量子コンピューターの理論を米国の物理学者リチャード・ファインマン博士が1980年頃に提唱したときは、実現までに100年かかると言われていましたが、最近にわかに社会実装されようとしています。しかし、今、話題になっている「量子コンピューター」はまだまだ限られた計算(処理)しかできない、量子を安定させるために絶対零度(マイナス273度)近くまで冷やして使う必要がある、装置が巨大である、誤り訂正がされていない等々、様々な課題が残っています。
古澤研究室では、光の粒子(光子)を使った光量子コンピューターの研究を続けています。ループした光回路を使うことにより小型化し、常温でも安定した量子もつれを大量に発生させることにより誤り訂正も行うことができる汎用量子コンピューターの社会実装を目指しています。10年先か20年先か・・・あるいはその過程で素晴らしい発見があり数年で実現するか、まだまだ未知数です。
たとえば、インターネットが発明されて普及する前に、インターネットがここまでわたしたちの生活を変えると予測できたでしょうか?現在のスーパーコンピューターでさえ不可能なことを光量子コンピューターで一緒に実現しましょう。
「量子」には「重ね合わせ」や「もつれ」など、私たちの日常生活からはなかなかイメージできない不思議な特性があり、この分野に関心がない方々には敬遠されがちです。しかし、私たちの日常生活はすべて「量子」から成り立っています。
この機会にぜひご支援をお願い申し上げます。
東京大学大学院工学系研究科 物理工学専攻
教授 古澤 明
【皆様のご寄付が研究を加速させます】
500以上の高性能な鏡やレンズで構成される古澤研究室の実験機
↓
大量のミラー等を光ファイバーで置き換えることを目指しています
・研究者の招聘
海外で活躍する研究者との情報交換
【現代社会が直面する課題】
今や誰もが一日中インターネットにつながったパソコンやスマホで仕事をして、FacebookやX (Twitter)などのSNSを楽しみ、ネットショップで買い物をしています。そして、日々の報道では、「AI」「IoT」「ビッグデータ」という言葉を見ない日はなく、スーパーコンピューターの活用が謳われています。しかし、現在のインターネットやコンピューターは莫大な電力消費を伴い、スパコン1台を稼働させるのに原発1基が必要とさえ言われています。またコンピューターの性能や光通信の通信容量は限界に迫っています。デジタル化社会がこのままのペースで成長を続けることは明らかに不可能です。いずれインターネットの容量やコンピューターの計算能力や電力供給が限界に達し、AIやIoTによる革新も絵に描いた餅になってしまいます。
次世代の情報処理技術として、量子情報処理、つまり「量子コンピューター」の実用化が唯一の解決策と考えられています。従来のコンピューターの1ビットは「0」か「1」であったのに対し、量子コンピューターの1量子ビットは「重ね合わせ」という量子の不思議な特性を利用して、同時に「0」と「1」の重ねあった状態を認識することができ、この量子ビット数を増やすことにより、爆発的に処理能力を高めることができます。(コラム1) (コラム2)
量子コンピューターは1980年代から提唱され、様々な方式で開発されてきましたが、いまだに小規模な情報処理や限られた分野に特化した処理に留まっています。
【古澤研究室の光量子コンピューターの特徴】
古澤研究室は量子テレポーテーションを用いた画期的な「光量子コンピューター」の実現方法を発明しました。それまでは10量子ビット程度が限界だったのに対して、事実上無限の量子ビットを使って計算をさせることが可能となり、大規模な汎用量子コンピューターが実現できるようになります。
光の粒子(光子)を使う光量子コンピューターは、ループした光回路を用いることで、量子テレポーテーションを使った演算(簡単にいうと「加減乗除」)を無限に続けることができます。量子テレポーテーションとは、「量子もつれ(エンタングルメント)」という量子の不思議な特性を利用して、もつれ状態にある光子どうしの、ひとつに情報をインプットすると瞬時に他の光子も全く同じ情報が伝わるという特性です。(コラム3)
既存の通信ネットワークは「光」により行われています。光量子コンピューターは光ネットワークとの親和性が非常に高いという利点があります。情報処理をそのまま光で行えるようになれば、既存の光通信網を活用して、高速且つ省エネを実現した次世代大容量光通信技術が生まれ、増え続ける情報通信量に対応することも期待されています。(コラム4)
量子もつれ生成のイメージ動画
【今後の課題】
いかなるコンピューターでも、導き出す回答に間違いがあってはなりません。量子コンピューターの課題は、量子テレポーテーション時に発生する量子状態・量子情報に関する誤りをいかに訂正するかです。実は現在のコンピューターでも、誤り訂正が行われています。光量子コンピューターでも、誤り訂正が完全になると、いよいよ光量子コンピューターが実用化され、成長し続けるIT社会をあらゆる面から支えることになります。(コラム5)
【ご寄付のお願い】
非常にユニークな古澤研究室の光量子コンピューターは様々な分野で社会を救い、駆動することが期待されています。
社会に大きな変革をもたらす光量子コンピューターの研究は、政府や大企業から拠出される研究費だけではなく、広く一般の人々からも「All Japan」で支えていただく必要があります。また、研究の性格上、長期的且つ継続的なご支援が必要です。
光量子コンピューターが実装される社会が一日も早く到来するように、研究を加速させる皆様の力強いご支援をお願い申し上げます。(コラム6)
※毎月、年2回、毎年のご支援(決済方法、お申し込みの変更・停止等)についてはこちらよりご確認いただけます。
※下のボタンよりお申し込み画面にお進みいただきますと、初期設定で「毎月支援する」が選択されています。
コンピューターは「0か1か」のみを判別して様々な計算をしているとよく言われます。0というひとつの情報、あるいは1というひとつの情報を1ビットと呼びます。0あるいは1が計8桁あると8ビットとなります。8ビットは1バイトという単位になります。
2ビットですと4通りの情報を表すことができます。
00 … 1
01 … 2
10 … 3
11 … 4通り
4ビットですと16通り。
0000 … 1
0001 … 2
0010 … 3
0100 … 4
1000 … 5
1001 … 6
↓
1111 … 16通り
8ビットですと、256通りの情報を表すことができます。
00000000 … 1
