異なる視点と選択を提供することが目的です。発足から十年を迎えるのを機会に、このセンターが目指す目的を改めて確かめながら進んでゆきたいと思います。
これほど大きな課題を一つのセンターで実現することはできません。学術知識を活かした課題解決への貢献、社会への新たな政策の発信、さらに課題解決を先導する人材育成の必要性を感じておられる教員、これらすべての方にご支援をいただくことではじめて私たちの抱える課題に答えることができます。さらに、経済的な基盤も必要となります。本センターのこのような活動に関心を持たれている方々からの一層のご支援、ご協力を期待しております。
センター長 藤原 帰一
2021年02月09日(火)
主な活動
未来ビジョン研究センターは2019年4月に政策ビジョン研究センター(PARI)と国際高等研究所サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)の両部局が発展的に統合する形で設置されたセンターです。東京大学の持続可能な開発目標(SDGs)に向けた取り組みの枠組みである未来社会協創推進本部(Future Society Initiative, FSI)の中核的組織として位置付けられています。
持続可能な未来社会を創造するために、未来社会の諸課題に関する政策・社会提言ならびにそのための社会連携研究を行い、また未来社会に関連する大学の知見を統合する国際ネットワーク・ハブおよび産官学民との協創のプラットフォームとしての役割を果たし、研究に基づいた未来社会を実現する選択を示すとともに、それを担う人材の育成にも貢献します。
現在、分野横断型の7つの研究部門、「SDGs研究」「サステイナビリティ学研究」「イノベーション研究」「技術・リスクガバナンス研究」「安全保障研究」「大学と社会システム研究」「共同研究・寄付研究」で研究を進めています。
2020年8月には、SDGs研究部門にグローバル・コモンズ・センター(Center for Global Commons: CGC)を新設し、グローバル・コモンズ・スチュワードシップ指標(GCSi)のプロトタイプ版レポートを発表しました。このレポートは国連SDSNとイェール大学、そしてグローバル・コモンズ・センターによって作成され、12月4日の東京フォーラムオンライン2020でのパネルディスカッションでも概要を発表し、話題となりました。 政策提言は、「新型コロナ感染症とデータガバナンスに関する施策」や、「AIサービスのリスク低減を検討するリスクチェーンモデルの提案」ほか、喫緊の課題への提案も発表しています。
ご寄付の使途
いただいたご寄付は現時点では、貴重な財源として未使用で積み立てており、当センター内部の若手研究者を助成する制度(内部助成)での活用など、慎重に検討のうえ活用させていただく予定です。
皆さまのご支援に厚く御礼申し上げます。
引き続き活動へのご理解・ご支援のほどよろしくお願いいたします。
2020年03月13日(金)
未来ビジョン研究センターは2019年4月に政策ビジョン研究センターと(PARI)と国際高等研究所サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)の両部局が発展的に統合する形で設置されました。東京大学の持続可能な開発目標(SDGs)に向けた取り組みの枠組みである未来社会協創推進本部(Future Society Initiative, FSI)の中核的組織として位置付けられています。持続可能な未来社会を創造するために、未来社会の諸課題に関する政策・社会提言ならびにそのための社会連携研究を行い、また未来社会に関連する大学の知見を統合する国際ネットワーク・ハブおよび産官学民との協創のプラットフォームとしての役割を果たし、研究に基づいた未来社会を実現する選択を示すとともに、それを担う人材の育成にも貢献することを目指しています。
設立後、初の政策提言として「日本企業における内部監査機能の強化に向けた政策提言」を発表しました。特に、2019年10月4日に開催した2018年ノーベル平和賞デニ・ムクウェゲ医師来日講演会 「平和・正義の実現と女性の人権」は、学内だけではなくメディアなど外部でも大きな話題となりました。詳細は https://ifi.u-tokyo.ac.jp/event/4437/ をご覧ください。
また、沖大幹教授を含む研究グループ(国立研究開発法人国立環境研究所など複数組織のメンバーを含む)が9月25日のNature Climate Change volume 9に発表した”Dependence of economic impacts of climate change on anthropogenically directed pathways”(プレスリリースタイトル:複数分野にわたる世界全体での地球温暖化による経済的被害を推計-温室効果ガス排出削減と社会状況の改善は被害軽減に有効-)など、SDGsに関するテーマの論文発表も行いました。詳細は https://ifi.u-tokyo.ac.jp/news/4740/ をご覧ください。
<政策ビジョン研究センター>