本プロジェクトは、2011年3月11日に発生した平成23年東北地方太平洋沖地震により被災した、岩手県大槌町にある東京大学大気海洋研究所附属国際沿岸海洋研究センター(以下、沿岸センター)の活動を支援する東京大学基金のプロジェクトです。
沿岸センターは、1973年に岩手県上閉伊郡大槌町に設置されて以来、沿岸海洋研究を活発に進めるとともに、共同利用施設として、国内外の多くの研究者や学生に活用されてきました(年間約4,000人日)。東日本大震災を受けて、沿岸センターが取り組むべき3つの柱は、1.地域とともに歩むこと、2.人が交流する場所であること、3.世界を牽引するサイエンスを生むことであると考えています。豊かな東北の海を取り戻すため、海洋環境や生態系に関する調査・研究・人材育成の中心的役割を担う決意を固めています。
大気海洋研究所では、沿岸センターの研究活動の再開に向けた取り組みを開始していますが、沿岸センターの再建(※)と未曾有の出来事に対応した発展的な研究活動の支援に向けた環境整備を行うためには、少なくとも数年規模の時間と多額の費用が必要となります。そこで、この沿岸センターの研究活動を支援するための基金を設けることとしました。
※沿岸センターの再建に関して、2018年2月に新しい研究実験棟・宿舎棟が竣工しました。
東京大学大気海洋研究所 附属国際・地域連携研究センター 大槌研究拠点(以下、大槌沿岸センター)は、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震によって壊滅的な被害を受けましたが、皆様のお陰をもちまして、2018年2月末に新しい研究実験棟(3階建、床面積2,700㎡)および共同研究員宿泊棟(平屋建、床面積580㎡)が竣工しました。
新しい研究実験棟と宿泊棟は、旧敷地より数百メートル山側に再建されました。研究実験棟のエントランスホールと隣接するギャラリーは、誰もが自由に出入り可能なスペースとし、地域の皆様との交流を深めるために活用しています。ホールには、新進気鋭の現代アート作家、大小島真木さんによる天井画「Archipelago of Life 生命のアーキペラゴ」が描かれ、絵の中の海の生物たちの世界を楽しんでいただけます。大きな窓と広い廊下が特徴的な実験棟の海側の窓から見える大槌湾とひょうたん島の景色はまさに絶景です。世界中から集う海洋研究者が、この絶景を眺めながら多くの素晴らしい研究を展開することを期待します。旧研究実験棟は解体され、その跡地には水槽実験施設が再建されました。ここには展示施設「海の勉強室」を併設して、大槌沿岸センターの研究紹介から大槌湾の環境や生物の解説、標本展示などを常設し、地域の皆様や大槌を訪れる方々に気軽に立ち寄ってもらい、大槌や三陸の海のことを楽しく知ってもらえる場所にしています。
大槌沿岸センターの役割は、津波被災地に立地していることによって、これまでよりも一層大きくなったと言えます。大地震と大津波は直接的に海洋生態系を攪乱したばかりでなく、間接的・連鎖的にも様々な影響を及ぼし、現在でもなお生態系の変化は継続しています。各被災地で大規模に進められている港湾施設や防潮堤の再建などによっても、沿岸域の生態系やそこに棲む生物群集が新たな攪乱を受ける可能性があります。海の生物資源を保全しながら上手に利用し続けるためには、人間社会の復興と共に海洋生態系がどう変化するのかを長期間注視していく必要があります。三陸の海で起きている事象を長期間にわたって科学的に詳細に記録することは、将来地球上のどこかで起こる同様の災害への備えや復旧・復興に役立つ重要な財産となります。大気海洋研究所は国内で唯一の大気海洋科学に関する共同利用・共同研究拠点として、大槌沿岸センターと柏キャンパスの教職員が一体となり、新生大槌沿岸センターが国際的な海洋生態系研究の拠点としてさらに発展していくよう努めます。
さらに、地域の未来を形作る拠点としても機能し、大槌はもちろんのこと三陸全域の復興・発展に貢献したいと考えています。2018年4月からは、東京大学社会科学研究所と協働して、文理融合型の研究教育プロジェクト「海と希望の学校 in 三陸」を開始しました。このプロジェクトでは、リアス海岸に位置する各湾、地域の海洋環境や生態系の構造を詳細に比較するとともに、海洋環境と沿岸地域の社会・産業構造や文化・風習との関係性を調べ、地先の海の持つ可能性とそれを生かしたローカルアイデンティティの再構築による地域再生の議論を喚起します。同時に、地域の復興・振興に繋がる“希望”を見いだすことのできる次世代の人材育成を目指します。この取り組みはすでに三陸で芽吹いており、今後は三陸から全国へ、科学研究と地域・社会貢献を両輪として前進する大気海洋研究所になりたいと願っています。
