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マリン・フロンティア・サイエンス・プロジェクト(三崎臨海実験所) 
海外渡航報告

マリン・フロンティア・サイエンス・プロジェクト 海外渡航報告

理学系研究科附属臨海実験所・特任助教 大森 紹仁


15th IEC会場内の様子 2015年5月24日(日)から6月5日(金)にかけて、マリン・フロンティア・サイエンス・プロジェクトの海外渡航費援助を受けて、国際学会発表と標本調査のためにメキシコおよびアメリカに渡航して参りました。私自身は生憎本年度の海外渡航に使用できる研究費を持ち合わせておらず、自腹での渡航となることも覚悟していたため、マリン・フロンティア・サイエンス・プロジェクトの援助をいただけたことを大変ありがたく感じております。以下、渡航の報告をさせていただきます。


15th IEC会場内の様子                             


 

 今回私が訪れたのは、メキシコ、ユカタン半島東部の都市プラヤ・デル・カルメンと、アメリカの首都、ワシントンDCです。
 最初の渡航地であるメキシコ、プラヤ・デル・カルメンでは、5月25日(月)から5月29日(金)にかけて開催された第15回国際棘皮動物学会(15th International Echinoderm Conference, 以下、15th IEC)において、口演発表を行いました。国際棘皮動物学会は、棘皮動物(五角形の体制を特徴とする、ウニやヒトデ、ナマコなどの無脊椎動物)を対象とした分類学、生態学、発生学、古生物学など、様々な分野を専門とする研究者が一堂に会する学会で、1972年にアメリカ、ワシントンDCにて第1回大会が開催されて以降、概ね3年おきに開催されています。棘皮動物の一種であるウミシダ類の分類、発生を専門とする私にとっては最も重要な国際学会の一つで、これまでに第13回、第14回の2度、ウミシダの発生と神経形成についての発表を行ってきましたが、今回は、国立遺伝学研究所の城石俊彦博士、前野哲輝氏との共同研究として昨年から新たに始めた、X線CT装置を用いたウミシダ類の細部観察と分子実験の研究が形になってきたため、その発表を行いました。”Micro-computed tomography with molecular analyses; methodological study for molecular phylogeny and developmental biology of echinoderms” と題して行った15分の口頭発表では、CT撮影時にウミシダの軟体部を染め分ける染色手法を紹介するとともに、高エネルギーのX線を長時間当てた後でも、分子解析に利用可能な品質のDNA、タンパク質を得ることができることを示しました。初日の基調講演直後の1番目の発表ということもあり、非常に緊張しましたが、発表後には多くの海外研究者の方から声をかけていただき、研究内容について議論を交わすことができました。他の研究者の発表も興味深いものが多く、生態学、古生物学など研究分野の違う方々とも意見交換をすることができ、非常に有意義な一週間を過ごすことができました。
 学会最終日には、3年後の次回大会の主催者として名乗りを上げた名古屋大学の大路樹生先生の号令の下、参加した他の9名の日本人研究者とともに壇上に上がり、全員で日本への誘致アピールを行うという貴重な経験を行うこともできました。このアピールが功を奏したのか、次回大会は無事日本開催ということになったため、今後の3年間でさらに研究を進めて日本大会での発表に備えるとともに、学会運営の面でも積極的に主催者の大路先生をサポートし、国際棘皮動物学会日本大会を成功に導けるようより一層の努力をしていく所存です。

15th IEC集合写真

 15th IECの会場となったプラヤ・デル・カルメンは、同じユカタン半島の有名観光地であるカンクンと同様に欧米では人気のリゾートのようで、いかにも南国を思わせる美しいビーチでバカンスを楽しむ人々の姿が印象的でした。また、学会のエクスカーションではユカタン半島で栄えたマヤ文明の遺跡チチェン・イツァを訪れ、当地の興味深い歴史についても学ぶことが出来ました。麻薬抗争などのニュースが頻繁に流れるメキシコということで、出発前は治安の悪さを覚悟していましたが、幸い滞在中に身の危険を感じることはなく、快適に過ごすことが出来ました。


15th IEC集合写真                             


 

 次の渡航地であるアメリカ、ワシントンDCでは、有名なスミソニアン博物館群の1つである国立自然史博物館(以下、NMNH)を訪ね、NMNH所蔵のウミシダ標本の調査を行いました。この調査は、日本近海に生息するイボアシウミシダ科ウミシダ類の分類再検討のための研究の一環であり、タイプ標本を含む貴重な日本近海産標本を数多く所蔵するNMNHでの調査は、本研究の完成には不可欠でした。
 NMNHは、市街地にある生物や地質に関する様々な展示物を一般公開している博物館のほかに、学術標本を保管する施設であるMuseum Support Center (以下、MSC) を郊外に所有しており、今回の標本調査は主にこのMSCにて行いました。現地では、まず著名な棘皮動物研究者であるDavid L. Pawson博士を市街地の博物館に訪ね、研究に関する情報交換を行った後、Pawson博士の案内の下、MSCまで向かいました。Pawson博士はすでに研究の第一線を退いたとおっしゃっておりましたが、その豊富な知識をわかりやすくお話しいただき、非常に感銘を受けました。MSC内では、世界最大級のウミシダ類標本コレクションであるA. H. Clark collectionを拝見した後、目的の標本であるイボアシウミシダ科4種の標本の精査およびDNA抽出用組織片の摘出を行いました。MSCの研究スペースは世界中から研究者が集まる博物館らしく非常に使いやすくできており、特に精査後の標本や摘出した組織片を分ける瓶や記録紙が豊富に用意されていた点が印象的でした。残念ながら、私がMSCを訪ねた6月は標本の外部持ち出しが一時休止されている時期であったため、摘出した組織片を用いたDNA解析が開始できるのは本年秋以降となってしまったのですが、貴重な標本の形態を精査することができたことで、研究をまとめるにあたり非常に有意義な情報を得ることが出来ました。

MSC内にてDavid L. Pawson博士(左)と大森特任助教(右)

MSC内にてDavid L. Pawson博士(左)と大森特任助教(右)


 

 以上が本海外渡航の報告となります。最後になりましたが、改めまして、今回の渡航費用をサポートしていただいた、マリン・フロンティア・サイエンス・プロジェクトに寄付をしていただいた方々に心より御礼申し上げます。

※肩書きは渡航当時のものです。

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