00000001 … 2
00000010 … 3
00000100 … 4
↓
11111111 … 256通り
今までのコンピューター(量子コンピューターに対して古典コンピューターと呼ばれています)では、一度に表すことができるのは、たとえ何通りあってもその組み合わせのうち1つだけです。
量子コンピューターの単位は量子ビットと呼びます。量子ビットは「重ね合わせ」という量子の不思議な特性を使って、0か1かどちらかではなく、0と1の重ね合った状態を表すことができます。
つまり、古典コンピューターは、8ビットの場合、256通りのうち1つの情報しか表せないのに対して、量子コンピューターの8ビットは256通りの情報を同時に表すことができるのです。
この特性によって、量子コンピューターは古典コンピューターとは比べものにならない大量の情報を処理することができるのです。
量子の世界では不思議な現象が起きています。そのひとつがコラム1で述べた「重ね合わせ」といわれる特性で、量子は同時に、たとえばXの状態でもありYの状態でもあり得るということです。それを観測しようとするとその瞬間どちらかに決まってしまいます(収束する)。
量子がXの状態かYの状態かに収束するのはルーレットやサイコロのように偶然であり確率的にしか予測できないという考え方は主にコペンハーゲンで活躍した学者が提唱したので、コペンハーゲン解釈と呼ばれています。しかし、アインシュタインは「神はサイコロ遊びなんかしない」と言って、この解釈に反対していました。
この「重ね合わせ」の不思議を説明しようとしたのが「シュレディンガーのネコ」といわれる頭の中で想定した実験(思考実験)です。20世紀前半に活躍したオーストリア出身の物理学者、エルヴィン・シュレディンガーが提起しました。
箱の中に、1時間後に50%の確率で分裂する放射性物質を1粒(量子)、分裂したかどうかを計測する機械、分裂が計測されたら致死性の毒ガスが出る装置、そして1匹のネコを入れる。さて、1時間後にネコは生きているか死んでいるか?
放射能物質の分裂する可能性が50%なので、ネコが死んでいるあるいは生きている可能性はそれぞれ50%のはず。箱を開けて確認するまでネコは生きているか、死んでいるかわからない。つまり、生きている状態でもあり、死んでいる状態でもある(生と死が重ね合っている)と考えられます。
実際には日々の生活のなかで、目に見える大きさのレベルで、ネコが生きていて且つ死んでいる状態というのはあり得ませんが、量子レベルではそのような不思議な状態があるということです。
テレポーテーションといえばSF小説などに出てくるような瞬間移動を思い浮かべられることでしょう。しかし、ここでいうテレポーテーションとは、人間がA地点からB地点に瞬間移動することではありません。
量子には「もつれ」という不思議な特性があります。もつれ状態にあるふたつの量子はどれだけ離れていても同期します。つまり、量子Aを測定すると、離れた場所にある量子Bに瞬時にその影響が伝わります。AとBが双子のように振る舞うので量子もつれペアと表現されています。この現象を「幽霊のようで気味が悪い(spooky)」とアインシュタインは言い、このような量子もつれペアが存在してしまうのは、このようなことを許してしまう量子力学が不完全だからだと言いました。これに対しデンマークのニールス・ボーアは、情報伝達のスピードは光速を超えないという相対性理論を用いて、量子力学は不完全ではないと反論しました。つまり、このようなことは物理的に「あり」だと証明しました。ただ、この議論の発端となったアインシュタインらの論文にちなんで、この量子もつれペアをアインシュタイン・ポドルスキー・ローゼンペアあるいはEPRペアと呼ぶようになりました。
その後、1970年代以降、量子もつれは実際に存在することが証明されるようになりました。量子コンピューターは量子もつれ状態にある量子Aへの操作の影響が量子Bにも現れることにより、計算を行っています。ここで、量子もつれペアつまりEPRペアによって行われる最も簡単な操作は、量子テレポーテーションと呼ばれる、入力と同じものが出力される操作です。よって「量子テレポーテーション=最も簡単な量子コンピューター」といえます。複雑な量子計算はこの量子テレポーテーション装置を少し変えることで実現できます。
1. 条件なしの量子テレポーテーション実験に世界で初めて成功
量子テレポーテーション=量子コンピューターと言っていいほど、量子コンピューターの実現に不可欠な量子テレポーテーションは、不確定性原理では不可能と思われていたことを行っています。不確定性原理とは、ひとつの量子について、位置と運動量の情報を同時に得ることはできないということです。なぜなら位置と運動量のうちひとつの情報を測定した瞬間、量子の状態が変わってしまうからです。よって、量子テレポーテーションは条件付きでしか実現できていませんでした。
古澤教授は、1998年、世界で初めて「条件なしの完全な量子テレポーテーション」に成功しました。この成果は世界で認められ、1998年の「『Science』誌が選ぶ1998年の10大成果」に選ばれました。
2. 2004年、3者間の量子もつれを生成し、量子テレポーテーションネットワーク実験に世界で初めて成功しました。2者間の量子もつれでは、AとBがもつれているか否かの2択しかありません。しかし、3者間では横に並んだ状態の場合ですと、隣どうしのAとB、BとCがもつれた状態になることができます。AとBとCが環状に並んでいる場合、AとB、BとC、AとCがもつれた状態になることができます。さらに、AとBとCが隣どうしではもつれていなくても3つの量子でもつれている状態になることもできます。2009年には3つでもつれた状態をさらに3つもつれさせて9者間もつれのテレポーテーションに成功しました。複雑で大規模な計算を可能にするには、このような複数の量子もつれを大量に生成する必要があり、2者間 ⇒ 3者間 ⇒ 9者間のステップアップは量子コンピューター実現に大きな意味があります。
3. シュレディンガーのネコ状態の量子テレポーテーションに世界で初めて成功
シュレディンガーのネコはEPRペアと並んで、量子力学黎明期の2大パラドックス・思考実験であり、その量子テレポーテーションはそれらを同時に一台の実験装置でリアルに実験を行ったことは歴史的快挙でした。
4. 2011年、従来比100倍以上の効率(61%の成功率)で量子テレポーテーションに成功