今後も皆様の一層のご支援をお願い申しあげます。
大気海洋研究所長 兵藤 晋
2024年02月02日(金)
三陸沿岸地域の復興とその先にある地域振興を目指し、海をベースにしたローカルアイデンティティの再構築を通じて地域に希望を育む「海と希望の学校 in 三陸」に取り組んでいます。本プロジェクトでは、海洋科学研究の成果を通じ、海は厄災の原因となる一方、無限の恩恵をもたらすことにより地域文化に深く根差していることを伝える工夫を続けてきました。
本年度は、ご寄付によって運営している研究展示施設「おおつち海の勉強室」の見学会をはじめとする一般講演会や実習、イベントなど計55回を実施し、延べ350名以上の方々に直接センターへ足を運んでいただくことができました。
本年度も様々な形で、地域の皆さんとの交流を進めましたが、ここでは特に11月17日から19日に実施した3大イベントについて報告させて頂きます。2023年は、大槌沿岸センターの50周年にあたる節目の年でした。東日本大震災を含むこれまでの50年を支えて頂いた皆様をお迎えし、11月17日に大槌町文化交流センターおしゃっちにおいて記念式典を開催しました。現役の教職員も知らなかった過去の出来事や地域の動きなど、センターの半世紀の歴史を振り返るとともに、これからの50年に向けて想いを新たにする機会となりました。ご列席頂きました皆様、またこれまでセンターにご支援くださいました皆様に改めて御礼を申し上げます。
式典の翌日は、同じ会場で「第22回漂着物学会」が開催されました。沿岸センターが岩手県立大槌高校と実施している「はま研究会」に所属する生徒たちが、2022年11月に鹿児島県徳之島で行われた「第21回漂着物学会」において、大槌の海岸で得られた海ゴミに関するデータを発表したことがきっかけです。この発表が大変高く評価され、第22回大会が大槌で開催されました。しかし、学会は会員のための研究集会であり、一般市民が自由に参加することはできません。そこで、三陸沿岸で海に関する様々な活動をするグループに呼びかけ、「海と希望の学校研究交流発表会:岩手の海、岩手の力」と題したイベントを開催しました。ここには行政、中学高校、民間企業、NPOなど計12グループが参加し、はま研究会や漂着物学会員を含めた大変意義のある交流を図ることができました。
同じく11月18日から19日かけて、釜石市の市民ホールTETTOでは、市役所との共同による「海と希望の学園祭」を開催しました。沿岸センターの50周年記念式典のため来県されていた皆様にもご参加いただき、岩手大学、文教学院大学、第二管区海上保安部ほか行政や民間企業、各種団体など海に関わる多くの人たちが集いました。内容は講演・トークイベント、ワークショップ・ギャラリー、広報・展示活動、海の映画&トークなど盛りだくさんで、海のバルーンアートや地元の軽トラ市が華を添えてくれました。会場には2日間で延べ2000人以上の人たちが訪れ、大変な盛り上がりとなりました。東京大学としても、「海と希望の学校」を展開する大気海洋研究所と社会科学研究所に加え、釜石市で波力発電の実証試験を行なっている先端科学技術研究センターと生産技術研究所をあわせた4部局長が一堂に会する貴重な機会となりました。
暖冬とはいえ、北東北の冬は寒く人々の動きは鈍ります。現在は、今年度の活動を振り返りつつ、来春に向けた準備を進めているところです。特に、研究展示施設「おおつち海の勉強室」の展示の入れ替え作業を急ピッチで進めています。次の展示テーマは「集める」として、研究活動で集められた標本やデータ、集めるための道具や測器、集めたからこそわかった研究成果などを展示する予定です。
2023年02月01日(水)
東日本大震災により甚大な被害を受けた三陸沿岸地域の復興とその先にある地域振興を目指して、海をベースにしたローカルアイデンティティの再構築を通じて、地域に希望を育む「海と希望の学校 in 三陸」に取り組んでいます。本プロジェクトでは、海洋科学研究の成果を通じ、海は厄災だけでなく、無限の恩恵をもたらすことにより地域文化に深く根差していることを伝える工夫を続けてきました。このうちの一つである三陸鉄道株式会社との協働による「海と希望の学校onさんてつ」は、地元の小中学生を対象として、車窓にみえる海と故郷の景色を見ながら授業を受けてもらうという企画です。
