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仮設まちづくり支援/研究プロジェクト 活動報告(東日本大震災救援・復興支援プロジェクト)

仮設まちづくり支援/研究プロジェクト 活動報告(東日本大震災救援・復興支援プロジェクト)

仮設住宅モデルのデザインから地域コミュニティの再生に取り組む
~仮設住宅の積極的な“住みこなし”の知恵を、地域コミュニティの再生に結びつける~

工学系研究科都市工学専攻大方潤一郎教授、建築学専攻西出和彦教授らを中心とした「仮設まちづくり支援/研究プロジェクト」のチームでは、被災地自治体に対して、従来の仮設住宅の問題点を改善した仮設住宅モデルの提案、復興に向けて住民の方々のコミュニティづくりを主導して取り組んできました。

岩手県遠野市、釜石市で実際に採用された「コミュニティケア型仮設住宅」には、高齢者のためのサポートセンターの設置、玄関を向い合わせにして入居者の孤立を防ぐなど、従来の仮設住宅の問題点に対する改善策が多く盛り込まれています。

2011年夏からは、大槌町の仮設住宅の調査を開始。住民の代表の方とともに「大槌町住環境点検ワークショップ」を継続的に開催し、実際に生活する上での問題点についてまとめ、自治体へ要請する際のサポートをしたり、個人で出来る対処法を紹介した「仮設住宅住みこなし通信」を発行するなどの活動を行いました。通信は大槌町の全仮設住宅2000戸分を配布し、住環境の改善に有効な情報の発信を行ってきました。今後は仮設住宅で生活する上でのコミュニティ形成から、仮設住宅を出た後の新しい地域コミュニティの再生に取り組む予定です。

             

建築学専攻西出和彦教授と博士課程朴晟源氏、深井祐紘氏、似内遼一氏     遠野市で採用されたコミュニティケア型仮設住宅

写真左:建築学専攻西出和彦教授と博士課程朴晟源氏、深井祐紘氏、似内遼一氏        
写真右:遠野市で採用されたコミュニティケア型仮設住宅

西出教授「雲仙普賢岳噴火や奥尻島津波災害などの際の復興住宅でも、被災された方がショックで生活が出来ないということがありました。これまでの仮設住宅では“容れ物”を準備するという視点に留まり、生活をする環境としては不十分な所が多かったと思います。また余りに整然とした病院のような環境も、生活する上では良いことではありません。そこで生活する方自身の、積極的な意志を引き出すことが大切です。」
新潟中越沖地震の際は、同研究室出身の岩佐明彦氏(新潟大学准教授)が仮設住宅で生活する上の工夫を『仮設のトリセツ』としてまとめた事例がありました。大槌町での『仮設住宅住みこなし通信』にも、居住者自身が仮設住宅を積極的に使いこなすための“知恵”を、カタログのようにまとめて広めたいという発想があったということです。

大槌町仮設住宅悉皆調査    仮設住宅の生活実態を綿密に調査し、住民の方々へのフィードバックに繋げる

写真左:大槌町仮設住宅悉皆調査。
写真右:仮設住宅の生活実態を綿密に調査し、住民の方々へのフィードバックに繋げる。

似内氏「ワークショップでも、住民の方々と自分たちで出来るアイデアを出し合うのですが、そのこと自体が地元のコミュニティづくりにも役立てばと考えています。」

朴氏「『ベランダの作り方』など、材料も現地で安く手に入るものにし、実際に使えるものにと心がけました。設計された住宅も実際に暮らしてみると、隣の部屋のコンセントを入れる音が聞こえたり、浄化槽の臭いがするなど、住民の方々のお話で初めて分かったことが多くあります。」

深井氏「『仮設住宅住みこなし通信』では、医学系のチームとも連携して、熱中症などの季節ごとに起こる問題や、結露など日常生活で起こる困りごとについて、科学的見地から分かりやすく対処法を紹介するようにしています。災害はいつかは必ず起こるものなので、その時に仮設住宅の問題も必ず発生するでしょう。住みこなし通信で紹介した事例も含め、今回の仮設住宅で分かったことを形にしておくことで、今後の災害時の仮設住宅の設計に活かされるようにしたいと思います。」

大槌町の応急仮設住宅。多様な改修や増築などの住みこなし事例を調査    配布された『仮設住宅住みこなし通信』。第1号は2011年冬号、結露対策特集

写真左:大槌町の応急仮設住宅。多様な改修や増築などの住みこなし事例を調査。
写真右:配布された『仮設住宅住みこなし通信』。第1号は2011年冬号、結露対策特集。

西出教授「研究の見地ではこれから、今回の仮設住宅が実際に暮らす方々にとってどのようなものだったのか、2年間の調査をまとめて総合的評価を行おうとしているところです。また今後は仮設住宅のコミュニティ形成から、地域コミュニティの再生という段階に移らなくてはなりません。」

似内氏「地域コミュニティの再生ということでは、ある地域で特にモデルケースを作るという計画があります。また『高校生による復興計画』という計画を、大槌高校の高校生の方々と共に作っています。今後の復興の担い手である若い世代の方々に中心となってもらい、より多くの方に復興に向けたコミュニティに参加してもらえるようにしたいですね。」

※釜石市で採用された、仮設住宅団地「釜石・平田地区コミュニティケア型仮設住宅団地」は、住民交流やバリアフリーに配慮したデザインが評価され、日本デザイン振興会の2012年度グッドデザイン・ベスト100に選ばれるとともに、復興デザイン賞(日本デザイン振興会会長賞)を受賞。

「2012年度グッドデザイン・ベスト100」「復興デザイン賞」受賞

本活動は2013年度も継続予定です。このプロジェクトの活動には「東日本大震災救援・復興支援プロジェクト」へのご寄附が活用されています。ご支援を頂いた皆様に厚く御礼申し上げます。

※教職員肩書き、学生所属はすべて活動報告当時のものです。

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