従来非常に低い効率でしか成功していなかった量子テレポーテーションを61%の効率で成功させました。50%の効率を超えると量子誤り訂正により完全な量子テレポーテーションが可能になるため、極めて画期的な成果でした。
5. 2013年、ループ構造の光回路のなかで、時間的遅延を発生させ、前後の量子を再びもつれさせる「時間領域多重」という手法を使って、従来比1000倍以上の規模で量子もつれの生成に成功しました。それまでは、光の量子(光子)を平面的に並べていたので大きなスペースを必要としましたが、ループ構造の回路内に光子を走らせることにより限られたスペースでも大規模量子もつれを発生させることが可能になりました。
6. ループ構造をもつ光の回路によるほぼ無限の量子テレポーテーション
1つの量子テレポーテーション装置を繰り返し使うことにより、無制限に量子計算を続けられる方法を発明しました。
7. 2016年、1万倍規模
世界の開発状況を俯瞰すると、50量子ビットや100量子ビット規模の量子コンピューターは実現に近づいていると言われていますが、古澤研究室では、100万量子ビット規模の量子もつれ生成に成功しました。これにより、大型量子コンピューター実現が大きく近づきました。
8. 光通信との親和性(シャノン限界の克服)
光通信の通信容量は古典物理学的限界値であるシャノン限界に近づいています。この限界は光の中の個々の光子が独立に飛んでくることによるノイズ(ショットノイズ)により決まります。このノイズをキャンセルしシャノン限界を破った光通信も量子テレポーテーションの技術で実現できます。古澤研究室ではこの研究にも取り組んでいます。
コンピューターを名乗るからにはひとつの計算に特化するのではなく、様々な計算が大規模で可能な汎用性の高い性能が必要です。量子の重ね合わせを使う量子コンピューターの課題は、重ね合わせの状態が崩れてしまうこと(デコヒーレント)をいかに防ぎ、それが発生したときにいかに訂正するかです。訂正するためには、計算に使われる量子だけではなく、訂正のための量子が必要になり、非常に多数の量子ビットが量子もつれ状態になっている必要があります。
古澤研究室が研究しているのは汎用量子コンピューターです。つまり、どんな計算も可能なものです。世の中で「量子コンピューター」と言っても、ある特定の問題のみ解けるものが大半で、汎用量子コンピューターはそれほど多くはありません。さらに、通常のコンピューターでは誤り訂正を行い、間違った答えを出すことはあり得ませんが、現時点で世に出ている全ての量子コンピューターは誤り訂正をしておらず、大きさの大小はありますが、ある確率で間違った答えを出します。したがって、皆さんが思っているような誤った答えを出さない量子コンピューターは汎用、特殊用途用を問わず存在していません。古澤研究室は誤った答えを出さない、つまりエラーフリーの汎用量子コンピューターを研究しています。
2024年11月18日(月)
記者会見を2回開催しました
11月は1日と8日に、それぞれ「光量子状態の高速生成 ―光通信技術による光量子コンピュータの加速―」および「新方式の量子コンピュータを実現 -世界に先駆けて汎用型光量子計算プラットフォームが始動-」というタイトルで記者会見を開き研究成果を発表しました。
かなり専門的な内容になりますので、興味のある方は工学系研究科のプレスリリースをご覧いただければと思いますが、簡単に申し上げますと、11月1日は光量子コンピュータ実現のために必要なシュレディンガーの猫状態(本件においては、位相が反転したふたつのレーザー光が重ね合った状態)の生成レートを従来の手法より約1000倍向上させることに成功したことを発表しました。
8日は私がチームリーダーを務める理化学研究所で光量子コンピュータの実機の開発に成功し、部分的にクラウド公開されたことを発表しました。
工学系研究科プレスリリース
11月1日
光量子状態の高速生成 ―光通信技術による光量子コンピュータの加速―
https://www.t.u-tokyo.ac.jp/press/pr2024-11-01-002
11月8日
新方式の量子コンピュータを実現 -世界に先駆けて汎用型光量子計算プラットフォームが始動-
https://www.t.u-tokyo.ac.jp/press/pr2024-11-08-002
2024年09月27日(金)
寄付者の皆様には何度かお話していましたが、遂に9月2日付でOptQC株式会社を設立し、9月17日に記者会見を開きました。古澤研で博士号を取得し助教を務めた高瀬くんとワリットくんがそれぞれ代表取締役CEOと技術アドバイザーに、私が取締役に就任しました。
記者会見では高瀬くんとワリットくんから以下のような説明がありました。会社として実態のある活動が可能となる基本的な技術が出揃った、基礎研究から実機の開発・運用などアカデミアと会社の良い循環、光通信と光量子コンピューターの親和性、等々。私からは、長年にわたり日本の皆様からの税金やご寄付で研究してきた、日本の会社として大儲けして、日本に税金を納めることが恩返しと考えていると申し上げました。
引き続き、世界をリードする優秀な人材を育成し、アカデミアと社会の良い循環に貢献していきますので、皆様のご支援をお願い申し上げます。
OptQC株式会社のWebページはこちら
工学系研究科 物理工学専攻
教授 古澤 明
2024年06月25日(火)
オンラインの「MUGENLABO Magazine」で古澤研の高瀬助教が大きく取り上げられました。
高瀬助教は古澤教授が起業するスタートアップのCEOを務める予定です。光量子コンピューターの今とこれから目指すところが語られています。
ぜひご覧ください。
インタビュー記事はこちら↓
https://mugenlabo-magazine.kddi.com/list/furusawa/
2024年06月20日(木)
2024年3月15日に「光量子コンピューター研究支援基金」の寄付者+同伴者限定の感謝の集い(報告会)が工学6号館3階で開催されました。
恒例になりました古澤教授によるミニ講義では、1月18日の記者会見で発表した「世界で初めて、光パルスを用いたGKP量子ビットと呼ばれる論理量子ビットの生成に成功した」という高度に専門的な話から、実は一昨年スウェーデンロイヤルアカデミーに招かれて講演してディナーを共にしたという裏話まで、幅広く興味深いお話が飛び出しました。
今回の後半は実験機を見学したい人を古澤研の院生がご案内し、すでに見学したことがありもっと古澤教授の話を聴きたい人は教室に残るという2つのグループに分かれました。
寄付者の皆さんと古澤教授の質疑応答をいくつかご紹介します。
Q1:ライバルは?