本年度は、その海洋科学教育的意義を評価した岩手県科学情報政策室(北路線:宮古-大槌間で運行)と、地域振興活動としての意義を評価した岩手県沿岸振興局(南路線:盛-大槌間で運行)により、それぞれの主導で計2回のイベントを実施することができました。東京大学の「海と希望の学校」ではなく、地域が主体となって展開する活動へ広がりつつあることを実感しています。また、「東京大学大気海洋研究所、社会科学研究所と釜石市による連携協力の推進に関する覚書」が締結されたことにより、2022年11月5-6日に釜石市中心部にある市民ホールTETTOにおいて、大気海洋研究所、社会科学研究所に先端科学技術研究センターを加えた「海と希望の学園祭」を開催いたしました。当日は、本プロジェクトで協働している地元の企業、NPOや海上保安部、地元の小中学校が参加し、海に関わる講演、パネルディスカッション、映画や郷土芸能など、様々なイベントが催され、大変な盛況となりました。
これが大変好評で、来年度の漂着物学会は大槌町で開催する予定となっています。また、はま研究会において「サケの環境DNA」研究を行う生徒たちのため、毎年12月に北海道で開催されている「サケ学研究会」のサテライト会場を大槌高校に設置し、オンラインで生徒たちによる研究発表を行いました。こうした取り組みはサケ研究者にも高く評価され、研究会にあわせてサケ学研究会の前会長である北海道大学の荒木仁志教授が大槌高校を訪れ、サケのフィールド実習およびサケ学講座を開催しました。2023年3月には、大槌高校の生徒たちを柏キャンパスへ招待し、自身の採集したサンプルの分析手法や最新の研究機器を学ぶとともに、本郷キャンパスを訪問して大学を身近に感じてもらう企画を実施します。
地域社会と海洋研究の接点となることを目指し、再建されたセンターに併設された「おおつち海の勉強室」は、開室よりすでに2年が経過する現在においても、多くの人たちが見学に訪れています。本年度は、次のステップを目指して展示物などの入れ替えを予定していましたが、継続的な見学希望のため作業を延期することとしました。来年度には、心機一転、新たな企画展示により、三陸の海に希望を育みたいと考えています。また、本プロジェクトが5年目の一区切りを迎えるにあたり、これまでの活動を取りまとめた報告書の作成を進めているところです。
温かいご支援を賜り、ありがとうございました。
2022年01月21日(金)
2021年の成果としては、まず4月18日にオープンした新しい展示・研究施設「おおつち海の勉強室」が上げられます。大気海洋研究所と社会科学研究所の共同による地域連携プロジェクト「海と希望の学校 in 三陸」の拠点と位置づけられるこの施設には、オープン以来、10件の学校などによる団体利用、9件の自治体など関連組織による視察、テレビの生中継を含む3件のマスコミ取材に加え、県内外から計563名の来場者がありました。これを機に、大槌町の商工会議所や観光交流協会から、本施設や国際沿岸海洋研究センターを核とした地域おこしに関する相談が増えてきました。
2017年より地元紙である岩手日報で連載していた「さんりく海の勉強室」が終了したのに伴い、記事の一部に書下ろしを加え、一般向け書籍「さんりく海の勉強室(岩手日報社刊)」を出版しました。本書は海洋科学の啓発だけでなく、海とともに生きる三陸沿岸社会のローカルアイデンティティの再構築を通じ、地域に希望を育むことを狙いとしています。この成果が県内外で高い評価を得たことから、岩手日報社の強い要請を受けて、新聞紙上では2021年4月より新連載「メーユのさんりくゼミナール」がスタートしました。
2020年12月に岩手県沿岸振興局と共同で実施した「三陸マリンカレッジ」が好評で、地域からの強い要望を受けて、2021年8月31日に岩手県水産技術センター、釜石海上保安部および岩手大学と共同でサマースクールを開催しました。9月12日には三陸鉄道株式会社と共同で、国際沿岸海洋研究センターと連携協定を締結している宮古市立重茂中学校の生徒を対象に「海と希望の学校 on さんてつ」を開催しました。また、9月以降は釜石市役所および(株)釜石DMCと共同して、釜石市が運営するOpen Field Museum KAMAISHIに「おおつち海の勉強室」を取り込み、自治体の枠を超えた大槌湾沿岸一帯への活動展開を図っています。