A1:ライバルはいない
Q2:若者が身に付けておくべき資質や知識などは?
A2:知識よりもメンタルのほうが大事、実験に失敗してもメゲないような強いメンタル。根拠がなくてもいいので自信をもつこと。深く考え過ぎない、考えるほど真下に行ってしまう。スポーツに打ち込む、気分転換にもなる、eスポーツでも良い、古澤研では大画面でゲームをやっている。
Q3:私たち寄付者が仲間を増やすためにお話しする際の決め台詞は?
A3:エネルギー消費の点で光量子コンピューターが地球を救う。NVIDIAを駆逐する。
実験機見学グループが再合流したところで、古澤教授から、下記のお話と一緒に起業に続いて10月頃に実機をクラウド公開し、ニューラルネットワークを構築するという刺激的なお話がありました。
最後に、このたびの起業について、「長年にわたり日本の皆様の税金で研究をさせていただいてきた。米国シリコンバレーなどで起業するのではなく、日本で起業して、利益を出して日本に税金を納める。それが日本のためであり、日本への恩返しである。そして、日本を博士号を取ったら高給取りになる国にしたい」と力強く最後を締めくくって、記念写真撮影となりました。
(報告:東大基金事務局 担当)
2024年02月08日(木)
2023年は、ようやくコロナ禍による影響がほぼなくなり、待ちわびていた海外との交流を再開するとともに、これまで光量子コンピューターでは難しかった「かけ算」に成功したことで、世界初の「誤り耐性型大規模汎用光量子コンピューター」実現に王手をかけた記念すべき1年となりました。
海外の研究者との交流としては、まず2月にスウェーデン王立アカデミー、ストックホルム大学、スウェーデン王立工科大学、チャルマース工科大学で講演やワークショップを行い、4月には、本郷キャンパスの山上会館で、オーストラリア国立大学と交互開催しているUTokyo-ANUワークショップを行いました。
続く5月には、デンマークの「ニールス・ボーア研究所」から、私のカリフォルニア工科大学時代からの友人であるEugene Polzik教授がJan Thomsen所長らと一緒に見学に来てくれました。なお、この時の訪問の様子を聞いたデンマークのMette Frederiksen首相がいたく関心を抱かれ、10月の来日時に光量子コンピューター実験機の見学に来られたのには驚きました。
ウィンドサーフィンをしている写真と一緒に研究が全紙大で紹介された朝日新聞のGlobe紙をもっている私の左がPolzik教授で、右から二人目がThomsen所長
Frederiksen首相の来日時(10月)の研究室見学の様子。
左から 藤井総長、Frederiksen首相
6月には私が日本政府団の一員として、チェコのプラハ大学やパラツキー大学を訪問しました。世界で初めて「シュレディンガーのネコ状態」を証明した私の論文が2011年4月にScience誌に発表されたときに、パラツキー大学メダルという賞をいただいたことがあったので、現地では大いに歓迎されました。
海外との交流が活発化する中で、7月に英国のオンライン科学誌『Nature Communications』に発表したのが、光量子コンピューターの実現に不可欠な「かけ算」を可能にする技術です。「かけ算」を可能にする理論のアイディア発表から20年以上にわたり試行錯誤が続けられてきたのですが、今回の成功により、ようやく光量子コンピューターの完成に向けた最後のピースが揃いました。このように、今まさに、日本発のアイディアと技術による、世界で初めての「誤り耐性型大規模汎用光量子コンピューター」の実現が現実のものになろうとしているのです。
ここまでたどりつけたのも、ひとえに皆様からの力強いご支援のおかげです。心より御礼申し上げます。皆様からのご寄付より、学生等の海外派遣の渡航費や滞在費等に約470万円、UTokyo-ANUワークショップ開催に約330万円、レーザー冷却冷水装置の保守点検費用として約15万円を使わせていただきました。このように皆様のご寄付を活用させていただき、これからも研究に人材育成に励んでいきますので、引き続きのご支援をお願い申し上げます。
2023年01月12日(木)
2023年1月12日に寄付者の皆様に新年のご挨拶、活動報告をお送りしています。
こちらよりご覧ください。
2023年02月01日(水)
2022年は前年に続き、我々の光量子コンピューターの実現に大きく前進した1年でした。もっとも大きな成果は、2022年10月27日、NTTとの共同記者会見で発表しました「量子任意波形発生器」の技術を確立したことです。これにより、光量子コンピューターを大規模に稼働させるために必要不可欠で、特殊な波形をした光量子の生成が可能になりました。光量子コンピューターは量子もつれ状態にある量子ビットをできるだけ多く並べる必要があります。光量子の波形を整えることにより、効率的に並べることができ、また隣同士の干渉をなくして情報が壊れることを防ぎます。米国の科学誌「Science Advances」でも発表し、大いに注目されました。
「量子任意波形発生器」の技術確立と同じくらい重要なのが、実験波長帯をセシウム原子時計の波長から通信波長帯へ変更することに伴う実験装置の再構築です。約1000万円を活用させていただきました。この波長の変更は我々の研究において歴史的な転換点となっただけではなく、非常に大きな教育効果がありました。なぜなら、完成した大型の装置をひとつ購入したのではなく、学生や若手研究者が自由な発想で「必要なもの」を他の予算も合わせて大規模にあれこれ考えて購入したからです。「研究力」は実験に必要なものを自分で考え、選び、購入することで培われます。学生や若手研究者が自由に装置を構築することは非常に貴重な経験であり、ご寄付のおかげで良い人材育成ができました。
人材育成の点では、6月末に10日間、古澤研の高瀬寛助教が博士課程および修士課程そしてポスドクとパリを訪れ、ソルボンヌ大学で開催された「NonGauss Workshop 2022」に参加し、全員がポスターセッションで研究成果を発表してきました。ノンガウス光というのは、古典的な光とは大きく異なる性質をもっていて、量子コンピューターをはじめ、各種の次世代技術に不可欠です。また、College de FranceのAlexei Ourjoumtsev先生をはじめ3つの研究室を訪問し有意義なディスカッションをしてきました。参加した院生のコメントを紹介します。
「自分の普段の研究内容とは馴染みがないアプローチも多く紹介され、視野を広げるきっかけになりました。一方、自身の研究内容をポスター発表する際は、他の研究者との議論を通しあらためて自身の実験のユニークさを実感し、これからの研究を進める大きなモチベーションとなりました」
「ふたつの気づきがありました。ひとつは研究における直接対話や異分野の研究者との議論の重要性です。もうひとつは、古澤研のレベルの高さです。実験におけるアイディアの斬新さや幅の広さ、実験技術等、我々の方が優れていると感じました。日本ではまだ光量子情報処理の研究者が少ないので、このような気づきを海外で得られたのは大きな意味がありました」
長年の支援者様は、高瀬助教自身、2019年にご寄付でウィスコンシン大学に武者修行してきたことをご記憶かと思いますが、「久し振りの海外派遣となりました。今回は、修士1年生3人を含め、とくに若い院生に良い経験となりました。ご寄付のおかげで早い時期に海外経験を積めたことは、今後の研究者としてのキャリアに非常に良い影響を持つと思います」と述べています。その高瀬助教の論文が、4月にOPTICAが発行するOptics Express誌のEditor’s Pick(編集長のおすすめ記事)に選ばれました。OPTICAとは1916年に米国で設立された光学やフォトニクスに関する伝統ある学会(The Optical Society)が名称を変更したものです。
〔OPTICA誌から抜粋〕
“Our goal is to dramatically improve information processing by developing faster quantum computers that can perform any type of computation without errors,” said research team member Kan Takase from the University of Tokyo.
(「我々のゴールは、誤りなしでいかなる処理も可能な、より高速な量子コンピューターを開発することにより、情報処理を劇的に改善することです」と東京大学の高瀬寛研究員は述べています)
その他には6~7月にマインツ大学、8~10月にシンガポール国立大学で武者修行、8~9月にトロントで「Conference on Quantum Information and Quantum Control IX」での発表など、海外での研修や渡航費等に約380万円を活用させていただきました。
2021年の年次報告書でも予告していましたが、古澤研の入る工学部6号館の冷却装置のリニューアルが完了し、約1900万円を活用させていただきました。古澤研のみならず、物理工学専攻で日頃より協力し合っている他の研究室にも大いに貢献することになりました。
古澤研出身の武田俊太郎准教授と引き続き一緒に光量子コンピューターの研究を続けています。武田研の実験室の環境をより安定させるために、あらたな空調装置の導入、窓の二重化、大型の光学ケーブルを導入するための作業デスクの設置等に約 500 万円を活用させていただきました。
10月には3年振りに対面で寄付者の集いを開催し、ミニ講義と質疑応答、高瀬助教と大学院生からの海外派遣報告、古澤研の実験機、武田研の実験機、工6号館の冷却装置の見学をしていただきました。対面で様々なご質問をいただき、光量子コンピューターへの皆様の期待を肌で感じることができ、大きな励みになりました。
12月には大学院生を連れてデンマークのコペンハーゲンを再訪しニールス・ボーア研究所と国際会議でそれぞれ講演を行いました。100GHzクロック・100マルチコアのスーパー量子コンピューターを作ると言ったところ、会場から大きな反響がありました。私の過去の講演の中でも最高レベルの反響でした。それぞれで質問攻めに遭い、東大に留学したいという学生が多数現れたことは嬉しい限りです。
このように皆様のご寄付を活用させていただき、研究に人材育成に励んでいますので、引き続きご支援を願い申し上げます。
■ご寄付の使途
いただいたご寄付は以下の目的のために、活用いたしました。
温かいご支援を賜り、ありがとうございました。
・工学部6号館の冷却装置のリニューアル
・武田研の空調設備等の整備
・波長系の変更に伴う実験環境の変更
・海外派遣、渡航費等
2022年11月02日(水)
【開催内容】
●古澤教授によるミニ講義
古澤教授より、温かいご支援への御礼に始まり、光量子コンピューターと光通信の親和性や定在波ではなく進行波を使うことによりチップ化する必要がないなど、最新の研究についてのお話がありました。今年のノーベル物理学賞が「量子もつれ」をテーマにした研究であることから「今日、それに触れないわけにはいかないでしょう」として、ノーベル財団が発表する受賞理由のなかにご自分の研究の引用がないことから、逆に近い将来の受賞の可能性が高まったとのコメントがあり、寄付者の皆様の期待が膨らみました。
●高瀬助教による研究内容の発表
高瀬助教より、前日行われた研究成果の記者会見について、まだ公開前でしたので詳細には説明できませんでしたが、レーザー光を任意のパルス波形に制御する研究についてお話がありました。詳細は米国科学誌「Science Advances」のオンライン版(10月28日米国東部時間)と工学系研究科のホームページ(10月31日)で報告されました。
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.add4019
https://www.t.u-tokyo.ac.jp/press/pr2022-10-31-001
古澤研では若手研究者の育成に力を入れており、ご寄付を活用して、できるだけ早い段階で学生を海外に派遣しています。「NonGauss Workshop 2022」が開催されたパリのソルボンヌ大学やコレージュ・ド・フランスを訪問した高瀬助教と園山さんから、ご支援の御礼とポスター発表や現地の研究者との交流について報告がありました。
●各実験機・冷却装置の見学
ご寄付の活用例として、各実験機と冷却装置を3つのグループに分かれて見学しました。古澤教授の実験機は博士課程2年の中村さんが熱く語り、武田准教授は独自の研究内容やそこからスピンオフする技術について説明、遠藤講師は冷却装置についてその驚きの性能を解説しました。