昨年度大槌高校に設立した「はま研究会」には、全校生徒の半数以上が入部し、本年は計41回の活動を行いました。また、文科省の指定校として生徒の全国募集を行う大槌高校では、本年度に「はま研究会」への入部を希望して首都圏から1名の生徒の入学がありました。一連の動きは、周辺の自治体のみならず文部科学省などでも注目されています。
12月には、国際沿岸海洋研究センターに合宿して海を学ぶ「第2回三陸マリンカレッジ」が開催の予定でしたが、新型コロナ感染症拡大防止の観点から中止となりました。コロナ禍でも提供可能なイベントについて、岩手県と協議を継続しています。
今後、大気海洋研究所と社会科学研究所が構築した「海と希望の学校 in 三陸」の枠組みを岩手県に移転し、継続的な活動にしたいと考えています。そのため、まずは県からの予算の組み入れや、岩手県立大学との連携を進める方針です。
ご寄附の使途
頂いた寄附金は、主に「おおつち海の勉強室」の整備費用の一部として使用させて頂きました。具体的には標本展示室内のパネル作成用の事務用品類、液浸生物標本ケース、様々な海の専門書を集めた「海の本棚」に収蔵する書籍類および大槌町のササキプラスティック(株)との共同による「大槌湾から見つかった新種・オオヨツハモガニ」の模型製作費などとなります。
皆様のご支援に改めて感謝申し上げます。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
2021年07月08日(木)
この春に、センターの海側敷地に「おおつち海の勉強室」が遂に開室しました。
この「勉強室」はかつて沿岸センターにあった展示室を発展的に復活させたもので、研究者が活動や研究成果を紹介するだけではなく、地域の方との交流(今何かと話題の対話!)を通じて、お互いに海や沿岸域の文化についての知識を深める場所として構想されたものです。ですから我々は、訪れた人に「あなたの地元の海の魅力はこれですよ」とお伝えするというよりは、身近な自然の面白さや日常生活に埋没している地域の魅力を探し始める「きっかけ」を提供したい、と考えています。
このような目標・ねらいの達成のために室内には市民参加型の展示や図書閲覧コーナーも作ってみました。このような事情があって博物館でも展示室でもなく「勉強室」と命名されているのです。 4月18日に行なわれたオープニングイベントには、大槌町長、釜石市長、大槌町議会議長のほか、「海と希望の学校 in 三陸」の提携校である宮古市立重茂中学校や「はま研究会」の活動が活発化してきた県立大槌高校の生徒なども含めて50名以上をご招待し、展示室の活動趣旨や展示内容についてご案内しました。
東大基金を通じてご寄付をいただいた皆様には、Zoomを使ってイベントの模様を生配信しました。小さな町の小さな海岸にマスコミ10社が駆けつけ、このイベントの様子は後日、テレビや新聞で様々に報道されました――。
このように書くといかにも盛大にイベントを行なったように思えるのですが、実際には3密を避けるために、事前に10名前後の4グループを作り、時間差をつけて1グループずつご招待し、30分程度の展示解説ツアーを順番に行なう、という、華々しくも実にこぢんまりとしたイベントでした。
このオープニングイベント以降、勉強室は週1、2日の開室予定日をホームページとSNSで周知し、電話で予約を受け付け、当日は解説員が同伴する形で開室しています。執筆時点までに大槌・釜石を中心に、いわき市から盛岡まで40名以上の利用がありました。そのすべてがほぼ貸し切り。コロナ禍の影響で図らずも当初の想定以上の「対話」の機会が生まれています。解説員を担当したスタッフは利用者との「対話」からいろいろな刺激を受けているようです。
勉強室の見学予約は0193-42-5611から。なお展示室内の様子は、YouTubeの「東京大学・海と希望の学校 in 三陸」公式チャンネルより視聴可能です。
皆さんのご支援にあらためまして深く感謝申し上げます。
引き続きご支援のほどよろしくお願いいたします。
2021年01月25日(月)
・主な活動
岩手県内における新型コロナウィルス感染拡大が軽微であったことから、2020年上半期を中心に、一部を除いてほぼ例年通りの共同利用研究の受け入れを行いました。ただ、柏キャンパスの大学院生を対象とした実習などの教育活動については、本学の指針に基づき中止もしくはオンラインでの開催となりました。