●質疑応答
参加申込時にいただいたご質問に古澤教授が答えたのち、フリーディスカッションとなりました。研究が上手くいったときは光の気持ちがわかるような気がする、研究が上手くいかないときは一度家に帰ってご飯を食べる、など研究にまつわるユーモアあるお話が参加者の興味を惹いていました。また、古澤教授からは「研究と開発は別物で、開発のようにある一定のゴールを目指すものではなく、さらに高い自由度をもって追い求めるのが『研究』であり、それを支えるのが自由に使わせていただけるご寄付です」「研究は自由が大事、常にランダムウォーク」という力強いメッセージがありました。
最後に参加者全員で記念写真を撮り閉会しました。
記念写真
(カメラの画角の関係で見切れてしまいました。すみません。)
(報告者:社会連携本部 島袋)
2022年07月26日(火)
平素より古澤明教授の「光量子コンピューター研究支援基金」に温かいご支援を賜り誠にありがとうございます。
心地良い木陰を提供してくれる安田講堂前の銀杏並木
梅雨が明け、連日猛暑が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今回は光量子コンピューターの省エネについて、6月末に行われたパリでのワークショップの様子を含め、最近の古澤研の活動内容、皆様のご寄付の活用についてのお話を古澤先生よりお預かりしました。
こちらよりご覧いただけますと幸いです。
猛暑や新型コロナウイルス第7波などが心配されていますが、皆様におかれましてはどうぞご自愛の上、「光量子コンピューター研究支援基金」への継続的なご支援をよろしくお願い申し上げます。
2022年02月02日(水)
2021年も引き続きコロナウイルスの影響はありましたが、様々な研究・教育活動を進め、大きな成果を得られました。皆様の継続的なご支援にあらためて御礼申し上げます。本基金にご寄付くださった皆様には年に数度、ご報告レターをお送りしていますが、あらためてご報告申し上げます。
2021年4月には国立研究開発法人理化学研究所(理研)が政府策定の「量子技術イノベーション戦略」に基づき開設した量子コンピュータ研究センターの副センタ―長に、そしてそのセンター内の光量子計算研究チームのチームリーダーに就任しました。大学では教育と基礎研究を使命としていますが、理研では基礎研究を応用研究に発展させ、ハードウェアからソフトウェアまで、一貫した研究開発に取り組み、量子技術の可能性を広げていきます。
上記研究センターのセンター長が東京大学先端科学技術研究センターの中村泰信先生なのですが、その中村先生と、YouTubeの人気番組「予備校のノリで学ぶ『大人の数学・物理』」に一緒に出演しました。48万回を超える再生数に驚いていますが、一人でも多くの人々に我々の光量子コンピューターを知っていただくためにも、このようなアウトリーチ活動が重要であると考えています。
古澤研のワリアット・アサバナント助教と「Optical Quantum Computers: A Route to Practical Continuous Variable Quantum Information Processing」という本をアメリカで出版する準備を進めていました。2022年1月末販売開始の予定です。アサバナント助教は以前、皆様のご寄付を活用してオーストラリアのUniversity of New South Walesに派遣され、この本に書かれているアサバナント助教の研究成果の多くはこの派遣から始まった共同研究によるものです。古澤研の長年の研究成果が伝統あるアメリカ物理学協会(設立1931年、会員数10万人超)から出版されるということに大きな意味があります。
学生の海外派遣といえば、2020年はコロナ禍により途中で帰国せざるを得ませんでしたが、2021年は結局実現できませんでした。コロナ禍が始まる前は皆様のご寄付の大部分を学生の派遣の旅費や滞在費に活用させていただいていましたが、早く自由な往来が戻ることを祈っています。
11月にはオンラインですが、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)の分科会のひとつ「Photonics Society」で “Large-Scale Fault-Tolerant Universal Quantum Computing with Quantum Teleportation”という題でセミナーを行いました。アメリカに本拠を置くIEEEは、電気・通信・情報工学をはじめとする多くの学術分野を含む世界最大の学術団体といわれています。
2021年を〆る一番大きな出来事は12月22日に行ったNTTとの共同記者会見です。大規模光量子コンピューターを実現するために必要な基幹技術となる量子光源(スクィーズド光源)のモジュール化に成功したことを発表しました。この記者会見は12月23日の日経新聞朝刊の一面トップに掲載され、その記事を見た既存寄付者からの応援メッセージや新規の寄付をお寄せいただくなど、ここでも情報発信の重要性を再認識しました。
2021年のご寄付は、上記のNTTとの記者会見でも報告しました量子光源を準備するためのレーザーの波長を、従来のセシウム原子時計の波長から通信波長帯に変更するために、この波長のレーザーや光学部品・装置を購入することに使わせていただきました。この波長の変更は我々の研究にとって歴史的転換点であり、その転換点を皆様のご寄付がサポートしてくださったことをご報告してあらためて感謝申し上げます。
また、2021年中に発注等々の準備を進め、実際の工事は2022年3月の予定ですが、レーザー冷却冷水装置チラーユニットの更新に約1900万円を充当させていただきます。古澤研が入る工学部6号館の各種実験設備を冷却する装置で、設置してすでに40年近くが経過し、そろそろ限界でした。古澤研の光量子コンピューターの実験だけではなく、結果的に他の多くの研究にも貢献することになります。
2021年07月05日(月)
YouTubeの「ヨビノリ」(予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」)チャンネルに先端科学技術研究センターの中村泰信先生との対談動画が投稿されています。 量子コンピューターの過去・現在・未来について、非常に興味深いお話です。ぜひご覧ください。