2020年4月にオープン予定だった研究展示施設「おおつち海の勉強室」につきましても、新型コロナウィルスの影響により展示品の整備が遅れ、スケジュールを1年間延期して準備を進めているところです。本施設は、2018年より始動した東京大学社会科学研究所との協働による東京大学教育研究事業「海と希望の学校 in 三陸」の重要なプラットフォームの一つであるため、オープン式典には幅広く関係者を招待する計画となっています。
今年度は、「海と希望の学校 in 三陸」の核となる対面での授業やイベントの開催が困難な状況でしたが、関係者の熱意と努力により、結果的には計31回を実施することができました。
その他には、主に以下のような活動をしました。
(1)県立大槌高等学校との連携による「はま研究会」の立ち上げ(4月10日)
(2)宮古市立重茂中学校と本プロジェクトにかかる協力協定の締結(6月30日)
(3)三陸鉄道株式会社との協働による「海と希望の学校on三鉄」の開催(10月17日)
(4)岩手県沿岸広域振興局との協働による「三陸マリンカレッジ」の開催(12月26日-27日)
(1)は、高校の部活に準ずる組織で、部員が放課後に国際沿岸海洋研究センターで研究補助を行うという取り組みです。これにより、高校生が頻繁にセンターに出入りすることとなり、周辺住民からも高い評価を得ています。また、大槌高校が実施する生徒の全国募集において、中核的な課外活動に位置づけられています。
重茂中学校は、(2)に基づいて学校教育目標を「海と希望の学校」に変更し、センター教員とともに3年間を通じた専門の授業カリキュラムの作成を進めています。
(3)では、震災以降三陸沿岸地域の希望の象徴である三陸鉄道を借り切り、重茂中学校の生徒を対象に「ワカメ」を題材とした学習列車を運行しました。
三陸鉄道レトロ調車両での「海と希望の学校on三鉄」
(4)は、岩手県が募集した沿岸地域在住の中学生7名がセンターで合宿を行い、それぞれの海の課題について探求を行う事業です。2021年3月に釜石市で実施する発表会に向けて、現在も継続的なサポートを行っています。
これらの活動は、いずれも県内外で広くマスコミなどに取り上げられ、地方自治体やNPOとの連携に繋がるなど、大きな社会的波及効果をもたらしています。開始から3年を経た本プロジェクトのコンセプトは広く地域に受け入れられ、現在では海上保安庁・釜石海上保安部など試験研究機関以外の「海」関係者との連携も急速に進んでいます。
・ご寄付の活用
皆さまにいただいたご寄付は、大槌の海の魅力を発信する拠点として整備した「おおつち海の勉強室」の整備費用の一部として大切に活用させて頂きました。具体的には標本展示室内のグラフック、サイン、展示用アクリル材、照明、プロジェクターなど、いずれも来館者を引きつけ、展示内容をわかりやすく紹介するためには不可欠な設備です。
中でもタッチパネル式デジタル図鑑「おおつち海の生き物図鑑」および様々な海の専門書を集めた「海の本棚」は、オリジナリティに富み、地域的な要請も高い展示となっています。新型コロナウィルス感染拡大のため中断していますが、大槌町のササキプラスティック(株)との共同による「大槌湾より記載された新種・オオヨツハモガニ」の模型製作も随時進める予定です。
今後も多くの方々に、本プロジェクトを知っていただき、ご支援賜れますと大変ありがたく存じます。何卒よろしくお願い申し上げます。
2020年03月10日(火)
東日本大震災により壊滅的な被害を受けた東京大学大気海洋研究所附属国際沿岸海洋研究センターは、2018年に岩手県大槌町赤浜地区の安全な高台に研究実験棟および宿泊棟を移転・再建されました。海水へのアクセスが必要となる飼育・水槽実験室など一部の施設は、旧センターの立地していた海側の敷地に再建され、現在、本格的な運用に向けた取水設備の調整および実験水槽の設置などが行われております。さらに、2019年10月には海側の敷地に研究展示施設「おおつち海の勉強室」が完成し、公開に向けて準備を進めているところです。
本施設は、2018年より本格的に始動した東京大学社会科学研究所との協働による地域連携プロジェクト「海と希望の学校 in 三陸」の重要なプラットフォームの一つと位置付けられております。
「海と希望の学校 in 三陸」では、(1)三陸各湾の海洋科学的特性と、それに基づく沿岸コミュニティーの人文社会科学的な特徴を明らかにする、(2)得られた成果を三陸沿岸の中学・高校における対話型授業に活用し、生徒たちと共に地先の海の持つ可能性を模索しながらローカルアイデンティティを再構築する、(3)こうした知識の習得や議論の経験を通じて、地域に希望を育むことのできる人材を育成する、の3つのことを目的としています。