2021年01月22日(金)
2020年はいうまでもなく、新型コロナウイルス感染症の影響により、様々な制約がありましたが、古澤研としては工夫しながら研究・教育活動を継続してきました。主な活動や成果は以下の通りです。
2月 | 修士課程2年2名がそれぞれトロント大学、ブリストル大学にて武者修行開始。コロナ禍で予定より早く3月に帰国したため、博士課程のタイミングで再挑戦予定。 |
3月 |
|
5月 | CLEO (Conference on Lasers and Electro-Optics)にて2講演を実施。 |
9月 | ムーンショット型研究開発事業「誤り耐性型大規模汎用光量子コンピューターの研究」のプロジェクトマネージャーに就任。 |
10月 | Caltechで開催されているPhysics Colloquiumにてオンライン講演。 |
11月 | 「All-optical phase-sensitive detection for ultra-fast quantum computation」が科学誌「Optics Express」に掲載され、Editor's Pickに選出。 (https://www.osapublishing.org/oe/issue.cfm?volume=28&issue=23) |
12月 | 12月 参加枠2000名限定に対し、85か国から3000人以上の応募があった量子コンピューターの競技型プログラミング・コンテスト「The IBM Quantum Challenge Fall 2020」にて、古澤研の学部4年の長吉博成さんが優勝、修士1年の川﨑彬斗さんが16位に。 |
2020年を通して、サポーターの皆様からの毎月の継続寄付がたまってきました。コロナウイルスの状況を見ながら、2021年度以降にあらためて学生の海外派遣等に活用させていただく予定です。今後も継続的なご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
※学生、教員の所属、学年、肩書はすべて活動報告当時のものです。
2020年12月22日(火)
古澤研では先日「光量子コンピューター研究支援基金 オンライン感謝の集い」を開催しました。古澤教授のオンライン模擬講義や、実験機のオンライン見学、参加者の皆様も積極的に参加いただいたフリートークなど、盛りだくさんの2時間となりました。その様子をこちら(PDF)からご覧ください。
2020年05月18日(月)
多くの方々にご寄付いただき、非常に心強く感じております。ありがとうございます。引き続き、ご支援を何卒よろしくお願いいたします。
2019年の主な活動
・ 2月 『光の量子コンピューター』上梓
・ 5月 研究成果を記者会見で発表。論文「On-demand photonic entanglement synthesizer」(武田俊太郎 助教、高瀬寛 博士過程1年、古澤明 教授)が科学誌「Science Advances」に掲載される(https://advances.sciencemag.org/content/5/5/eaaw4530)
・ 6月 オーストラリア国立大学にてPublic Talkを実施
(https://www.youtube.com/watch?v=BesEkct269Q)
・ 6月「Toward large-scale fault-tolerant universal photonic quantum computing」が科学誌「Scilight」で特集される(https://aip.scitation.org/doi/10.1063/1.5113696)
・ 4~7月 博士課程1年2名がそれぞれウィスコンシン大学、サウサンプトン大学にて武者修行
・ 10月 研究成果を「大規模・汎用量子計算を実行できる量子もつれの生成に成功 ― 新しいアプローチで量子コンピューター実現に突破口」と題して記者会見で発表。
・ 世界ではじめて、どのような量子計算でも実行できる量子もつれ(2次元クラスター状態)の生成に成功した
・ 5入力5,000ステップ程度の計算に使える、25,000個の光パルスから構成された大規模な2次元クラスター状態を生成し、そのサイズも原理的にはいくらでも大きくできる。
・ 現在主流のゲート方式の量子コンピューターの限界を克服できる新しいアプローチであり、量子コンピューターの実現への新たな可能性を拓いた。
この研究成果が論文「Generation of time-domain-multiplexed two-dimensional cluster state」(Warit Asavanant博士課程2年、古澤明 教授)として科学誌「Science」に採用される(https://science.sciencemag.org/content/366/6463/373)
・ 11月 大学院生7人とデンマークのニールス・ボーア研究所を訪問。最近の研究について発表
寄付金の主な使途
皆様にいただいたご寄付は主に下記のように活用させていただきました。
●武者修行(博士課程1年2名を海外武者修行に派遣 4月~7月)の渡航費・滞在費
●10月18日 実験機見学会(継続寄付者感謝の集い)の諸経費
●ニールス・ボーア研究所訪問(11月)(大学院7名)の渡航費
2020年01月09日(木)
明けましておめでとうございます。
旧年中は温かいご支援を賜り誠にありがとうございました。
今年も、古澤教授より、新年のご挨拶を兼ねた活動報告をお預かりしましたのでお送りさせていただきます。PDFにてご覧いただけますと幸いです。
ニールス・ボーアのデスクにて(古澤教授)
さて、東大基金事務局からひとつお願いがございます。
クレジットカードによる継続寄付をお申し込みいただいてる方には、カードの有効期限が近付きますと、 カード番号更新のお願いメール【東京大学基金より大事なご連絡】が届きます。
大変お手数で申し訳ありませんが、ご協力お願い申し上げます。
本年もよろしくお願い申し上げます。
2019年10月25日(金)
古澤研では光量子コンピューター実験機の見学会を10月18日に開催しました。実験室のスペースが限られているため、今回は継続寄付者様限定での開催となりました。
古澤明教授が継続支援への感謝を述べ、全員でドキュメント映像を鑑賞した後、複数グループに分かれて実験室に移動しました。図らずも、この日の朝、米国の科学誌「Science」に発表された研究成果をもたらした実験機を目の前にして、古澤教授の説明を聞くという幸運とも重なりました。
他グループが実験機を見学している間、セミナー室に残るグループは、古澤研の若手研究者や皆様のご寄付で海外武者修行を経験してきた博士課程1年生との懇談を楽しみました。古澤教授は、学生たちに自由に研究させる一方で、「実は学生たちと毎日ランチを共にして、何気ない会話の中から学生たちが困っていることを汲み取り素早く対応してくださるので大変ありがたい」との声も聞かれました。
>
参加者全員で質疑応答
黒板の前左奥から:武田准教授、遠藤助教、高瀬博士課程1年生、岡本博士課程1年生、古澤教授
セミナー室に古澤教授と参加者全員が戻り、質疑応答が行われました。量子コンピューターが実現すれば、スパコンよりも計算が速いということが強調され勝ちですが、消費電力の大幅減が期待できるなど、地球環境への貢献という視点からも説明がありました。専門的な話だけではなく、「頭が疲れたときはどうしますか」という質問があり、古澤教授の「寝る」をはじめ、「まったく違うことをする」「外を走る」「食事をする」など、それぞれのリフレッシュ法も参加者の興味を引いていました。
最後に全員で記念写真を撮り閉会となりました。
2019年10月23日(水)
古澤研では「大規模・汎用量子計算を実行できる量子もつれの生成に成功 ― 新しいアプローチで量子コンピューター実現に突破口」と題して、10月16日に記者会見を開催しました。
発表のポイントは以下の3点となります。
・世界ではじめて、どのような量子計算でも実行できる量子もつれ(2次元クラスター状態)の生成に成功した
・5入力5,000ステップ程度の計算に使える、25,000個の光パルスから構成された大規模な2次元クラスター状態を生成し、そのサイズも原理的にはいくらでも大きくできる。
・現在主流のゲート方式の量子コンピューターの限界を克服できる新しいアプローチであり、量子コンピューターの実現への新たな可能性を拓いた。
(プレスリリースより抜粋)
*プレスリリース全文は工学系研究科のWebサイトからご覧いただけます。
今回の研究に使われた実験機(写真提供:古澤研)
古澤明教授は今回の研究成果について、「たとえるなら、〔真空管世代〕の量子コンピューターから〔トランジスター世代〕の量子コンピューターへのパラダイムシフトである」と説明し、量子コンピューターの実現を飛躍的に加速させる効果が期待されると述べました。
このたびの研究成果はアメリカの科学誌「Science」のWeb版に採用され、こちらからご覧いただけます。
最後のACKNOWLEDGEMENTS(謝辞)として、UTokyo Foundation(東京大学基金)にも言及されています。
皆様のご支援にあらためて御礼申し上げます。
2019年08月02日(金)
おかげさまで、本基金へのご寄付の累積が300万円を越えてきました。重ねて御礼申し上げます。ご寄付の活用方法のひとつに古澤教授に続く若手研究者の育成が挙げられます。
ご自身がカリフォルニア工科大学(Caltech)に留学して、大きなキッカケをつかんできた古澤教授は研究室の若手を積極的に海外での「武者修行」に送り出しています。古澤教授はその著書のなかで、費用対効果の高い予算の使い道のひとつとして「学生への投資」を挙げ、以下のように述べています。
私の場合、大概突拍子もないことを思いつくのだが、それを学生に実現させるため、留学させている。学生に「このお金で、3ヶ月間、留学してきなさい」と武者修行に出せば、必ずフェーズチェンジして帰ってきてくれるからだ。それにより、以前の何十倍、何百倍もの成果を上げてくれるため、非常に投資効率が高い。
(「光の量子コンピューター」P. 184、古澤明著、集英社インターナショナル新書)
皆様のご寄付の一部を渡航費・滞在費に活用させていただいて「武者修行」に行き、最近帰国したばかりの博士課程1年生お二人に、その体験を書いていただきました。古澤教授が「イノベーションは、1人の人間が、研究室に閉じこもってうなっていても決して起こせるものではない。世界中の多種多様な人々との間の化学反応を通して、偶然生まれるものではないだろうか」(P. 186、同上)と述べているように、化学反応につながるような経験を海外でしてきたお二人の報告を以下のPDFからご覧ください。
サウサンプトン大学での研究生活
物理工学専攻 古澤研究室 博士課程1年 岡本 史也
ウィスコンシン大学マディソン校での研究を終えて
物理工学専攻 古澤研究室 博士課程1年 高瀬 寛
古澤研究室は量子テレポーテーションを用いた画期的な「光量子コンピューター」の実現方法を発明した研究室です。それまでは10量子ビット程度が限界だったのに対して、事実上無限の量子ビットを使って計算をさせることが可能となり、大規模な汎用量子コンピューターが実現できるようになります。
主な活動
その他、様々な研究・教育活動を継続して行っています。
寄附金の使途及び継続支援のお願い
寄附金が累積し次第、研究に重要な高性能光学機器等を購入します。今後とも光量子コンピューター研究支援基金をよろしくお願いいたします。なお、購入する光学機器には寄附によって購入された旨を明記する予定です。
寄附者の声
<光量子コンピューター研究支援基金>
<光量子コンピューター研究支援基金>
<光量子コンピューター研究支援基金>
<光量子コンピューター研究支援基金>
<光量子コンピューター研究支援基金>
<光量子コンピューター研究支援基金>
<光量子コンピューター研究支援基金>
<光量子コンピューター研究支援基金>
<光量子コンピューター研究支援基金>
<光量子コンピューター研究支援基金>
<光量子コンピューター研究支援基金>
<光量子コンピューター研究支援基金>
<光量子コンピューター研究支援基金>
<光量子コンピューター研究支援基金>
<光量子コンピューター研究支援基金>
<光量子コンピューター研究支援基金>
<光量子コンピューター研究支援基金>
日本にとって、この分野で成功するか否かは大きいと思う。『富岳』並みの予算が付いても良いと思うけどね!
<光量子コンピューター研究支援基金>