本プロジェクトでは、これまでに釜石高校、盛岡第一高校、大槌高校、大槌学園、吉里学園、唐丹中学校、重茂中学校の生徒などを対象に対話型授業を実施しています。また、2019年に盛岡市民有志により設立された「海と希望の学校 in 三陸・盛岡分校」と協働して、岩手県立図書館などにおける講演会やイベントを開催しています。これらの活動は地域において高く評価され、大槌高校の地域協働コンソーシアムおよび大槌町と岩手県が推進する大槌高校魅力化構想会議に国際沿岸海洋研究センターの教員2名が参画するなどの広がりを見せています。
2019年04月25日(木)
岩手県大槌町にある東京大学大気海洋研究所附属国際沿岸海洋研究センター(以下、沿岸センター)は、2011年3月に発生した東日本大震災により研究施設のほぼ全てに壊滅的な被害を受けました。本プロジェクトでは、沿岸センターの活動を支援しています。
主な活動
2011年5月から、被災した研究実験棟の3階部分を補修し、研究船等の必要最低限の研究施設を順次整備して、被災以前から続けてきた共同利用研究を継続するとともに、被災以降には津波による海洋生態系への影響に関する研究拠点として機能してきました。また、大槌町の土地利用計画に基づいて、被災前と同じ赤浜地区のより安全な高台に研究実験棟および宿泊棟の移転用地を確保して再建計画を立て、2017年から工事を進めてきましたが、2018年2月に新しい研究実験棟(3階建て、延べ床面積2,700平方メートル)および共同研究員宿泊棟(平屋建て、延床面積580平方メートル)が竣工しました。7月20日には、これらの竣工を記念した記念式典及び祝賀会が挙行されました。
また、海水を使用する水槽実験室など一部の施設については、被災前と同じ海側の土地に再建すること、これらに併設して新たに「海の勉強室」と称する研究展示施設を建設することとなり、2018年から旧研究実験棟、宿舎棟などの取り壊しと同時に建設が進められています。
2018年4月には新たに「沿岸海洋社会学分野」が発足しました。この研究室では、2018年度から始まった研究プロジェクト「海と希望の学校 in 三陸」※を主導し、三陸各湾の海洋環境や生態系の構造を明らかにすると同時に、社会科学研究所と協働してそれら海洋科学的特性に基づく湾ごとの人文社会科学的な特徴を明らかにします。これら調査と並行して、三陸沿岸の中学、高校において各湾の海洋学的、人文社会学的特徴に関する対話型授業を実施し、地域の将来を担う生徒とともに各湾地先の復興・振興において海の持つ可能性とそれを生かしたローカルアイデンティティを模索し、地域の希望となる人材の育成を目指します。
※未来社会協創推進本部登録プロジェクト「海と希望の学校 in 三陸」https://www.u-tokyo.ac.jp/adm/fsi/ja/sdgs_project104.html
寄付金の使途
新たに建設する研究展示施設「海の勉強室」に整備する展示施設や什器類の建築、購入代金の一部として活用させていただくことを予定しています。
継続支援のお願い
研究展示施設「海の勉強室」は、旧敷地内施設の建設が遅れており、研究実験棟および共同研究員宿泊棟の竣工と同時には開設できませんでした。現在、建屋の建設工事を行っており、引き続き2019年度の開設に向けて準備を進めてまいりますので、ぜひとも継続支援をお願いいたします。
2011年11月24日(木)
東京大学学内広報で沿岸センター活動支援プロジェクトが特集されました。
学内広報1418号 「東京大学基金大気海洋研究所国際沿岸センター支援プロジェクト始まる。」
ウェブで公開されています。(学内広報PDF)
2011年10月22日(土)
柏キャンパス一般公開で次の報告会を開催しました。
「東日本大震災による岩手県大槌町の施設の被災状況と復興への取り組み」
講師:大竹ニ雄(教授・国際沿岸海洋研究センター長)
日時:2011年10月22日(土)15:20~16:00
場所:東京大学 柏キャンパス 大気海洋研究所2階講堂
詳細についてはこちら(大気海洋研究所ページ)
<沿岸センター活動支援プロジェクト(大気海洋研究所)>
<沿岸センター活動支援プロジェクト(大気海洋研究所)>
東京大学救援・復興支援室
ボランティア隊 第2班 一同
<沿岸センター活動支援プロジェクト(大気海洋研究所)>